押し気味に試合を進めたのはホームの湘南だった。3トップから積極的に圧力をかけ、また彼らの裏への動き出しを端緒にセカンドボールを拾い、フィニッシュまで結ぶ。対して横浜FCも、「落ち着いた入り方ができたと思う」と山口素弘監督が振り返ったように敵の攻撃を凌ぎ、両サイドの裏を狙いつつ、ときにプレッシャーをかいくぐってパスを繋ぐ。
試合が動いたのはセットプレーからだった。36分、古橋達弥のコーナーキックに走り込んだ馬場賢治が頭を合わせた。「ニアに大きい選手が立っていたので、そこを越えるボールを蹴ればチャンスになるだろうと思っていた。狙いどおりでした」古橋は語る。振り返れば、それまで枠を捉えながらも阻まれていた湘南のフィニッシュがようやく届いた格好だった。
しかし、「いい時間帯と悪い時間帯が交互に訪れるような、ジェットコースターみたいな展開だった」と湘南の曹貴裁監督は振り返っている。そうたらしめたのは、後半キックオフ直後の同点ゴールだろう。左サイドの裏へ抜け出した内田智也が仕掛け、自ら持ち込み、鮮やかに右足を振り抜く。「リードして見えない隙があったかもしれない。ミーティングで話していただけに反省点です」鎌田翔雅が自戒も込めつつチームの思いを代弁した、横浜FCの秒殺劇である。
追いついた横浜FCの勢いはさらに増す。かたや湘南はリズムを失いかけていた。流れに歯止めをかけるべく、釘を打ちつけるように効いたのは、程なくして奪い返したゴールだ。52分、菊池大介からパスを受けた鎌田がアタッキングサードへ持ち込みクロスを送る。これを対極で攻め上がってきた高山薫がヘッドでねじ込んだ。昨季チーム得点王の待望の今季初ゴールは、波に乗りかけた敵を突き放す貴重な追加点となる。付け加えるなら、鎌田は失点直後にもオーバーラップを試み、チャンスを演出していた。
再びリードを奪われた横浜FCは、田原豊を送り出すとともに最終ラインを3枚に減らし、攻勢にかかる。だが68分、逆に湘南がハン グギョンのボール奪取からカウンターに転じ、馬場、古橋と経由して、最後を菊池が鮮やかに締めた。ジェットコースターは、しかしそれでも止まらない。84分、コーナーキックのこぼれ球を武岡優斗が押し込み、横浜FCが1点差に迫る。追いかけるアウェイチームもさることながら、リードするホームチームも奪えば攻撃に転じ、最後まで攻め合う図式は変わらない。ようやく両者の足を止めたのは、主審の長い笛だった。
今節を迎えるまでの7試合でわずか3得点だった横浜FCは、今季初の複数得点を挙げた。後手を踏んだうえとはいえ、幾度か決定機をつくった事実に浮上の兆しを見る。ただ指揮官も試合後に触れたとおり、とりわけセットプレーによる失点は見つめ直さねばなるまい。そしてそれは、ゲームコントロールとあわせて湘南にも通じる課題となろう。反面、開幕以来全試合で挙げ続けている複数得点は、一貫した湘南スタイルの実りと言えるだろう。苦しみながらも手にした今節の勝点3を、これまで同様、次へのステップとしたい。
勝利の喜びを分かち合うなか、永木亮太は語っている。「横浜FCには去年2連敗しているし、個人的にもマークを外して失点した悔しい思いが残っているので、勝ちたい気持ちがかなり強かった」。現在の順位が過去の悔しさを晴らしてはくれない。一戦一戦、目の前の勝負にフルパワーを傾ける湘南が、らしい姿勢を貫き、取りつ取られつの攻防を制した。
以上
2012.04.16 Reported by 隈元大吾
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