ケネディ不在時の戦い方も板についてきた名古屋だが、その戦術を見出したといえるのがAFCチャンピオンズリーグのアウェイ・天津泰達戦だった。この試合にケネディは出場していたのだが、コンディション不良で運動量が上がらず存在感は万全の状態には程遠かった。しかし、チームは実にアグレッシブな動きを見せ、美しい3つのゴールを奪って快勝を収めたのだった。その要因は金崎夢生と永井謙佑による激しいフォアチェック。スピードのある二人が相手のビルドアップを分断したことで、全体の守備ラインも自ずと前進し、高い位置でのボール奪取ができるようになった。天津泰達戦のゴールはどれもショートカウンターと呼べる速い攻撃から生まれており、ケネディの高さを必要としない、名古屋にとっては新たな武器の発見だった。以降のリーグ鳥栖戦、札幌戦と続けてケネディは負傷欠場したが、名古屋は連勝を記録。勝利を呼んだのは前からの守備と速攻だった。
同じ相手とのホームゲームとなれば、誰もがその再現を期待するところ。調整中のケネディに加え、田中マルクス闘莉王も欠場が噂されているが、前回対戦時にも闘莉王は欠場していた。代役のダニエルもすっかりチームに馴染んでおり、他の選手が苦労することも多いゾーンディフェンスにも難なく対応している。このあたりはさすがにブラジルの名門クラブでプレーしていただけのことはある。大きく上半身を反らせての豪快なヘディングは、スタジアムを沸かす熱いプレーになった。昨季までなら一大事だった攻守の要の不在だが、今はその穴を埋めるだけの用意ができている。ピンポイント補強に終わったプレシーズンには不安視する声もあったが、フロント含め名古屋のチームマネジメントには改めて感心させられるばかりだ。
一方の天津泰達はACLでも未勝利、国内リーグ戦でも6試合で2勝といまだ苦戦のシーズンが続いている。名古屋との前戦で存在感を見せたアルス(背番号28)が調子を上げ、3得点でリーグ得点ランク上位に食い込んできたのは数少ない朗報だが、DFリーダーのリ・ウェイフェン(背番号5)が出場停止なのが痛いところ。正確なフィードで攻撃の起点ともなっていただけに、名古屋との再戦では誰がその役を務めるかにも頭を悩ませそうだ。中国代表のチン・タオ(背番号21)やシュムリコフスキ(背番号29)らボールを持てる選手たちがいかにゲームを作るかが、彼らにとっての生命線になるだろう。
こうして書くと名古屋の優位性ばかりがピックアップされてしまうが、不安要素はそれでもある。天津泰達が出場停止で守備の要を欠くように、名古屋も出場停止で藤本淳吾を欠くのである。ボランチあるいは2列目からゲームのリズムを刻み、決定的な仕事もこなす攻撃的MFの不在は、ケネディや闘莉王の欠場と同レベルの穴となる。おそらく中村直志がボランチに復帰し、前線の4名はリーグ札幌戦と同じ顔ぶれになるだろうが、いずれにしても藤本の欠場は攻撃陣にとってはマイナスでしかない。
それでも復調してきた小川佳純のフリーランニングは藤本にはない武器で、中村がいることで守備はさらに安定するはず。天津泰達との前回対戦で豪快なゴールを挙げた玉田圭司、そしてスピードを生かして攻守に大活躍だった永井らも好調をキープしており、このメンバーでどのような戦いを見せてくれるかという期待は不安よりも大きい。勝てばグループリーグ突破に大きく前進する状況もチームにとってはモチベーションにつながる。今季2戦目のホームでのACLで、“誰が出ても強い名古屋”を見せつけてくれるか注目だ。
以上
2012.04.16 Reported by 今井雄一朗
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