京都サンガF.C.は間違いなくJ1昇格候補に名の挙がる強豪だ。その相手に0-0のスコアレスドロー。勝点1を得たのか、勝点2を落としたのか。もちろん、あくまでも松本はJリーグ“1年生”。慢心は禁物だが、少なくともこの日のゲームに関しては、「勝点3を取れず、悔しい思いはある」(反町康治監督)、「引き分けたことを前向きに考えたい」(大木武監督)という両監督の言葉、または試合後の選手たちの表情が全てを物語っている。
京都がピッチの上で表現しようとしていることは明確だ。密集地帯を細かいパスですり抜けながらゴール前まで運ぶポゼッションサッカーである。一方の松本のサッカーもやはりシンプルだ。高い位置からのチェイシング、そしてボール奪取後は時間をかけることなくディフェンスラインの裏を通そうとするものである。言わば、お互いが持ち味を出したサッカーが出来ていた。
90分間を通じて、流れを掌握していたのは、戦前の予想に反してホームチームの側であった。シュート数に目を移すと、京都が5本。一方の松本は倍以上の12本にあがる。前半は8本のシュートを京都ゴールに浴びせ、特に20分から30分にかけての攻撃には見るべきものがあった。ペナルティーエリア内に人数をかけて攻められるようになっており、中盤の選手も大胆に攻めあがり、12,154名の観客が詰め掛けたアルウィンは幾度となく沸点に達した。
しかし、「半分喜んで、ベンチから出ちゃうシーンがあった」(反町監督)ものの、京都の水谷雄一が文字通り“守護神”として、好セーブを連発。フィニッシュの精度が足りなかったことで、結局押し込める時間帯で決めきれずに0−0で折り返してしまう。こうなると、後半以降は所謂“攻め疲れ”が心配になってくる展開となった。事実、少しずつ京都のパスが繋がり始め、松本のディフェンス陣が走らされるようになっていた。
しかし、後半開始直後は持ち直した京都だったが、徐々にどちらに転んでもおかしくない、一進一退の攻防になっていった。京都のアタックが「ゴール前まで時間がかかった」(大木監督)こともあり、松本の守備陣は「戻りもプレッシャーも早かった」(伊藤優汰)。最終ラインの3枚がきっちりブロックを作り、最前線からファーストディフェンスに手を抜かなかったことで、京都の攻めには“柔軟性”と“怖さ”が不足していた。ここでリズムをガラリと変えられるようなドリブラーがベンチにいれば、京都にとってはおもしろい展開に持ち込めたかもしれない。もちろん、その点を考慮してウィルフリード・サヌを獲得したのだろうが……。軸はぶれていないと映るだけに、幾つかの課題は5月以降に持ち越しとなりそうだ。
もちろん両チームとも最後まで勝利を諦めることなく、前線の活性化を図って攻撃的な選手を次々と投入。特に松本は前の3枚をそっくり代えるという積極さを見せたが、精度の低さは解消されず、結局ゴールを割ることは適わなかった。
試合後の松本の選手たちは、皆が「勝てた試合」と口を揃えるように、その表情は複雑だった。しかし、進むべきベクトルは間違っていないという手応えと、それを勝利に結びつけることが出来なかった悔しさが入り混じったその表情からは、成長のプロセスの第一段階が終わりつつあることを感じ取ることが出来た。
強豪相手に常に主導権を握る展開に持ち込んだものの、あとほんのわずかながら点に届かなかったという事実。勝点2を落とした“両者痛み分け”という評価に至るのも正しいのかもしれないが、着実な成長を感じ取ることが出来たという意味では、松本にとっては極めてポジティブな好ゲームであった。
以上
2012.05.01 Reported by 多岐太宿
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