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【J2:第11節 東京V vs 山形】レポート:東京Vは16本のシュートを放つも無得点。一方の山形は、1チャンスを2回をモノにして5連勝を達成(12.05.01)

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「これがサッカーだよなぁ」
試合終了後、そんな声があちこちから聞こえてきた。

「前半からウチのぺースでできたとは思います」と言う東京V・川勝良一監督の言葉に、この試合を見たほとんどの人が納得したはずである。試合開始から、完勝した前節の福岡戦同様、シンプルにボールを動かし、サイドバックを絡めながら中央とワイドをバランスよく使って、あらゆる位置からチャンスを作っていった。前線からのプレスも効き、セカンドボールへの対応でも上回り、ほとんど相手にボールを保持させない展開。山形も、なんとか反撃の糸口をつかもうとボールを追うが、奪った途端に再び奪い返される場面も少なくなく、思い通りの攻撃の形に持ち込むことができない。また、かろうじてゴール前で東京Vの攻撃をつぶし、いざ攻めに転じても、中盤を省略した最終ラインからFW萬代宏樹、中島裕希への縦パス1本を狙った形が多く、すぐに弾き返されて再び守勢を強いられるという一方的な流れで前半が過ぎていく。圧倒的に自分たちのサッカーを繰り広げたのは、東京Vだった。

だが、「ああいった形で得点できたっていうところは、サッカーの面白さであって、サッカーの1つの側面が表れた」(山形・奥野僚右監督)。先制したのは、山形なのである。前半41分、直前で秋葉勝がようやく放った、山形のこの試合最初のシュートで奪ったCKのチャンスからである。石川竜也の精度高いボールを、萬代が頭で突き刺すという、今季チームが最も得意とする形だった。主将・山崎雅人も、結果として「ある意味、上出来の前半」と評している。

思わぬ失点をした東京Vだが、「ハーフタイムでも誰も下を向いていなかったし、みんな絶対に逆転できると思っていました」(梶川諒太)。
ハーフタイム、指揮官から「良いサッカーをして惜しい、では済まされない試合。簡単に倒れずに点を取りに行く姿勢を見せろ」とゲキの入った東京Vは、「開始15分で同点に追いつけば、2点目もすぐに入る流れになる」(ジョジマール)と、後半開始早々から攻め立てていく。
後半9分、梶川のロングパス1本から阿部拓馬が遠めの位置で狙い、ポストを直撃するなど、徐々にゴールの雰囲気が感じられつつあったと言えるほど、前半以上に押し込んでいった。だが、「引いているというよりも、張り付いているイメージ。まったく出てこなかった」(阿部)という山形DFの牙城を崩しきることができない。そして、迎えた同24分。“攻め疲れ”からか、若干東京Vの選手たちの足が止まってきたかに見えた中での山形GK清水健太からのFKだった。落下地点で待つ萬代が東京VのDFと競り合いながらそのままボールをスルーすると、その先には中島が狙って待っていた。相手DFの隙を見て一気に抜き去ると、「何も考えずに打った。連戦になると、相手の隙を突くのが大事になってくる」今季プロ10年目、鹿島、仙台で培ってきた経験を存分に生かして挙げた中島の2点目のゴールは、試合を決定づけるのに十分だった。

前半2本、後半3本と山形がこの試合で放ったシュートは5本。その中で効率よく2点を奪った山形が、3倍以上の16本を打った東京Vをシャットアウトし、5連勝を達成した。一見すると内容的には明らかに東京Vが上回っていたようだが、山形のこれまでの戦いぶり改めて振り返ると、1点差ゲームをものにし続けてきたディフェンスの粘り強さが存分に出た、ある意味では“山形らしい”勝ち方だったとも言えるのではないだろうか。
この試合、「劣勢の、攻められているチームが1つのチャンスをモノにすることによって、自分たちの流れにするっていうことができた。攻められながらもそこで慌てることなく最後のところで体を張った守備、連係のところでサポートし合うところが出たので失点にもつながらなかった。サッカーの勝つための1つの側面が表れた」と、奥野監督はそれを「サッカーの面白さ」と表現したが、敗れた東京V側から見えた“側面”は、サッカーの難しさだったと言わざるを得ない。しかし、『優勝してJ1へ復帰』を至上命題にしている以上、「これがサッカー」で済ませてはいけないだろう。
京都戦、湘南戦という、それぞれ上位との直接対決でも、内容そのものは良かった。が、結果として勝点を失った悔しさを、またしても繰り返す結果となってしまった。川勝監督は、敗因に「“ちょっとしたこと”の、その“ちょっとしたこと”が、まだ弱さ」と語ったが、それは、“こだわり”の差とも言えるのではないだろうか。セットプレーからの失点が多いと指摘されている東京Vだが、「(セットプレー対応が)強い選手をわざわざ使って、ビルドアップとか全体のサッカーの質に目をつぶるってことはできないしね」と、結果とともにサッカーの“質”にも最大のこだわりを見せる川勝ヴェルディと、「自分たちの思い通りにできるときは積極的にボールを配給することに徹しますが、今日みたいに攻め続けられている時は、DFラインに加わって守りに徹します。その割り切りはできているので」(宮阪政樹)、「無理に3人で攻めるよりも、俺がトップ下に降りて、とにかくセカンドボールを拾うことにした。その辺の臨機応変さは、みんなで話せてるから」(山崎)と、“割り切り”“臨機応変”という“勝ち”へのこだわりをまず何よりも最優先させた山形。東京Vが、“結果”と“質”にこだわっている以上、そのどちらの要素に対しても、今以上の「執着」とも言える徹底的な強いこだわりがなければ、“勝ち”へこだわる相手を上回ることは難しいのだと、この試合の結果が物語っているのではないだろうか。

担当チームとしてのひいき目も大いにあることを認めつつ、正直を言って、この試合の東京Vのサッカーは見ていて非常に面白かった。だが、その先に「勝利」が結びつかない限り、決してそこに満足はないのだと痛感する。
「見ている人を魅了するサッカーで、自分たちも楽しく、相手を圧倒して勝つ」。理想的だが、実現することがどれだけ高度で難しいことか、改めて思い知らされるとともに、それでも追求する監督、選手たちに心からの敬意を抱く。また一方で、山形の、状況や相手に応じて自分たちの判断で戦い方を変えられる柔軟性と、その中でしっかりと勝点を獲得していく勝負強さにも、脱帽である。
個人的にだが、あらゆる意味で今季忘れられないゲームの一つになることは間違いなさそうだ。次の対戦が、非常に楽しみである。

以上

2012.05.01 Reported by 上岡真里江
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