三浦泰年監督は「弱気な虫が出ている」と話した。ディフェンス面で、オフェンス面で、その虫はこの日の北九州を覆っていた。ボールを持っている選手へのアプローチも、前への推進力も弱く、早い時間での先制点はゲーム終了のホイッスルが鳴ったときには遠い昔の出来事のように感じられた。強気こそ、北九州だ。そこに戻る必要がある。

試合は、強い風、強い雨の中で行われた。ロングフィードは風にあおられ、スピードのあるパスは伸びていってタッチラインを割る。試合を制した千葉の木山隆之監督も「前半から風がなくていい天候であれば、お互いしっかりポゼッションするチームなので、もっとおもしろい試合になった」と話す難しいコンディションだった。
しかし両チームの対応は早く、ロングボールを使わずに長短の地を這うパスを中心に攻撃を組み立てていく。やみくもに前に蹴るということはなく、状況に応じたサッカーのオプションを双方が持てたことは、勝敗にかかわらず次に生かせるものだった。

先制点は９分。右サイドを北九州の端戸仁が突破し、深い位置からの折り返しを渡大生が頭で合わせて先制。「いい流れで入れることができた」と話す渡の５得点目で、北九州が今季もっとも早い時間で先行する。
しかし千葉が「自分たちも修正してポジションをしっかりマッチアップさせ」（木山監督）たことで、北九州は先制し、何度か決定機を作りながらも流れを呼び込みきれなかった。
ゲームは中盤でボールを奪い合う展開になったが、33分、千葉の兵働昭弘のスルーパスに伊藤大介が抜け出して右足で落ち着いて決め、同点となる。

後半に入ってもゲームはやや千葉が優勢だったが、決定機までは至らない状態が続く。
ゲームが再び動いたのは63分。右サイドから田中佑昌が低い弾道のアーリークロスを入れ、これにマーク ミリガンが合わせて逆転のゴール。迷うことなく走り込んだマーク ミリガンは試合後「ボールを回して、いいサッカーができると信じてやることができた」とも話しており、チームメイトへの信頼が呼び込んだ得点でもあった。

逆転に成功した千葉は１点差を守り抜いて、４戦ぶりの勝点３を手にした。「こういういいチームにアウェイで勝ったことが、いいきっかけになると思うので、我々にとっては価値のある試合になった」と木山監督。個人の能力の高さに比べれば、まだゲームの組み立てで課題がないわけではないが、連戦の中でのハードな試合を逆転勝ちで制したことはチームに自信を付けることにもなっただろう。

一方で、北九州は「弱気の虫」の克服が急がれる。２失点ともにボールウォッチャーになっていたことは否めないが、むしろ課題は攻撃面。高いところまで運びながら、勝負ができずにズルズルと後退。気づけばＧＫまで戻しているということも何回かあった。カウンターのリスクにおびえるよりは、カウンターを食らってでも勝負に行く選択をすべきときがある。強い相手から勝点３を得ようとするならば、なおさら、リスクを背負いながら攻めるべきだろう。
幸いなことは、後ろを振り向く時間がないということかもしれない。「次がすぐあるので、下を向かないように、個人としてもやるべきことをやるだけ」と竹内涼。弱気の虫に立ち向かい、この悔しい敗戦を次に繋げなければならない。

以上

2012.05.01 Reported by 上田真之介