今節に立ち向かう北九州を取り巻く状況は、決して楽観できるものではない。この２週間だけで３選手の負傷が発表されたほか、ストライカーの池元友樹が累積警告のため出場停止。シーズン後半戦に訪れるような不運が重なっていると表現していい。ただ、こういうときにこそ北九州の地力が見えてくるし、誰が入ろうとも高い質、内容のあるサッカーを求める三浦イズムの真骨頂が発揮される試合にもなる。

もっとも、難しい試合になることは避けられない。
前節の愛媛戦は中盤を支配していたものの、試合開始直後と終了間際に少ないチャンスを決められて引き分け。人へのディフェンスにまだ弱さが見られ、簡単にシュートまで持ち込まれていた。離脱者が出る中で今週からレギュラーメンバーの一角に入ったある選手は「１対１で激しくいかないといけない」と引き締める。東京Ｖはゴール前での溜めが作れ、２列目も絡む厚めの攻撃ができる。北九州としては、言葉のとおりの「激しい」ディフェンスで、相手の起点を潰したり、スピードを遅らせるなど、容易に攻略されないようにしたい。

攻撃面では池元のスピードが今節は使えないものの、裏へ抜け出すスピードとプレーの思い切りの良さでレギュラーポジションを得た渡大生や、コースを狙うシュート精度が高い端戸仁ら個性的なＦＷを生かし、スタイルを変えながらも連動性の高いサッカーにトライしていく。ただ、前節では決定機に決めきれなかった場面も多く、木村祐志は「最後のところはもっと意識したい。個人個人、落ち着いてできれば決められると思う」と指摘。チャンスを確実にゴールへとしずめる冷静さも求められる。
今節ではセットプレーにも期待がかかる。特に木村の直接ＦＫは武器となる。シーズン当初はクロスバーの上方に消えていくこともあったが、前節では木村の直接ＦＫが２度サイドネットを揺らすなど、精度が戻ってきている。
もちろん、好位置でＦＫを得るためには、前線でボールを保持している必要がある。北九州は三浦泰年監督もバイタルまでは運べていると自信を見せるが、そこから先の攻撃に課題を残す。安全なところでのボール回しから「危険なエリア」に、恐れずに入れていけるかも試される。

東京Ｖは上述のとおり高い位置で展開できる攻撃力、個の力を持つ。試合を優位に運ぶことにはなるだろうが、前節は岡山の堅い守備を崩せず無得点。今節の北九州が岡山ほど引いてくるわけではないものの、ハードなディフェンスを崩すにはアイデアも必要となる。

北九州はホーム・本城で３連敗中。アウェイで勝点を積み上げているが、ホームでこれ以上の敗戦を喫するわけにはいかない。メンバーが入れ替わるなかで、高い質のパスサッカーを繰り出し、勝利をつかみ取れるか。地力を見る試合が幕を開く。

以上

2012.05.19 Reported by 上田真之介