試合終了のホイッスルが鳴り響くと草津の選手たちは次々とピッチへ倒れ込んだ。前半のシュート数はわずかに２本。90分を通じてタフな戦いが要求されたゲームだったが草津は、ゴール前で体を寄せて相手シュートを決死にブロック。前半35分にセットプレーから奪った虎の子の１点を、勝利に変換すべく最後まで戦い続けた。チーム一丸となった草津は、開幕８試合目にしてホーム初勝利をサポーターへ届けた。

草津は６試合ぶりの勝利を挙げた前節富山戦と同じスタメン。金成勇を２トップの一角に配置、有薗真吾、小柳達司をＣＢに起用する球際重視の“闘魂スタメン”を組む。ゲームは序盤からセカンドボールを拾えるかがカギとなった。「愛媛が縦に入れてきたのでセカンド勝負になると思った」（櫻田和樹）。互いにＦＷへの縦パスを起点としたため中盤の底を中心にハードなセカンドボール争いが展開された。前半からともに決定打を欠いた内容だったが、草津は辛抱強くボールに食らいついていく。

前半は我慢のサッカーだった。草津は中盤でボールを奪うものの前線でボールを引き出す動きが足りず、攻撃が手詰まりに陥っていく。アタッキングサードまでボールは運んだがアイデア不足によりバイタルを突破することができず前半34分までシュートすら打つことができない。流れ変えたのは金成勇がもらったピッチ中央約30メートルのFKだった。

本来であれば松下裕樹の距離だが、攻撃面でストレスを抱えていたヘベルチがキッカーに名乗りを上げる。そして「クリロナをイメージした」（ヘベルチ）という強烈な無回転シュートを放っていく。ブレながらゴールへ向かったショットはGK手前でバウンドしたことで、処理の難しさを増した。GK秋元陽大が弾いたボールを、リンコンがGKともつれながらも足を伸ばしてゴールへと押し込む。草津が前半に打ったシュートはこの２本のみ。だが草津が効率の良い攻撃で１点をリードして45分を折り返す。

草津は得点シーンでアクシデントが発生していた。ゴールを決めたリンコンがGKと交錯して負傷退場したのだ。だが不幸中の幸いというべきか、リンコンに代わって出場した小林竜樹が豊富な運動量で前線をかき回して、攻撃に変化を加えていく。「前半はリンコンが引き気味になっていたので、縦の動きを加えようと思っていた」（小林）。その動きに感化されるように連係を取り戻した草津は追加点こそ奪えなかったがアグレッシブなカウンターを披露。チーム全員が最後までゴールを狙って攻め続け、勝点３を手にしてみせた。
敗れた愛媛は序盤こそ、大山俊輔、前野貴徳、内田健太が阿吽の呼吸でボールを動かしサイドを突破したが、時間の経過とともに草津の激しいプレッシングに抑え込まれた。バルバリッチ監督が「ゲームをコントロールすべき選手が役割を果たせずポゼッションに持ち込めなかった」と話したように、草津の土俵へと引きずり込まれチームの特長を発揮できなかった。「アウェイで勝てないと連勝できないし順位も上げられない」（福田健二）。愛媛はホームで３勝１分だがアウェイでは１分３敗。今後は敵地での戦いがポイントとなる。

ホーム初勝利を挙げた草津は勝点を12（３勝３分２敗）へと伸ばして11位へと浮上した。前節同様に決して美しい勝ち方ではなかったが、肉弾戦に持ち込んだことでチームのファイティングスピリットが目を覚ました。「闘うベースを継続しながらプレーのクオリティーを上げていきたい」（松下裕樹）。今季初の連勝を決めたことで６位千葉との差は勝点２に縮まった。ただ今の草津に必要なのは「上」をみることではなく、チームの構築。その土台となる闘争心は着々と育っている。

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2012.04.16 Reported by 伊藤寿学