「試合内容では完敗。間違いなく今季で一番悪かった」。富山の安間貴義監督は潔くチームの低調ぶりを認めた。だが、守り抜いて後半にセットプレーから決勝点を挙げ、欲しかったホーム初勝利は手にした。５試合ぶりの今季２勝目。順位を20から18へと上げ、「ＴＯＰ　ＯＦ　北アルプス」は２戦２勝で首位をキープした。

立ち上がりは互角。下位同士の負けられない戦いへの思いがぶつかり、ともに球際で厳しく対応した。しかし、12分に岐阜の左サイドバック村上一樹がドリブルで仕掛けてペナルティーエリアに侵入して好機をつくったあたりから流れは岐阜へと傾いた。今回はＦＷで起用された井上平が前線を走り回って攻撃を活性化。両ボランチが起点となって両サイドを大きく使って相手を揺さぶり、９試合ぶりに先発した染矢一樹のスピードも効いていた。
富山はいつものきびきびと連動するプレスが見られず、ボールを奪ってからもミスが多くて攻撃を組み立てることができない。連戦による疲れ、前節から導入した４バックのフォーメーションへの不慣れなど原因は複合的なものだろう。悪循環に陥って押し込まれ、好クロスを何度もゴール前に供給された。攻撃は期待薄と判断した安間監督は、前半途中でＭＦソ・ヨンドクを中央からサイドに移すなどして守りを厚くし、無失点で折り返すことに力を注いだという。

岐阜は41分、右からのクロスをＦＷ佐藤洸一が頭で合わせたシュートがクロスバーをかすめる。あと一歩のところまで攻め込むが、相手ＤＦ陣の体を張った守りに阻まれて得点を奪えずに前半を終えた。富山のＤＦ福田俊介は「岐阜のクロスには良いボールが何本もあった。点で合わせに来た五分五分のボールにはしっかり対応できたと思う」と振り返った。

ハーフタイムを挟んでも流れは変わらず、岐阜の優勢が続いた。後半16分、左からのクロスをＭＦ服部年宏がヘディングで流し、佐藤が頭から飛び込むがシュートはゴール右へと外れる。同18分にもカウンターから最後はＭＦ廣田隆治がシュートを放つが、これも枠を捉えることができなかった。
耐えてきた富山は同23分、ワンチャンスを生かして決勝点となる先制ゴールを挙げた。今季得点源としているセットプレーからの一発。左からのＦＫを福田とＤＦ松原優吉が折り重なるようにして折り返し、こぼれ球をＦＷ苔口卓也が押し込んだ。残り10分には連係ミスから中央を突破されてピンチを招くなど最後まで苦労したが、そのまま逃げ切ることに成功。アディショナルタイム４分が過ぎて終了の笛が鳴った瞬間には、メインスタンドの観客も一斉に立ち上がって万歳。試合内容は度外視にしてスタジアムは今季ホーム初勝利に沸いた。

クラブスタッフの一人は「ようやく勝つことができ、試合運営に協力していただいたボランティアのみなさんの表情も明るくてうれしかった」と話した。まだ２勝目を挙げたに過ぎないが、この勝利がクラブに関わる多くの人の気持ちを軽くした。選手たちの安堵感は言うまでもないだろう。安間監督は、連戦の結果次第では目標順位の下方修正もあり得るとしている。正念場は続くが、今回の勝利がプラスに働くことは確実だ。

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2012.05.01 Reported by 赤壁逸朗