GW連戦も佳境に入ってきた。湘南が連敗し、リーグの行方はさらに混沌化。1節1節の戦いから目が離せなくなってきている。第12節、西京極に戻ってきた京都は、栃木と激突だ。
対戦相手の栃木。前節は鳥取に敗れ、連敗となった。しかし、その内容はしっかりと主導権を握り、決定機も創っているだけに、大きな不安要素があるとは言えない。
松田浩体制4年目。しっかりしたゾーンディフェンスは健在で、パウリーニョ、高木和正、菊岡拓朗と、要所に力を出し切れる選手を揃える。
サイドハーフが絞り、サイドバックが上がる、典型的なボックス型。逆に言えば、サイドバックが上がれなければ攻撃の厚みは薄くなる。ここは駆け引きになるだろう。
前回の対戦は、昨季の第20節(@西京極 1−1)。守備時に縦、横幅もコンパクトにして京都のパスサッカーに対応しようとしていただけに、規律の中に柔軟さもある守備は心に留める必要があるだろう。
相手の守備のポイントはパウリーニョか。彼が積極的に来れば、最終ラインも上げてラインの高い守備陣形となり、逆にそこが様子を見るような守備だとラインを下げて守備を固めるという印象になる。
京都は前節、松本と引き分けた。相手のアグレッシブな守備が光った試合で「ある意味、京都は粘り強く守ったと言えるかもしれない」と大木武監督も守備の健闘を口にした。
大分、松本と3バックの相手が2つ重なったことで、対京都の傾向も見えてきた。大きなポイントは「待ち構える相手をどう崩すか」(工藤浩平)となる。3バックと2ボランチがしっかりとゴール前を固めてきているのだ。
「(松本の)3バックはゴールエリアの幅から出てこなかったですね」(大木監督)という中央の絞り具合で、その中ではシュートチャンスもなかなか創れなかった。他にも、相手の攻守のバランスが攻撃3人、守備7人という割合になること、京都陣内にボールがある時はサイドの選手も中に絞って積極的にボールに行き、そこを越えられると即5バックにして対応するなどの特徴があった。だが、一番は先述した、2ボランチとセンターバックの距離を密にして、相手が仕掛けて来るのを待ち構える守備だろう。
ただ、京都もスペースは見つけている。松本戦の前半も、中村充孝がドリブルでペナルティーエリア内に切れ込んだが、このドリブルのスタート位置に注目したい。宮吉拓実からパスを受け、ペナルティーエリアの角辺りからドリブルを開始する。要はボランチの横のスペースから入っているということだ。
後半、福村貴幸が中村とのワンツーでボールを前に運ぶと、それにタイミングを合わせた工藤が裏へ走り込んだ。これも福村は、ドリブルでなくワンツーで「前に運んで仕掛けて」いる。「(走り込んだ工藤の)逆の右サイドに宮吉がいて、そこに出しても面白い」。そんな説明を指揮官はしてくれたが、こうした仕掛けを幾つも表現できれば、そこに落ち着きも生まれて来るだろう。見ている方が「そこを選択するか!」という驚きを感じさせてくれるプレーに期待したい。
スペースを見つけて走り込んだり、相手の背後を取るため走り抜けたり、京都も松本の守備に何も出来なかった訳ではない。感じるのは、相手のセンターバックと2ボランチをボールに集中させるとボール以外のところで綻びが生まれやすい、という当たり前のこと。わかりやすい例なら、サイドでゴールライン際までえぐると、相手はそこに集中しボール以外へ視点を移すことが困難になる。さて、そこでどんなプレーを創造するか、ということである。
チョン・ウヨンは得点のために「セットプレー。そしてミドルシュートも狙わないと」と話したが、それも重要だろう。特に、ゴール前を固めてくる相手にその外から狙うのも大事なこと。要は、どうやって相手センターバック・ボランチをヒヤリとさせるか、だろう。それを連続で繰り出す。大木監督はそんな攻撃を「相手が汲々とする様な攻撃」と表現した。
守備の堅い栃木相手にどう攻撃を繰り出すか、今節はそこをポイントとして見てみたい。
京都のパス攻撃に対し、相手は「ボールの出どころを抑える」一辺倒から、「ハーフウェーライン辺りまではボールを積極的に奪いに行き、それを越えられれば待ち構えてゴール前の陣形を崩さない」守備に切り替えてきている。ある意味予想できたことで、そこを乗り越えていかなければ安定した戦いも出来ない。と同時に、そこを破ることがサッカーの楽しさ、面白さの一つでもあるはずだ。
サポートしやすい距離感で相手の背後を取り、どこにスペースを見つけるか。京都の想像力に期待したい。
以上
2012.05.02 Reported by 武田賢宗
J’s GOALニュース
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