サッカーの目的として、前半と後半では全く別のゲームだった。前半は、ボールを大事に繋ぐというお互いの特長を出しながらゴールを目指す展開。しかし、町田が2点リードで折り返した後半は、総攻撃を仕掛ける横浜FCに対してカウンターを狙う町田という構図だった。後半だけであれば2-2とスコア上は互角。だからこそ、そういう後半の展開に持ち込ませてしまった前半がこの試合の全てだった。

横浜FCは前節の反省から「立ち上がりから前から行こう」と山口素弘監督が声を掛けて試合に臨むが、この試合も立ち上がりのペースが上がらなかった。それは、22.9度と少しだけ高くなった気温のためではなく、平本一樹の扱い方。この日、町田は平本と鈴木孝司の2トップを選択。鈴木孝が高く張り、平本が少し低い位置を広く動く形が見事にフィットする。「平本が引いたところの準備をずっとコーチングしていたが、センターバックがボランチのところでの連係を全くしていなかった。それは開始5分から言っていて、毎回言っているのに修正できなかった」（シュナイダー潤之介）というように、平本を捕まえられずに後手を踏む。
さらに、売り物の前進するポゼッションも、細かいコンビネーションが合わずに町田の守備の網に引っかかってしまう。横浜FCとしてはペースが上げられない嫌な雰囲気の中、町田が33分に先制する。横浜FCのDFラインが崩れたところを、左に開いた平本が抜け出し、そのままグラウンダーのパスを中に送ると鈴木崇文がダイレクトで決める。そして前半終了間際の44分、横浜FC・大久保哲哉のポストプレーの落としを奪うと、そのままショートカウンターを決めて最後は平本がゲット。横浜FCにも前半にチャンスはあったが、それよりも、緩く入りペースを戻すための修正ができなかったツケを2失点として払うことになった。

後半、横浜FCは3バックに変更し、カウンターを受けることは覚悟の上で総攻撃を仕掛ける。ある意味、伸るか反るかの勝負に出るが、当然の帰結として打ち合いの展開となる。この打ち合いでも先手を取ったのは町田。55分に、横浜FCの3バックからのビルドアップでボールを奪うと、裏に持ち出した平本からパスを受けた鈴木崇がこの2点目をゲット。67分にはサイドチェンジを受けた小野瀬康介のクロスに大久保が合わせて横浜FCが1点を返し、ニッパツ三ツ沢球技場に反撃ムードが充満するが、72分に横浜FCのCKからのカウンターを鈴木崇が決めてハットトリックを達成。横浜FCが82分に大久保のゴールで1点は返すものの、後半の打ち合いでも機先を制した町田が快勝を収めた。

横浜FCとしては、気をつけていたにも関わらず、前半の入り方で厳しさを出せなかったことが敗戦に繋がった。「勝ちたいという意欲が、2勝したことで薄れたのかな」というシュナイダー潤之介の言葉は、精神面でそのことを象徴しているが、中身を突き詰めてみると「平本のところに誰が行くかをはっきりさせるべきだった。また、FWは前から（守備に）行っていたが、後ろからの押し上げがなくて、そこで中盤は後ろに合わせるのか、前に合わせるのかで戸惑ってしまった」（中里崇宏）という、守備に関する確認作業と修正作業が不十分であったことの問題。その確認さえできれば、ペースを取り戻すチャンスはあった。
ありがちな「気の緩み」という問題提起だけでなく、それを緩ませないために、ピッチの中でのプレーと作業のレベルを上げていくことの重要性が認識される試合となった。4試合連続2得点というように、攻撃陣に点を取る力は出てきている。あとは試合で勝利という形に結実させるための守備の向上が必要になる。

勝利した町田は、「ここまでの試合ではベストゲーム」とオズワルド　アルディレス監督が述べたように、平本が自由に動けるようになったことで、これまで積み上げてきたポゼッションが、より得点に近い形に繋げられるようになったと言って良い。4得点は今季最多得点で、今後の大きな自信につながるだろう。もちろん、平本が自由に動けたことだけでなく、町田の選手が勝利に対する執念を持ち続けたことが勝利につながったことは間違いない。勝利に対して「Stay Hungry（ハングリーであり続ける）」だった町田が横浜FCを一歩上回ったと言って良い。

良い形からの2連勝後、横浜FCは冷や水を浴びせられ、勝ち続けることの難しさを改めて認識した。横浜FCは今回の反省を生かし、町田はまた同じハングリーさを持ち続けることが必要になる。中2日しかないが、その過ごし方が重要になるだろう。

以上

2012.05.01 Reported by 松尾真一郎