シュートの本数なら、町田が13対11で勝っている。ボールの保持率も、町田が上回っていたはずだ。しかし一番大切なゴールの数は千葉が「６」で、町田は「１」。試合を振り返れば、やはり千葉の完勝だった。

前半３分の１失点目について、町田の各選手は「勿体ない」と口を揃える。セカンドボールを巡る３度の攻防が全てだった。町田はＦＷ鈴木孝司が前線でハイボールに競り勝つが、セカンドを取れない。千葉の伊藤大介が前線に蹴り戻したロングフィードは、味方に合わなかった。しかし千葉は相手ＣＢのクリアから生まれたセカンドを、田中佑昌が身体を張ってキープし、強引に仕掛ける。更に田中が潰されたセカンドも、兵働昭弘がフォローして生かす。田中は体勢を立て直し、深井正樹とのワンツーパスから右足ミドルをに突き刺した。ただし千葉は10分、15分とショートカウンターから生まれた決定機をモノにできず、試合の支配を失う。

すると町田は鈴木孝司に２度の決定機が訪れる。18分、コリン・マーシャルが相手ボールを奪って運びラストパス。しかし鈴木孝司の左足ミドルはＧＫの正面だった。19分にも鈴木孝司はハイプレスからボールを奪い、自らエリア内に抜け出すが、フィニッシュは枠上。鈴木本人が「そこを決めていたら」と悔いる２つの逸機だった。千葉の木山隆之監督をして「自分達らしいプレーができなかった」と嘆かせる試合展開だったが、１点差は詰まらない。

町田は前半終了間際の41分に、再び「勿体ない」失点を喫してしまう。セットプレーを跳ね返し、攻めに出ようとしたところから生まれたカウンターだった。千葉は武田英二郎が前に出てヘディングを跳ね返し、深井正樹は左サイドで身体を張ってセカンドボールを生かす。藤田祥史が深井の「落とし」に反応し、エリア左角付近から火の噴くような左足ボレー！千葉は勝負どころで球際に勝ち、素晴らしいフィニッシュを決めた。その結果が前半の２点リードである。

後半は更に試合が大きく動く。59分、千葉は深井正樹が味方のクリアを抑えて自ら突進。深井は藤田祥史とのワンツーから抜け出して、流し込む。アルディレス監督が「３点目を取られた時点で、もう試合が終了していたのかもしれません」と嘆く駄目押しだった。

その後は千葉が相手の前がかりを突き、一本のパスから抜け出す場面が続く。62分には兵働昭弘のスルーパスから田中佑昌が抜け出して、４点目を流し込む。町田も平本一樹のゴールで１点を返すが、千葉は75分にも兵働昭弘のクイックリスタートから、藤田祥史が“一本”で抜け出して５点目。79分には田中佑昌が深井正樹のスルーパスから抜け出し、ハットトリックを達成。千葉が大量６点を奪って試合はクライマックスを迎える。

千葉は２列目からの飛び出しが有効だった。田中佑昌、藤田祥史が、長いスプリントからＤＦの背後へ走りこむ。そこに深井正樹、兵働昭弘の精密なパスが合う。後半はスペースが空いたことで、二つの強みが際立っていた。町田の津田和樹は「裏に抜けるボールに対しての処理が悪く、相手のパスも良かった」と振り返る。また太田康介は「無抵抗で失点する場面が多かった」と悔いる。町田は体力の消耗、失点による精神的な落ち込みも影響し、後半は普段通りのリスク管理ができなかった。攻撃は後半開始直後に起用されたディミッチが、一人でシュートを５本放って“ゴールに向かう姿勢”を示している。しかし挽回には不十分だった。

千葉は大量点、４連勝に加え、佐藤勇人が負傷から10試合ぶりに復帰するという嬉しいニュースもあった。シュートは１１本に留まったが、その多くが裏へ完全に抜け出す「１点モノ」の決定機。千葉はボールは思うように持てなくても球際、スプリント、ラストパス…、何よりフィニッシュで町田を圧倒した。

以上