どちらに転んでもおかしくはない展開だった。互いにチャンスがあり、ピンチがあった。そんな展開のなかで湘南は先に2点を奪い、失点を1に抑えた。連勝は再び4に延び、開幕から9戦、いまだ負けを知らない。
東京Vから挙げた前節の勝利には新たな意味も見出せる。コンディション不良によってメンバーが入れ替わりながらも、変わらぬ推進力や組織力、プレーの連続性を発揮した点だ。
リーグ戦初先発を果たした猪狩佑貴は振り返っている。「まずは勝ててほんとうによかった。これまで負けなしで来ていて、いままで積み上げてきたチームの流れを途絶えさせたくなかった」。いろんな力が入っていたみたいで、試合が終わったら体があちこち痛かったんですよ。そう言って思わず苦笑いを浮かべた副キャプテンだったが、右サイドで攻守に走り、FWやボランチと連係しながら好機も演出している。
キャプテンの坂本紘司も今季初めてスタメンに立った。
「絶対に勝ちたかった。久々に出るからといって自分のことを考えるのではなく、チームがきちんと機能するように落ち着かせて、ゲームを読んで、ボランチとしての仕事をしっかりしようと臨んだ。プレッシャーはあったけれど、経験を活かして力まずにできた」
彼らの言に代表されるような一人ひとりの献身が、勝点3となってまたひとつ実を結んだ。「我々は総合力で勝負するんだとあらためて思った」目を細めるのは曹貴裁監督だ。
「個々の技術の高い東京Vに対し、組織力で対抗できた。我々の良さをすべて出せたわけではないが、自分たちの良さによって相手の良さを消すことができたと思う。無骨だけれど気持ちの出た、この9試合でもっともいい試合だったのではないかと思う」
再びホームに戻る今節、湘南が迎え撃つのは現在7位につける水戸だ。開幕3連勝のあとは5試合白星から遠ざかっていたものの、前節はホームで草津に1−0で勝利した。とりわけ目を引くのが9試合で失点わずか4というその守備力だ。全員の守備意識が高く、豊富な運動量とあわせてコンパクトな網を敷く。また10番を背負う橋本晃司や3得点を挙げている小澤司など攻撃のタレントも光る。今節は鈴木隆行が出場停止となるが、柱谷哲二監督のもとで去年から培う継続性と着実なボトムアップを思えば、メンバーが代わって揺らぐチーム力ではないだろう。
「まずは自分たちのサッカーを貫くことが今年のテーマ」前節の東京V戦で先制点を導くドリブル突破を図った菊池大介は言う。
「前での突破力や推進力は自分の持ち味だと思ってる。相手の嫌なエリアに入っていけばチャンスに繋がるので、その数をもっと増やしていきたい。チームのプレー、そして自分のプレーを出せるようにしっかり準備したい」
「水戸は非常に組織的。J2最少失点の理由がよくわかる」指揮官がそう引き締める水戸の堅守を、湘南はいかに切り崩すか。もちろん東京V戦にも明らかなように、湘南の攻撃が前線からの積極的な守備に始まることは変わらない。長い笛が鳴るまで予断を許さぬ、熱い夜となりそうだ。
以上
2012.04.26 Reported by 隈元大吾
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