4試合ぶりの勝利を手にした徳島戦。4−0という結果はもちろん、自分たちのサッカーを披露して得た勝利は、福岡にとって仕切り直しの試合としては最高のものだった。
しかし、試合後に選手たちの口から出てくる言葉は課題ばかりだった。
「今日のプレーが最低限やらなければいけないこと。自分たちのプレスがはがされた時に、いかに守っていくかがこれからの課題。出来る試合と、出来ない試合がはっきりしすぎているし、メンタル面でいい状態を保っていかなければいけない」(成岡翔)
「前半はリズムを取るまでに簡単にミスから押し込まれるシーンもあったし、3−0になってから少し緩んでしまう時間もあった。今シーズンの中では割りと支配できた試合だったが、こういうサッカーを上位相手にも同じように展開するには、細かな課題を短い時間で修正していかないといけない」(鈴木惇)
勝利の時も敗戦の時も、その結果に一喜一憂せず、自分たちがやるべきことを整理し、そしてコツコツと積み上げていくのが福岡のスタイル。福岡はいつもと変わらぬスタイルで、次なる戦いへと向かう。
さて、10日間で4試合というゴールデンウィークのハードスケジュールを戦う福岡に求められているのは、徳島戦と同じ戦いを続けられるかという点にある。全員で攻め、素早く切り替えて、全員で守るという「全攻切守」のキャッチフレーズのもと、福岡が目指す攻守に渡って主導権を握る戦いができるか。とりわけ、いい守備からいい攻撃を作り出すことができるかが、福岡にとっての最大のポイントになる。
前田浩二監督は、自分たちのサッカーを表現するための生命線として「ボールへの寄せ。縦へ向かう意識。攻守の切り替え」の3つを挙げるが、徳島戦での勝利は、これを余すことなく表現したことで得られたもの。雁の巣球技場のトレーニングでも、引き続き、その部分についての徹底が行われている。
その福岡は、4連戦の初戦に東京Vをレベルファイブスタジアムに迎える。東京Vは、ここまで5勝1分3敗の5位。5年ぶりのJ1復帰に向けて着々と勝点を積み上げている。しかし、甲府、京都、湘南と、同じくJ1昇格を目指すチームとの直接対決に全て敗れ、現在は2連敗中。3戦連続で昇格争いのライバルチームとの直接対決となる福岡との戦いは、アウェイとは言え勝点3が必要な試合で、高いモチベーションを持ってレベルファイブスタジアムへ乗り込んでくる。
布陣は4−4−2。その戦い方は、足下へのパスを基調にボールをポゼッションして組み立てるお馴染みのスタイル。前線では杉本健勇がボールを収め、阿部拓馬がスペースへと飛び出していく。そして攻撃の起点となるのは右サイド。西紀寛の仕掛けと、高い位置取りから攻撃参加してくる森勇介は要警戒だ。このサイドの攻防で、どちらが主導権を握るかが、試合の行方を左右するひとつのポイント。出場停止明けのキム ミンジェを戦列に復帰させるのか、それとも徳島戦で存在感を示した尾亦弘友希を起用するのか、前田監督の采配に注目が集まる。
そして、東京Vに勝点3が必要なように、福岡にとっても譲れない戦いであることは言うまでもない。ゴールデンウィークの4連戦では、東京V、甲府、大分、栃木と上位陣との対戦が続く。いずれも難敵で、厳しい戦いが続くことが予想される。その4連戦を制してJ1昇格への足がかりを作るのか、それとも上位陣から離されてしまうのか。福岡にとっては大きな分岐点。今シーズン最初の山場と言える。
その初戦を迎えるに当たり、「選手たちに伝えているのは自分たち次第だということ。我々が目指すサッカーを出し切ることで、自然と勝点3につながってくる」とは前田監督。そして城後寿は、「昇格のためには、この4連戦は非常に大事。勝点3を如何に積み重ねるか。勝点3を取ることだけを考えていい準備をし、いいコンディションで臨みたい」と話す。福岡の真価が問われる戦いが始まる。
いま福岡は、「J2優勝、J1昇格」という目標を旗頭に、監督、現場スタッフ、選手が一体となってトレーニングを続けている。そして、試合に出る選手も、試合に出られない選手も、全く変わらぬ高いモチベーションと意欲を持ってリーグ戦を戦っている。その一体感が試されるのが、27日から始まる4連戦。必ずや福岡は、チーム一丸となってピッチの上で躍動する姿を見せてくれることだろう。
以上
2012.04.26 Reported by 中倉一志
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