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【ヤマザキナビスコカップ 川崎F vs 浦和】レポート:進歩しているが故のミスにより自滅。川崎Fが浦和に完敗を喫す(12.05.17)

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浦和を取材する記者に言わせると、ペトロヴィッチ監督の思い通りの試合展開になっていたのだという。ペトロヴィッチ監督は、ご存知の通り非常に変則的なサッカーを作ってきた方。広島がそうだったように、そのサッカーを浦和にも導入し「我々はここまで5ヶ月やってきた中で、いまのこの状態にあるのは決して悪くないと思う」(ペトロヴィッチ監督)と述べる状態にまでチームを作ってきた。

浦和は攻撃時には3トップに左右のウィングバックが絡み、5人で攻めるような形になる。それに対し、4バックの川崎Fは、ボランチがどうポジションを取ればいいのか、混乱をきたす時間帯もあったという。これについては田坂祐介が「間あいだにつけてくるパスが、広島に似た部分があった。そこに誰が行くのかが曖昧になってしまいました」と説明。ただしマークの曖昧さに関しては「それは試合中に修正できました」とも話している。いずれにしても前半に関しては川崎Fには全くいいところがなかった。

川崎Fにとって痛恨だったのが、32分の1失点目である。宇賀神友弥に右サイドを簡単に崩されると、デスポトビッチから原口元気へとつながり、最後はゴール前のクロスを柏木陽介が押し込んだ。この1点により浦和はラインを下げて自陣でボール回しできるようになる。そうした試合展開について狙い通りなのだろうと考えていたが、ペトロヴィッチ監督は「過去の影響からか、我々はまだ1点とってからの進め方が良くない。今日のゲームも1点とってから何かをするつもりがあったのか、ゲームをどう進めればいいのか迷ったのかわかりませんが、(前半の)残りの10分位思ったようなプレーができませんでした」と選手たちを叱咤するようなコメントを残している。

ただし、川崎Fにしてみれば先制されてからの時間帯はそれまでにも増して手も足も出せない状態になってしまっていた。最終ラインでボールを回す浦和に対し、川崎Fは小林悠と楠神順平とがプレスを試みる。しかし浦和の3バックは落ち着いてこのプレスをかわすのである。なぜならば、川崎FはFWの彼らのプレスに連動した守備が出来ておらず、FWとMFとの間にスペースが生まれ、浦和がボールをつなぐことに難しさがなかったからである。最終ラインを押し下げられたことにより、FWとの距離が空いてしまったリーグ戦の柏戦とはまた意味合いは違っているが、何れにしても川崎Fは全体的に間延びした形での戦いを余儀なくされた。

前半だけでベンチへと退いた小林は「ボールに触れませんでした。全部が中途半端でした」と悔しさをにじませる。一方ボランチの大島僚太は「FWを下げるやり方もあったのかもしれません。ただ、FWにはついて行こうとも考えていて、中途半端になってしまうところがありました」と話し、前半については戦い方を統一できなかったのだと述べている。

上手く試合を運べなかった前半を受け、風間八宏監督は後半の頭から中村憲剛と矢島卓郎とを投入。レネ サントスと小林をベンチに下げる采配を見せる。そしてこれにより、戦況は多少なりとも改善する。しかしミスをきっかけに、57分に2失点目を奪われる。

「ミスがまだまだ多い。失点も全部自分たちのミス」と悔しさをにじませるのは中村。田坂も「ミスからのショートカウンターにやられてしまっています。2点目は自分のミスからでした」と率直に述べている。

気をつけているのだろうが、それにしてもなぜミスが増えるのか?
「余裕が出てきて、見えるものが増えて判断が遅れている」のだと説明するのは中村。風間監督のサッカーに選手たちが順応しているが故のミスである可能性を指摘する。この点については風間監督も「ミスするわけのないパス」をミスしているのだとしつつ、その予防策として「頭の体力をもっともっとつけていかなければならない」と話す。また、そもそも論として「一人ひとりが、頭を使うサッカーになるので、かなり疲れるとは思う」とも述べている。頭が疲れているということは、頭を使う状況になっていることを示しており、風間監督が繰り返し述べている技術のうち「見る技術」を選手たちが体得しつつある事を示しているのだろう。ただ、それにしても風間監督は「これだけ致命的なミスを繰り返しては仕方ない」と断じ「そこのところは選手はもっともっと意識して、やっていってもらわなければ困る」と言葉をつなげた。

前半に比べると後半の川崎Fの戦いは大きな改善が見られた。しかしペースを握る時間帯の簡単なミスを突かれ、失点を重ねた。82分に宇賀神に決められた不運な失点も、元をたどればミスがきっかけだった。

風間監督はサッカーの形を指し示すことはやっている。ただし、ベースとなるスタイルがあるとしてそれを貫くよう選手たちに強制することはない。また選手たちにも「自分(風間監督自身)を驚かせてくれ」という言葉を口にしているという。つまりリアルタイムに状況を判断し、それぞれの選手が考えるサッカーを展開する事を認めているのである。そしてこの浦和戦でも、そうした戦いは一定の回数で出せていた。たとえばそれは風間監督が「後半はかなりボールを支配できていたと思います」と述べる後半の戦いである。そして、だからこそ「ラストにかかるところのプレーが、そのままの勢いを持ってしまってちょっと雑になってしまう。あるいは、もっと決定機が作れるはずのところのパスのポイントがずれてしまう」事を嘆いていた。いい戦いが出せた時間帯があるとしても結局のところ、ありえない場所でのミスで台無しになってしまう。それがまさにこの試合の失点であり、無得点に終わった攻撃の説明となる。

ミスを理由とした失点にしても、最後で雑になってしまった攻撃にしても、結局は川崎Fがどう戦うのかである。そういう意味で、「(結果は)自分たちの手の中にある」という言葉を風間監督が口にしているのはそのとおりなのだろう。残念な負け方であり、失点が続く状況に変わりはないが、そこは日々の練習で高めていくしか無い。練習で出来つつあるだけに、それを実戦の舞台でも適用できるようになることを願うしかない。

なお、得意の等々力で川崎Fに完勝した浦和はこの勝利により勝点を6に伸ばしている。ただし消化試合が1試合少ないC大阪と鳥栖も今節の勝利で勝点を6にしており、グループリーグ上位2チームに入るために予断を許さない状況にあるのは間違いない。もちろん、勝点4にとどまる川崎Fの厳しさは言うまでもない。

以上

2012.05.17 Reported by 江藤高志
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