「ねぇねぇ、愛媛なんだけど、一緒に行かない？　いや、実は呼ばれてるんだ。一平くんたちがボクと勝負したいらしいんだよね。走りで馬にかなうわけないのに（笑）」
なんてことを言われたわけではないけれど、このＪ２日記のコーナーが始まって以来、計画していながらなかなか実現できなかったのが、アウェイゲームに応援に出向くロアッソくんの“遠征同行記”だった。

実は昨シーズンの２節も一緒に京都まで行く約束をしていたのだが、直前に発生した東日本大震災の影響で延期に。今年の３節・京都戦も声をかけてくれていたのに、私の個人的な用事が重なり止むなくキャンセルしていた経緯がある。

そして迎えた先日の９節・愛媛戦。今回は試合前に行われる「ゆるキャラ１００ｍ競争」に“招待選手”としてエントリーされているということもあり、ならば是が非でも一緒に行かねばと、旅のお供役を買って出たのだ。

熊本から愛媛へ行くのに、主な手段は２つある。まずは福岡まで移動して空路で松山入りするルート。これは時間も短縮できるし移動も楽だけれど、身体というか頭が大きいロアッソくんには不向きだし、交通費も高くつく。したがって必然的に移動は車で、という選択になるわけだが、その場合は、大分まで移動してフェリーで豊後水道を渡って四国入りするのが一般的。さらにフェリーにしても、臼杵〜八幡浜を結ぶオレンジフェリーと、佐賀関〜三崎を結ぶ国道九四フェリーの２つの航路がある。

個人的な過去の遠征では臼杵航路を利用していたが、今回は小学生ながらコスト意識の高いロアッソくんのアドバイスもあり、料金が安く乗船時間も短い国道九四フェリーをチョイス。早朝の便に乗船するため、22日の深夜２時頃、熊本を出発する計画を立てた。しかし状況が一変したのは出発当日。九州および中国・四国地方を見舞った強風が、船の運航に影響したのだ。

選択肢から外した臼杵発のオレンジフェリーは、航行中の揺れを軽減する「フィンスタビライザー」という仕組みを採用していることもあって強風でも欠航の可能性は低かったのだろう。実際にこの航路を利用し、試合当日の便で四国入りした熊本サポーターも少なくなかった。一方、我々が乗ることにしていた九四国道フェリーは、強風による時化（しけ）のため早々に欠航が決定。「フェリーが欠航になるみたいだから、ちょっと早めに出発して、広島から陸路で入ったほうがいいと思うんだ」。21日（土）の20時に携帯が鳴り、ロアッソくんからそう告げられた。

仮に大雨の影響で１００ｍ競争が中止になる可能性があったとしても、招かれている以上、きっちり間に合うようにスタジアムに到着しなくてはならない。彼はまだ子どもだけれど、さすが跳ね馬のエンブレムをつけているだけあって、そのへんのプロフェッショナリズムはしっかり持ち合わせている。

レースを盛り上げるための準備に時間がかかったとかで待ち合わせた場所に少し遅れてきたが、22日（日）の０時20分頃に出発。熊本インターから九州自動車道に乗った。到着予定は翌22日の朝８時だ。《中編へ続く》

以上

2012.04.24 Reported by 井芹貴志