提示された4分間のアディショナルタイムを終えて、大きなホイッスルが響き渡る。訪れる静寂。肩を落とす選手たち。その姿に両チームの無念さが滲み出る。2連敗後の仕切り直しの1戦を勝利で飾りたかった福岡。4戦勝ちなしという状況から抜け出したかった水戸。ともに自分たちのカラーを出して戦ったが勝点3には届かなかった。立場の違いから、引き分けに対する捉え方は両チームの間で微妙に異なるが、試合展開は全くの互角。結果は極めて妥当なものだった。過去の試合と比較すれば互いに前進した部分はある。だが、それは勝利には至らない変化。この内容、結果を次につなげなげて、小さな変化を結果に結びつけることが両チームに求められることだ。
勝負の世界では目の前の試合での勝利は譲れない。無念さが募るのは当然のこと。しかし、発展途上の両チームにとっては、終わった結果に一喜一憂せずに変わらぬ姿勢を貫くことが何よりも大切だ。どんな結果になろうとも、目標を見失うことなく、自分たちがやるべきことを整理して、変わらぬ気持ちでやり続けること。それが、これからの両チームの行方を決めることになる。
さて、立ち上がりは福岡が主導権を握って試合が進む。その中心になったのは、5試合ぶりに先発に復帰した鈴木惇。中盤で積極的にボールを受け、時に素早く、時にゆったりとチームのリズムをコントロールしながらボールを配る。5分に生まれた先制点は、その鈴木のサイドチェンジから。そしてキム ミンジェの絶妙なクロスにファーサイドへ走り込んだ坂田大輔が合わせた。流れるようなビューティフルゴールだった。その後のリズムも福岡のもの。水戸陣内でボールをキープする時間帯が続く。ただし、ブロックを敷いて守る水戸の守備網が破れない。福岡にとっては、この時間帯に追加点を奪えなかったことが悔やまれる。
そして、膠着状態の時間を経て、35分を過ぎたあたりから水戸がリズムを刻みだす。チームにリズムを与えたのは島田祐輝。積極的に前線に飛び出してはチャンスを作る。堅守をベースに戦うのが水戸のスタイル。そこへ、ゴールへの積極性を加える島田のプレーが変化を加えた。さらに後半に入ると、水戸は両SBの位置を高くしてゴールへの圧力を高める。そんな水戸に対して、福岡はラインの裏を狙ってチャンスも作ったが、互いのゴール前を行ったり、来たりする展開は福岡の臨むところではない。そして、落ち着かない展開の中で迎えた65分、水戸は攻撃参加した塩谷司から橋本晃司へとボールが渡る。最後は橋本のスルーパスに反応して前線に飛び出した小澤司がゴールネットを揺らした。
最後の15分間は、勝点3を目指してリスクを背負って攻め合う展開に。89分、高橋泰が放った強烈なシュートにレベルファイブスタジアムのサポーターが湧き立ったが、これを水戸GKの本間幸司がスーパーセーブ。結局、互いに譲らない試合は1−1のまま試合終了のホイッスルを聞いた。
過去2試合で7失点を喫していた福岡にとっては、水戸を1得点に抑えたことが、この日の収穫。立ち上がりの時間帯を落ち着いてプレーすること、奪われたボールに対してプレスバックすること、切り替えを素早くすること、ピンチの場面でも最後まで体を寄せること等々、基本動作を徹底したことが、その要因だ。しかし、「今は攻守に渡って主導権を握ってボールを奪うことに取り組んでいる過程」と前田浩二監督が話した通り、守備組織の構築という意味ではまだまだ。ゲームをコントロールするということも含めて、目指すサッカーの構築に向けて取り組まなければいけないことは多い。
対する水戸は5試合ぶりのゴールをゲット。「いつもよりもゴールに近いところでプレーできたし、点が取れそうな感じがあった」と島田が話した通り、ゴールへの積極性が感じられるようになったことが好材料。しかし、「最後のところや、そのひとつ前のところの精度がなかった。無理に攻めているところも、持たされている部分もあった」と橋本は振り返る。これをきっかけにさらにチーム力を積み重ねていく必要がある。
勝点2を失ったのか。それとも勝点1を積み上げたのか。前述の通り、その評価はこれからの戦い次第で変わる。そして迎える第9節。福岡はアウェイで徳島と、水戸はホームで草津と対戦する。
以上
2012.04.16 Reported by 中倉一志
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