今季からJリーグに入会したクラブ同士の“同級生ダービー”である。
松本山雅FCは地域リーグ時代から熱心なサポータに支えられるクラブで、第9節終了時点のホームゲーム平均入場者数は8210名。千葉、甲府に次いでJ2第3位を誇っている。今季2勝目を第8節の熊本戦で挙げると、第9節は昇格候補の千葉を下し、連勝で順位を15位まで上げた。熊本戦、千葉戦は失点0と守備が安定。布陣は〔3−4−2−1〕で、ボールを前線からしつこく追うタイトな守備と、奪ったら一気に前線へ運ぶ速攻が持ち味だ。大きな得点源になるのがセットプレーである。塩沢勝吾、飯田真輝の高いヘディングは、セットプレーの守備を弱点とする町田を苦しめるだろう。
松本からは、チームを大きく盛り上げそうなニュースも飛び込んできている。25日に「2シャドー」の位置で攻撃のキーマンとなる弦巻健人選手と、大竹七未さんの婚約が発表された。大竹さんは町田市で生まれ、町田でサッカーを始めた元日本女子代表のエース。同級生クラブの松本と町田に、また新たな「良縁」が生まれた。
FC町田ゼルビアも上昇基調だ。第5節から京都、東京V、湘南、栃木と強敵相手に4連敗を喫し、前節の甲府戦は「絶対に負けられない戦い」だった。田代真一、薗田淳と両センターバックが戻ったこともあり、アルディレス監督は3バックの導入を決断。甲府戦は最終ラインの連係に手探りな部分こそあったが、中を厚くすることで苦手としていた大型FWへの対応を克服。アルディレス監督も「しっかりしたセンターバックが3人いるということが、引き分けに持ち込んだ大きな要因だったのでは」と手応えを口にしている。次戦は今季3勝目を挙げ、順位でも松本の上に立ちたい。
甲府戦は切り札・北井佑季が発熱により不在。FW勝又慶典が後半早々に傷んだこともあり、終盤に本来の持ち味を出し切れなかった。しかし押し込まれつつ守備が耐えて「勝点1」を堅持。4月27日から5月6日までの4連戦に向けて「気分が違う。いい流れが来るんじゃないかな?」(柳崎祥兵選手)という前向きなメンタルを手に入れた。北井選手は24日のトレーニングマッチから復帰し、勝又選手も痛みはすぐ引いたとのこと。松本戦は問題なく出場できそうだ。
松本戦に向けたチームの修正点は「攻撃」だ。アルディレス監督は火曜日の帝京大戦後に「DFが奪いに来た時に初めてパスという選択肢が生まれる。スペースがあるのにパスを選ぶと、相手は動かなくても、迷わなくてもいいですよね? 可能性を広げる意味でも自分が運ぶ、仕掛けるという行為が必要です」と熱弁。実際に火曜日のトレーニングマッチは前半を1−1で終えたチームが、監督の「もっと自分で」という指示をきっかけに後半7得点。庄司悦大、鈴木崇文といった中盤の中央から決定的パスを供給できる選手が、自らの仕掛けを意識することで、より輝きを増していた。
町田と松本はJFLの2年間で過去4度対戦し、戦績は町田の3勝1敗。町田はFW勝又慶典が4戦5ゴールと「山雅キラー」ぶりを発揮している。「松本は最後まで攻めに来てくれるので、終盤に少し裏が空いてきたりする。そこで点を取れているのでは」と分析する勝又主将は、「山雅のサポーターは人数が多いし、リズムも好き」と対戦が待ち遠しそうだ。「山雅はすごいサポーターを引き連れてきているので、独特な雰囲気になるけど、そういう相手を黙らせたい。ずっと一緒に地域リーグ、JFLと戦ってきた相手に、負けたくないという気持ちがある」と松本へのライバル意識を見せたのはDF津田和樹選手。地域リーグ、JFL時代を知る2人にとって、何より町田のサポーターにとって、松本は特別な相手だ。
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