J1第11節川崎F戦終了直後、AFCチャンピオンズリーグの全北現代戦に向けて、柏は決戦の地へ飛び立った。中2日のアウェイ戦で、しかもグループリーグ突破ためには勝利が絶対条件。厳しい試合となるのは間違いないが、先日の川崎F戦でようやく不振脱却の糸口を見出した柏にとっては、良い形でこのグループリーグ最終戦を迎えることになった。
川崎F戦は攻守両面で高い安定感を発揮し、まさに昨年を彷彿とさせる勝ち方だった。そして「単発で終わらせてはダメ。これを続けることが大事」(近藤直也)という言葉通り。この戦い方を継続してこそ、ACLとJリーグでの上位進出が見えてくる。
柏が“らしさ”を取り戻した大きな最大の要因は守備の安定にある。ネルシーニョ監督は「これまで怪我や累積でメンバーが揃わなかった」と、一時はその台所事情の苦しさを吐露する時もあったが、先日のリーグ戦から近藤と那須大亮という実力と経験を兼ね備えたDFの復帰は、同時に相乗効果を最終ラインにもたらす。「酒井もワタル(橋本)も『サイドバック』なんだから、何が一番大事かを考えないとね」。川崎F戦後に、近藤はそう語って笑みを見せた。点が欲しい、早く楽になりたい、そう思うあまり守備よりも攻撃への意識が高まり、サイドバックが上がりすぎることで全体の組織バランスが崩れる。今まではそんな傾向にあった守備を、川崎F戦では近藤が彼らの攻め上がりをコントロール。酒井が上がった時は橋本には攻め上がりをセーブさせるなど、相手のカウンターへのリスクマネジメントを徹底でき、それが守備の安定性を引き戻したのだ。
さらには守備陣が強く意識した“割り切り“も重要な要素だった。もちろん奪ったボールを大事に、丁寧なビルドアップで攻撃を構築していくことは必要だが、以前は相手のプレッシャーが激しい局面でも無理にパスをつなごうとして、そこでパスミスが生まれ、相手のインターセプトから逆にピンチを招いてしまった。それが「つなぐのが難しかったら、無理をしないでセーフティーに蹴ってもいいと話し合った」(稲田康志)というように、つなぐところと蹴るところを“割り切った”部分も無失点の要因だろう。
“グループ最強”という前評判に反し、全北は初戦、2戦目を落とし、大きく出遅れた。グループリーグ第2戦、つまり日立台での柏戦は普段の攻撃的な4−2−3−1ではなく、不慣れな3バックシステムを用いて守備的に戦い、結果的にはこれが災いしたようだが、後に彼らは布陣を元に戻し、本来の力を取り戻してACLでは3連勝。一気にグループの首位に躍り出た。「相手はホーム。柏で対戦した時と違い、攻撃的な選手を入れてアグレッシブに来るだろう」とネルシーニョ監督が分析するように、もはや3月に対戦した全北とは全く別のチームである。
その全北は守備面に不安を抱える。今回の試合ではキャプテンのチェ ソンファンが出場停止、イム ユファンが怪我とレギュラーのセンターバックを同時に欠く。イ ヒョンシル監督は心配ないといった様子で「他にも良い選手がいるので、しっかりやってくれる」と話していたが、レギュラーのセンターバックの同時欠場は大きな痛手と言わないまでも、わずかに綻びた糸口を見出すことはできるはずだ。
「うちは点の取れるチーム。だから後ろがしっかり0に抑えれば、必ず勝てる」。近藤はそう自負する。勝利が義務付けられたとはいえ、オーガナイズされた守備組織をもって全北の攻撃を抑え込めれば、「ようやく陽気が温かくなってきて、僕も調子が上がってきた」と語るジョルジ ワグネル、そしてレアンドロ ドミンゲスという2人のブラジル人を中心に好機は訪れる。あとはそこを仕留められるか否かの勝負だ。1−0でも、とにかく柏は勝てばいい。
以上
2012.05.14 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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