87分の一連の流れは、この試合を象徴する場面の連続だった。
2点差を追うために最前線に上がっていた田中マルクス闘莉王は、左サイドで渡辺広大と角田誠を振り切って、林卓人と一対一に持ちこむ。そしてコースを狙ってシュート。彼が打った場面は、38分に梁勇基が先制点を決めた場所とそう違わない地点であり、シュートがGKを破ったところも一緒だった。
だがそこから先が違っていた。闘莉王の放ったシュートは、ゴールラインを越える前にカバーに入っていた鎌田次郎によって跳ね返されてしまった。そしてそればかりではなく、鎌田のクリアは途中出場の松下年宏につながり、これまた途中出場の太田吉彰にさらにつながる。太田は右サイドから中央に素早くボールを運ぶと、反応して動き出していたウイルソンにスルーパス。相手DFの間でボールを受けたウイルソンは、冷静にゴールを奪った。「ピンチの後にチャンスあり」とはよく聞く話だが、それを地でいく展開から、試合を決定づける3点目が生まれた。
仙台は空中戦に強い名古屋の攻撃に対抗するために、「ふたつめ(セカンドボール・競った後のこぼれ球)を拾っていこうとしました」(角田)という意識を徹底。序盤に名古屋にペースを握られた中でも、競り合いの後にこぼれ球を拾う勝負では譲らなかった。そして38分、抜け出した関口訓充のシュートが楢崎正剛の好セーブで防がれたあとに、名古屋の選手よりも早くこのこぼれ球を拾って蹴りこんだのは仙台の選手、梁だった。
オウンゴールで点差が2に広がって迎えた後半に、ストイコビッチ監督は金崎夢生を入れてフォーメーションを[4-3-3]から[4-4-2]に変更。中盤の守備を整備した。これに対し仙台は「この時点で[4-2-4]になっていた」(手倉森誠監督)と判断、しかし守りに入るよりも追加点を取ることを選び、自分たちは対パワープレー用に準備していた[4-1-4-1]にまだ変えず、コンパクトな[4-4-2]を維持して対抗した。名古屋が60分に闘莉王を前線に上げて完全に[4-2-4]となっても、そして上本大海が負傷で退いて負傷明けの渡辺が緊急投入された後も、そのプランは継続。逆襲のタイミングをつかんだところで松下投入により[4-1-4-1]として、先述の3点目の場面に至った。
「人と人との距離感をしっかり意識してプレーし、セカンドボールを拾えていました」と、途中出場の渡辺は振り返った。彼の言葉が、チームの共通理解を表している。両チームともフォーメーションが時間や状況によって変わっていった中で、仙台は布陣を敷く位置の高さを柔軟に調整しながらも、コンパクトなかたちは維持して結果を出した。そこが、「90分間でできるすべてのことをしましたが、敗戦という結果になりました」(ストイコビッチ監督)という名古屋との差になった。1点が入る直前までかたちを作った名古屋の決定機を、シュートがゴールラインを割るまでこぼれ球への執念を見せ続けた仙台が阻止した、冒頭のシーンがそのことを象徴していた。
以上
2012.05.20 Reported by 板垣晴朗
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