柏にとっては、グループリーグ突破のためには絶対に勝たなければいけない試合であった。それでも「変なプレッシャーを感じることなく」(大谷秀和)、冷静に、淡々とした試合運びを進めていく。
全北現代のキーマンは前線のイ ドングッと右サイドのエニーニョだが、イ ドングッに当てるロングボールには近藤直也と増嶋竜也が果敢に競り合い、エニーニョに対しても、全体の陣形がコンパクトなためにスペースを与えず、那須大亮、ジョルジ ワグネル、大谷が巧みに囲い込んで攻撃の起点を作らせなかった。
柏と異なり、引き分けでもグループリーグ突破が決まる全北は、その突破条件の心理的影響か、ホームにもかかわらず思いのほかアグレッシブには出てこない。チャンスといえば、イ ドングッへのファウルで得るセットプレーのみで、前線からプレスを仕掛け、コンパクトな陣形を崩さない柏の守備組織にはまり、流れの中からチャンスらしいチャンスを生み出せずにいた。ネルシーニョ監督が「お互いに探り合い」と振り返ったように、比較的淡々とした流れのまま、前半が終了した。
プレビューでも述べたように、全北にはレギュラーのセンターバック2選手が不在という懸念があった。まさにそのポイントが露わになった形である。増嶋のフィードが前線に入る。工藤壮人が競り合い、全北の2センターバック、キム サンシクとキム ジョンウがそのこぼれ球の処理にもたつく間に、後方からサポートに入った田中順也がフリーのレアンドロ ドミンゲスへパス。勢いよくペナルティエリアに進入したレアンドロは、鋭角にシュートを突き刺し、49分に柏が待望の先制点を挙げた。
敗戦の場合、他会場の結果次第で突破の可能性がなくなる全北は、これで前へ行かざるを得なくなる。コンパクトな陣形を敷く柏と全体のバランスが崩れ始めた全北という図式が顕著になり、全北の単調なパスがいとも簡単に柏のボランチ、大谷と茨田陽生に引っ掛かる。イ ドングッへの長めのボールに対しても近藤と増嶋が相変わらず弾き返し続け、そのセカンドボールを柏が支配する。そして相手の中盤や最終ラインの裏にスペースができ始めたところを、レアンドロとジョルジ ワグネルを起点にしながら長短のパスを織り交ぜた鋭い攻撃で突き、全北の守備を切り崩していく。
右サイドバックの酒井宏樹は「先に失点するのが怖かったので守備的に入り、必要な時に上がろうと思っていた」と振り返っている。62分の追加点は、右サイドのオープンに広大なスペースがあり、「必要な時」と彼自身が感じたのだろう。猛ダッシュで駆け上がった酒井に対し、田中との細かいパス交換の後、レアンドロからそのスペースをグサリと突くパスが放たれる。酒井からの折り返しを受けたレアンドロの左足シュートは右ポストを直撃したが、パス交換の後、サボらずに長い距離を走ってゴール前まで詰めていた田中がこぼれ球を押し込み、「ラッキーでした」(田中)という2点目を挙げた。
77分には全北にPKを献上し、これを決められていればタイムアップまで予断を許さぬ状況が続いただろうが、イ ドングッのキックは右ポストを叩き、運も味方した。2−0で逃げ切り、絶対に勝たねばならない試合で勝利を収めた柏。川崎F戦(J1第11節)と同じく、ほとんど決定機を作らせず、攻守において安定した内容で90分を終えたことは称賛に値する。「Jリーグで継続してきたやり方を続けた」とネルシーニョ監督が自信に満ちた表情で語った通り、昨年の柏を彷彿とさせる“強さ”を発揮しての快勝に、全州まで詰めかけたサポーターもスタンドで歓喜に沸いていた。
大逆転という形でグループリーグ突破を決め、初のACL出場で初のラウンド16への切符も手にした。だが、柏が見据える視線はまだ先にある。ようやく“強さ”を取り戻したJ1王者の真の戦いは、これからだ。
以上
2012.05.16 Reported by 鈴木潤
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