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【J2:第9節 東京V vs 湘南】レポート:悔しいセットプレーでの2失点で東京Vは今季初の連敗。メンバー入れ替えても質の落ちない戦い見せた湘南は首位を独走。(12.04.23)

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甲府、京都に続き、またしても東京Vは上位との直接対決を制することができなかった。
前節の京都戦同様、決して内容的に悲観するものではなかったが、開幕8戦無敗と破竹の勢いをみせる首位・湘南の勢いを止められるほどの勝負強さは、残念ながらまだ備わってはいなかったようだ。

「我慢っていう感じの展開」と、阿部拓馬が表現したように、お互い"良さを良さで消し合う"一進一退の状況が続いた中、勝敗を決めたのは後半25分だった。

前半から何度もドリブル突破で東京Vのゴール前を脅かしていた菊池大介が、またしても中盤右サイドから仕掛けていく。止めにきた東京Vの選手2人のプレッシャーを容易に交わし、折り返すと、そのクロスボールが「本当に、手を出そうだなんてまったく考えてもいませんでした。ただ、『何とかカバーしなきゃ』と思って行った」ペナルティエリア内でDF深津康太の手に当たりPKの判定。これを、若き湘南の主将・遠藤航が落ち着いて決め、堅い試合のスコアを動かした。遠藤は、これが今季PK3点目である。「前の2つより緊張しましたが、あそこに立った瞬間は非常に落ち着いて蹴れました。PKは得意ではないですが、これである程度自信がついてきました」DF選手ながら、チーム最多となる5得点目となった。

なかなか点が入らないゲーム展開の中で、PKという形で先に失点したことはもちろん痛かった。だが、東京Vにとって本当に痛恨だったのはこの後である。先制され、漂ってしまったイヤな雰囲気を一刻も早く払拭しなければいけないはずのキックオフ直後の流れで、再び攻め込まれ、FKを与えてしまった。PK後1分のことである。古橋達弥がニアに入れたFKを島村毅が左足で掠り、2点目。東京Vにとっては、わずか1分で、セットプレーによって2失点を喫するという結果に、「そんなに大きく崩されたわけではないから、なおさらショックが大きかった」(GK柴崎貴広)。「PKは事故みたいなものだから、しょうがない。康太は悪くない。ただ、問題は立て続けに失点したこと」と土屋征夫が語るように、他の選手たちも全員、1点目よりも2点目を最大の反省点に挙げ悔しがった。

また、川勝良一監督も、「全然悪いゲームはしていないし、相手もPKでやっと点を取ったというあまりチャンスもない状態。しかもまだ時間もあったので、ポジティブにその1点を跳ね返して3点とれる能力はあるのに、自分たちでそれを消してしまう。ゲーム中のアクシデントに対応できる、本当の意味で強いというか、切り替えが本当に上手くできる選手がいないのがウチの最大の弱みのひとつ」と語っており、真の意味でのメンタル面でのリーダー不在を課題に挙げる。

指揮官の言葉にもあるように、2点ビハインドとなった中でも、ジョジマール、梶川諒太、中谷勇介と交代選手がそれぞれ効果を発揮し、後半42分に挙げた阿部の見事なゴールをきっかけとした、試合終了までの数分間の怒涛の攻撃は、「1点を跳ね返し3点とれる能力はある」であろう可能性を十分に感じさせたのではないだろうか。最後までもう1点を取りに行くをモットーとしている湘南・曹貴裁監督が「この9試合で、これが初めて」と、最後の交代カードでDF山口貴弘を切ったところにも、それは証明されているように思う。「0−0の状況から、あれぐらい前へ前への意識が出せるか」(土屋)が、今後の課題となりそうだ。

「みんなはかばってくれるけど、あのPKまではみんな集中していたし、あれがなかったら、集中力が切れて2点目のFKを与えることもなかったと思う。すべて僕のハンドが招いてしまった。本当に悔しいし、申し訳ないです。湘南とは、もう1回やれるので、この借りは必ず次の対戦で返します」と深津はリベンジを固く誓った。

湘南にとっては、現在のチームの強さが本物であることをしっかりと証明できた試合となったのではないだろうか。開幕から前節まで、常に先発としてチームの勝利に多大に貢献してきた古林将太、高山薫の両サイドをコンディション不足で欠き、代わりに今季初出場の猪狩佑貴とポジションを1つ上げて初めてサイドハーフとして起用された大野和成が入る。また、ボランチには坂本紘司が今季初先発で入るなど、大きくメンバー変更を行って挑んだが、それぞれしっかりと機能していたと言えるだろう。特に湘南スタイルの象徴とも言える、古橋、菊池、馬場賢治の攻撃3枚と両サイドがパワフルかつ流動的に絡み合う攻めの形はこれまでと全く遜色はなく、猪狩、大野とも持ち味を十分発揮し躍動した。

この結果に、曹監督は「彼がレギュラーでこれがサブだっていう棲み分けは僕はまったくしていない。常に今一番良い状態の選手を使うということを言い続けているので、彼らが出た時にそれをプレーに出してくれたことは、それを証明してくれたってこと」だと語っている。このように、誰が出ても、チームとして質の落ちないサッカーができることこそ、強いチームの条件と言えるのではないだろうか。メンバーが変わっても、きっちりと勝点3を挙げられたことは、またさらに大きな自信へとなったはずだ。

一方で、「明日休んで、次の日からまた競争する」が曹スタイル。この日のメンバーもまた、次の試合への出場権を勝ち取らなければいけないという競争意識もまた、好調の要因となっているに違いない。

自分たちのスタイルをしっかりと持つことの重要性。そして、勢い、自信、一体感を真の意味でもたらすことができるのは"勝利"しかないのだということを、湘南ゴール裏で繰り広げられた選手たちとサポーターとが一体となって踊る『勝利のダンス』を見つめながら、改めて考えさせられる一戦となった。

以上

2012.04.23 Reported by 上岡真里江
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