しっかりとボールをつないでサッカーを組み立てていくという今季目指すスタイルには、お互いに重なる部分がある。しかし、ここまでの結果は全く対照的だ。2勝2分5敗、勝点8で16位の熊本は、この3試合勝ちがない状況。一方、岡山は4勝3分2敗で9位。とくに最近は3連勝を含む5試合無敗という好調ぶりで、結果につながっていることで生じる自信が次の結果をもたらすという、言わば加速度的なプラスのスパイラルに乗っている。ここまでの得点、失点を比較すると熊本のほうが得点はわずかに多い(熊本9、岡山8)が、逆に岡山の失点は熊本の半分(熊本14、岡山7)。この試合で熊本が4試合ぶりの勝点3を得るには、まずは守備の面でペースをつかむことが必要条件となりそうだ。
その点に関して、前節・愛媛戦の内容がひとつの指針となる。強風を考慮して前半に風上のエンドを選んだ熊本は、立ち上がりからロングボールを多用して愛媛を押し込む策をとった。しかしこの結果、中盤がやや間延び。トップにうまく収まらない中、中盤のスペースを相手に使われる展開に陥っている。「中盤で落ち着きどころを作らせてしまって、中央を割られた。そこは修正して、守備のやり方を積み上げていかないといけない」と吉井孝輔は言う。
しかしながら、迎える岡山の攻撃陣は強力だ。特に、ポストワークのみならず、ピンポイントのクロスに合わせる、あるいは個で突破できる力もある川又堅碁がその代表格。前節の鳥取戦では相手のミスからボールをさらって先制点を挙げているが、川又以外にも、金民均の飛び出しやスルーパス、前節はボランチに入ったがそれまではシャドウの一角でプレーし、ドリブルで仕掛ける力もある関戸健二ら、2枚のシャドウと左右のワイド、またボランチも流動的に絡んで厚みのある攻撃を繰り出しチャンスを量産した。ここ数試合を見ても、細かいパスワークやゴール前への飛び出しとそこへの配球のタイミングは徐々に深まっている。ことさら守備が強いイメージはないものの、ボールを保持することで相手が攻撃する時間を短くしていることが、失点の少なさにつながっているのだろう。
熊本としては、セーフティな判断を優先することも含め、ゴール前での対応が最も重要となる。だが川又を意識するあまり他の選手を浮かせてしまうようでは、リスクマネジメントとしては不十分。球際の勝負で後手を踏まないこと以前に、中盤も含めたバランスの取れたポジショニングを意識しなくてはならない。岡山の場合、高い位置からプレスをかけてもアバウトなボールを前線に入れる場面はおそらく少ないだろう。パスの距離もショートレンジばかりではなく、時に1人とばして長い距離のパスを打ち込むシーンもあり、無闇に追ってはスタミナを消耗させられかねない。となれば、プレッシャーをかける位置とタイミング、さらに状況を見極め、共通認識の元でスイッチを入れられるかがポイントになろう。
上記のような効果的な守備対応を実践できれば、うまくひっかけて攻撃に転じることが可能になる。前節は「攻め急いだ」(武富孝介)という声も聞かれたように、ファーストチョイスとしてゴールに向かうアグレッシブさは維持した上で、奪った位置がゴールまで遠ければ丁寧にビルドアップし、また相手がセットした状態になれば作り直す余裕も必要。それにはサポートや前の動き、さらにはDFラインを動かすようなサイドチェンジからの展開も欠かせない。クロスにしても、普通の山なりのボールだけでなく、球足の早い低いボールを送る等、球質も含めた工夫を交えて得点のチャンスを高めたい。中途半端な位置でのボールロストからピンチを迎えないためにも、シュートで攻撃を終わらせる意識も流れを左右するだろう。
高木琢也監督は「連戦を考えれば、やらせることでオプションを増やすしかない」と話し、25日のトレーニングで今までにない形を試していた。果たしてそれがゲームで見られるかはわからないが、ハードな日程を乗り切るにはそうしたアレンジも必要になってくる。短いスパンでの連戦は、上位との差を詰めるチャンス。この試合以降も難しい相手との対戦が続くが、まずはきっちりと結果を出して弾みをつけたい。
以上
2012.04.26 Reported by 井芹貴志
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