前節の京都戦、確かにゲーム終盤には猛烈な反攻を見せた。途中投入で今季初出場を果たした太田圭輔が気持ちをぶつける積極的な仕掛けを繰り返しトライすると、そのプレーが活性剤となって徳島のギアは一気にアップ。チームはその太田のアシストから追撃の1点を奪い、その後も迫力あるアタックで京都ゴールへ迫り続けたのである。結果的に同点までは届かなかったが、それでも全員の意地が強烈に感じられた追い上げは大いに評価できる部分だったと言えよう。
しかし、残念ながらその評価をもって今節を展望することはできない。なぜならそれは後がないシチュエーションで発生したイレギュラー色の強い勢いだから。そう考えるとやはり徳島の正直な現状はそれまでの時間帯に見せていたものとなり、京都に対しゲーム開始から70分過ぎまで1本のシュートも打てなかった(77分の得点時がファーストシュート)姿が今のチームの本当の状態と言わざるを得ないだろう。
では徳島がそれほどまでの苦しい状況になっている原因は何かと言えば、それは明らかにマイボール時におけるプレーの質の低さ。そして特に、丁寧さを欠く繋ぎのパスと3人目の絡みの少なさがピッチ上の停滞を何より引き起こしているのは間違いない。実際前節終了後には小林伸二監督も「中盤でボールを浮かしたりだとか…」「落として3人目を使えばいいんですけど。そういう発想がない」とそれらの不十分さを口にしていた。
ただ、その2つは普段のトレーニングで継続的に向上を図っており、そのため選手たちもそれの持つ重要性を十分に理解している。また京都戦直前に「みんな上手くなってきた。手応えは出てきている」と指揮官が口にしたことを考えれば、チームにそれらを改善するためのベースがないわけではないはずだ。
とするなら今節徳島に必要なものは─。もちろん何かひとつの要素で現状を劇的に変えられることはないであろう。しかし、個々がメンタルを違った方向へ変えられたならチームはこの一戦で好転へのキッカケを掴めるように思われる。その違った方向とは、挑戦者的意識。
選手たちはJ1昇格を使命として背負い今季へ入った。また昨季の実績により上位候補として注目を集め、ファン・サポーターから寄せられる期待も日増しに高まっていたのが事実だ。が、それゆえチームは思うようにいかない結果にナーバスになり過ぎて負のスパイラルへ落ち、今も重い重い昇格という文字を背負ったままもがいている感がある。そして、あまりに「一生懸命になってしまう(小林監督)」ことで落ち着きを失い、本来出来るはずのプレーも出来なくなっていると言えるだろう。だからこそここで昇格という重荷を下ろし、結果を恐れない挑戦者的意識に切り替えるべきではないか。ムードメーカー的存在である橋内優也がそれを敏感に感じ取ってか、「這い上がっていきたい」と語ったように。
一方、対する鳥取も徳島と同じく、目指すサッカーをまだ思うようにやり切れていない。それを物語るように前節(水戸戦)終了後の吉澤英生監督は「ボールを動かすということに関しては上手く機能する時間が少なかった」「トレーニングでは上手く出来たところもあるが、ここ(リーグ公式戦)で出来なければ意味がない」と厳しいコメント。勝利を収めながら、それへの満足をほとんど表さなかった。
とは言え、そうした状態にあっても結果を積み上げられるようになってきたのだから、鳥取は成長しているということであろう。特に拮抗したゲームを制すことのできる勝負強さを選手たちが高めているのは間違いなく、そのことは最近の4戦で3つの1点差勝ちという事実が何より証明している。それだけに鳥取としては今節も粘り強く戦ってそのストロングポイントへと繋げ、好調を維持している美尾敦らの決定力を活かして勝利をもぎ取りたいに違いない。
最後にもう一度話を徳島へ戻すが、前記のことは決して今季の目標を諦めるという意味ではない。残りシーズン2/3で巻き返していくために一旦身軽になり、まずもう一度目の前のプレーだけに没頭するということである。その上で組織としての準備を整え直し、そこから改めて昇格というものへ視線を向ければいい。
いずれにしても、選手たちがメンタルを変化させられればきっと徳島には光が差す。
以上
2012.05.19 Reported by 松下英樹
J’s GOALニュース
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