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【J1:第12節 大宮 vs 川崎F】レポート:恐れず前に向かい続けた風間川崎Fと、恐れて慎重になった鈴木大宮。同期対決のファーストラウンドは風間監督に軍配。(12.05.20)

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大宮・鈴木淳監督と川崎F・風間八宏監督は、ともに1961年生まれ。ともに1979年のワールドユースに高校生ながら選出され、ともに筑波大学に進学した旧友同士である。その名選手二人が今やJ1チームを率いる監督となり、理想とするのは同じく、ポゼッションをベースとした攻撃サッカー。それだけにただの『同期対決』以上のものを、この試合に見てしまう。もちろん二人とも「もう50歳のおやじ(笑)」(風間監督)になった今、コイツにだけは負けられないなんて意地もないだろう。が、奇しくも試合は、選手たちの攻撃にかける意地の部分が明暗を分けた。

前半20分までは大宮がゲームを支配した。守備ラインを高めに保ち、4−3−3の川崎Fの中盤に自由を与えなかった。ロングボールを蹴ろうにも、出しどころにラファエルと東 慶悟がしっかりプレッシャーをかけて蹴らせず、蹴ってきても菊地光将が古巣の僚友・矢島卓郎と激しく競り合って弾き返し、「攻撃によってリズムを作ってくる」(北野貴之)川崎Fの、その攻撃を抑え込んだ。大宮は守備からリズムを作ったが、ただしその攻撃は川崎Fを崩すところまでいかない。チ―ムとして攻撃的ゆえに川崎Fの最終ラインは高かったが、攻撃の不調に引っ張られてプレスが効かない状態で、その高い最終ラインの背後をねらえば川崎Fは相当に苦しかったはずだ。が、鈴木監督が「背後への動きを求めたが、ボールを動かすことに執着してしまった」と語るように、大宮にその意識は希薄だった。ラファエルと東のミドルシュートが連続してポストに嫌われるなど、確かに惜しいシーンはあったが、総じてゴール前に人は少なく、チームとして積極的に前に出て行くような攻撃はできていなかった。

そして19分、中盤の底でアンカーを務めていた稲本潤一が足を痛めて登里享平に交代したことが、川崎Fにとってはケガの功名になった。中村憲剛と大島僚太がダブルボランチを組む4−4−2に変更し、登里が左サイドハーフに入り、それまで3トップの左にいた楠神順平は、「自由に動いて最終ラインと中盤の間でボールを引き出せ」という風間監督の指示を受け、矢島と2トップを組む形となった。大宮に「絶対に自由にさせないようにしようと」(青木拓矢)厳しくマークされていた中村が、中盤のプレスから離れて低い位置でボールに触り始めたことで、川崎Fの攻撃にリズムが生まれた。攻撃が機能することで守備にも落ち着きが出てくる。逆に大宮は、受けに回って次第に守備ラインを下げていった。徐々に川崎Fのポゼッションvs大宮のカウンターという図式となり、41分と43分には川崎Fが中村を中心としたパスワークから右サイドを崩し、決定的なクロスも入った。

後半、この日の暑さと過密日程の影響か、両チームの運動量が目立って落ちた。開始5分間は激しくカウンターを撃ち合い、その後は膠着。「中盤が空いた状態でお互いにポゼッションして、ペナルティエリアのとこまで行って何ができるか、という状態」(鈴木監督)の中で、川崎Fは中村の縦パスに登里が受け手となり、大宮DFラインの背後へのランニングと、連動した細かいパスで中央突破を図り続ける。正直、この攻撃は川崎Fにとっても危険に思えた。固められた中央を突破しきれる確率は高いものではないし、狭い局面に人数をかけているぶん、奪われればカウンターの脅威にさらされる。実際、56分にはカウンターから渡邉大剛の強烈なミドルシュートが西部洋平の正面を襲ったし、その2分後には下平 匠のクロスからラファエルのヘディングが西部の左を抜きかけた。

それでも川崎Fは果敢に大宮の最終ラインへアタックを続ける。「もう少しだ」、「噛み合いさえすれば」という選手たちの声が聞こえてきそうな、意地の攻撃が実ったのは67分。中村の縦パスから裏に抜け出した楠神がペナルティエリア内でシュートを放ち、そのリフレクションを大島が蹴り込んで先制した。しかし1点取ってもイケイケで2点目を取りに行ってカウンターを食らうのが風間流のはず……と思っていたら、食らったのは1点を返すために前がかりになった大宮のほうだった。先制点から5分後、中村が大宮の最終ラインの裏へロングボールを送ると、抜け出した楠神のシュートは菊地が何とかコーナーキックに逃れたが、そのショートコーナーから實藤友紀の折り返しを三度目の正直で楠神にぶち込まれた。

残り20分弱、大宮はとにかく1点を返さなければならないが、それでも裏をねらう意識、縦パスに複数が連動して崩していく意図は希薄だった。いや、意図はあっただろうが、試みて失敗すると消極的になり、徹底することができなかった。引いて構える川崎Fのペナルティエリアの外でボールを回すだけで、長いボールを入れても弾き返され、セカンドボールも拾えない。ボールを持って攻めてはいても、得点の匂いはなかった。

前後半通じて大宮のシュート13本に対し、川崎Fは8本。それでも結果は0−2。両者ともミスが多く、それも拙攻の要因ではあったが、ボールロストを恐れず前に向かい続けた川崎Fと、恐れて慎重になった大宮。同じ拙攻でも、そこには大きな差があった。もちろん結果論に過ぎないので、だから大宮がダメだったというわけではない。ボールを失わないのも大事なことだし、ポストに嫌われたミドルを含めて大宮にも少なくとも4回の決定機があり、どれか一つ決まっていれば勝敗は逆になっていたかもしれない。ただこの試合においては、あれだけミスからカウンターを受け続けた状況でも、自分たちの攻撃を貫いた川崎Fの勇気というか意地を讃えるべきだろう。

風間監督就任から6試合で10得点14失点という数字が示すように、このサッカーである限り、川崎Fは良くも悪くも派手な試合を続けていくのだろう。そして大宮にとっては、ポゼッションからの最後の崩しと、それに伴うリスクのバランスをどう取るのかを改めて問われる試合になった。『同期対決』のファーストラウンドは、まずは風間監督が一つ貸しを作った形。7月28日のリーグ第19節、互いがどういう順位にいて、また互いのサッカーがどう変わり、あるいは洗練・熟成されているか、等々力でのセカンドラウンドを楽しみに待ちたい。

以上

2012.05.20 Reported by 芥川和久
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