最近3試合では白星から見放され、苦しい戦いを強いられていたC大阪。しかし、ホーム・キンチョウスタジアムで迎えた今回のヤマザキナビスコカップ第4節では広島に2−1と勝利。リーグ戦とカップ戦という違いがあるとはいえ、ようやくトンネルから抜け出すことができた。
ただし、「今日も苦しい展開だった」とキム ボギョン。C大阪がベンチ外になった清武弘嗣ら3選手、広島が5選手、それぞれ4日前のJ1第11節からメンバーが入れ替わり、互いにフレッシュな陣容で臨んだが、C大阪はアウェイチームである広島の巧みなパスワークに苦しむ。
それでも、「前半、我々は、ある程度広島さんにボールをつなぐ部分でのビルドアップはさせていいということで、1つブロックを落として、そこからディフェンスを始めようという形で戦った」というのは、C大阪のセルジオ ソアレス監督。相手にボールを持たれることを想定したなか、我慢強く戦って好機を待つと、その狙い通り、C大阪が先手を奪う。決めたのは、これが公式戦3試合ぶりの出場となったブランキーニョ。ペナルティーエリア手前中央で、扇原貴宏からのヘディングでのパスを受けると、「中にあまりスペースがなかったことと、前向きの姿勢だったことで」、一瞬の状況判断から相手DFの股抜きドリブルを選択。そこでゴール前に一気に抜け出すと、最後は左足でGKを見ながら冷静にシュート。C大阪の10番を背負う男の、ヤマザキナビスコカップ3戦連発弾が見事に決まった。
しかし、その喜びはわずか3分しか持たなかった。連係ミスから広島にカウンターを許すと、ファンソッコの左からの絶妙な折り返しに対応できず。最後はゴール前に詰めていた佐藤寿人に至近距離から豪快に叩き込まれて、すぐさま振り出しに戻ってしまった。結局、C大阪の5本に対し、その2倍以上となる11本のシュートを広島に浴びたなかでの前半は、このまま1−1で、ハーフタイムを迎える。
ハーフタイムでの両監督のコメントも、実に対照的だった。C大阪のセルジオ ソアレス監督が、「パスをつないでいても、前に行くチャンスを見失っている。前を向いたら勝負に行こう! 自分のプレーを出そう!」とイレブンを一喝したのに対して、広島の森保一監督は「攻撃は良くできているので、最後のフィニッシュを確実に!後半も続けていこう!」と、前半の流れの継続を指示。これだけを見ても、広島優勢というのは明白だった。
それでも、後半は、互いにゴール前でチャンスを作るシーンが目立ってくる。C大阪は村田和哉を途中から投入すると、ボランチの扇原貴宏から前線に効果的なスルーパスが入るなど、攻撃のリズムが生まれて、村田やブランキーニョらに好機が訪れる。一方の広島も、今季初先発となった右クロスから森崎浩司が絶妙のタイミングでヘディングシュートを繰り出せば、公式戦初先発となった2種登録の野津田岳人のミドルシュートなどでC大阪ゴールに迫った。しかし、C大阪GK松井謙弥、広島GK西川周作の、両守護神の好守などもあって、なかなか決めきれない。
このまま引き分けかと思われた90+5分。ドラマが生まれたのは、C大阪のほうだった。右サイドでキム ボギョンにボールが渡ると、そこから積極的に勝負を仕掛けた7番は、DF2人を抜きにかかったところで倒される。判定は、PK。大勢のC大阪サポーターが目前にいるなか、キッカーを自ら務めたキム ボギョンは、冷静にゴール右側へボールを突き刺した。その瞬間、スタジアムは熱狂。この値千金の得点が、決勝点となった。
「みんながあきらめなかったから、ああやって(PKでの決勝点が)転がり込んできたと思う」というのは、先発フル出場したFW播戸竜二。勝利への執念がようやく実ったC大阪は、これで勝点6となり、Aグループ2位に浮上した。「勝利がほしかったので、最後ああいう形で勝てたというのは、すごく次につながる」と村田も言うように、C大阪にとってはこの1勝の価値は大きい。また、そうしなければ、今後の上位進出はあり得ない。
広島にとっては、終了間際のPKによる敗戦ということで、なんとも悔やみきれない試合となったが、「チームとして、選手が替わっても、我々の攻撃的なサッカーができるんだということを示してくれた」と森保監督がイレブンを称えれば、森崎浩司も「森保さんが目指しているサッカーというものができていますし、今日に関しては決定機で僕自身が決めていれば、確実に勝つことができたと思うので、そこは悔しさとして、次に向けて切り替えてやっていきたい」と、3日後に来たるJ1第12節、神戸とのホームゲームに目を見据えていた。
以上
2012.05.17 Reported by 前田敏勝
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