東京V、草津ともに前後半それぞれ4本、合計8本ずつとシュート数はまったく同じ。勝敗を分けたのは、決定力の差だった。
前半11分には東京V・阿部拓馬、15分に草津・小林竜樹と、早い時間で作れた決定機を互いに逸していたが、23分、先に決めたのは東京Vだった。
ジョジマールの高めの好スローインを西紀寛が頭で阿部へ送ると、阿部は迷わずシュート。草津GK北一真の好セーブに阻まれたが、西がこぼれ球にしっかりと詰めネットを揺らした。
東京Vでの初ゴールとなった西だが、“らしく”「アベちゃんのシュートが良かった」と、まずチームメイトへの賛辞を口にした。
先制ゴールで、より攻撃に勢いがつくかと思われたが、「逆に点を取ってからが、ミスも多少あったりとか、点を取っているのに自分たちのペースじゃないペースでゲームをやることでだいぶ相手を助けた」(川勝良一監督)。立ち上がりから、1トップのリンコン目がけてシンプルにボールを入れてくる草津の攻撃への対応に少し手こずった部分もあり、先制後もなかなか攻撃のスイッチが入りきらなかった。
だが、その中でも、「ヴェルディは、中央での崩しが強いイメージがあったので、全体を絞ってとにかく真ん中を消して行こうというプランでしたが、逆にサイドを使われて崩されてしまった」と、松下裕樹(草津)が悔やんだ通り、「しかけられる」と踏んだ和田拓也がサイドバックからどんどんアグレッシブに攻め上がり、ゴール前でチャンスを作ることも少なくなかった。
その和田が、チームを救う見事なブロックを見せたのは後半29分だった。
後半は、金成勇、ヘベルチを入れリンコンと金の2トップにした12分過ぎから草津が押し込む展開が続いていた。東京Vが守勢を強いられて迎えたその決定的場面、ペナルティエリア内でリンコンが出したスルーパスからの金のシュートはGK柴崎貴広が前に出て体を張って止めたが、こぼれ球が後藤涼の元へ。GKのいないゴール目がけて流し込まれたそのボールのゴール侵入を防いだのが、和田の足だったのだ。「たまたま飛んできました」と、本人は謙遜して笑ったが、この1シーンが試合を決めたといっても決して過言ではないだろう。
そして、この最大のピンチを無失点で切り抜けられたことが、アディショナルタイムでの阿部のゴールをも生んだのではないだろうか。「エースが点を取らないとチームも乗ってきませんからね」と、アシストした同じ87年生まれの同級生として阿部とすっかり意気投合している新加入の小池純輝も、チームにとっても価値あるエースの追加点を喜んだ。
J1昇格を至上命題とする東京Vは、今季は「内容以上に結果を求める」と掲げていることを思えば、この勝利は大きなプラスとなる。だが、やはり内容も追求しているのが東京V。「(今日は)ぜんぜんダメでしょ」という西のコメントには、「まだまだもっと良くなると思います」という、今後への可能性を見据えた言葉が続く。「ボールが頭を越えていた。簡単に攻めすぎてた感じがします」と西が指摘した通り、必要以上にパスを回しすぎていたこれまでの反省からか、今回は逆に中盤を省略しすぎた傾向にあったという。そのうまいバランスを、チームとして今後どうとっていくのか。
また、守備面では「点が入らない時間帯が続くと、イヤな感じになってくる。どうゴールまでの形を作っていくかの意識がバラバラになってしまう」状況が毎試合訪れるのだと、和田は語る。攻守とも、まだまだ“理想のサッカー”のために改善するべき課題はたくさんあると言えよう。
とはいえ、前述の通り、エースが最後の最後でダメ押し点を決めたこと、西の移籍後初ゴール、2試合連続無失点、そして何より「悪いゲームでも負けなかった」(川勝監督)ことは大きな収穫であることは間違いないだろう。「チームとして成長している証拠だと思います」柴崎も自信たっぷりに話した。
敗れた草津は、今節も無得点に終わり、これで3試合連続無失点となった。リンコン、小林、林勇介、後藤ら前線が流動的に動き得点チャンスは作り出せているものの、やはり『決定打』を欠いた。「絶対に決めなきゃいけない」この試合最大のチャンスの場面で、東京V・和田にブロックを許した後藤は試合後、「情けない…」と何度も繰り返し自分を責めていた。「もう次はないぐらいの気持ちでやらなければ」と、危機感すら口にしていた姿に、今後の決意の強さを感じる。この悔しさをどう今後へつなげるか。チームのためにも真価問われるところだろう。
『1点』のために、まずすべきことは、「シュートの回数を増やしていくことだと思う」と、松下は語る。「今日も少なかった(8本)し、ここのところずっとあまり打ててない。ゴールチャンスは多ければ多い方が良いですから」。
最後は自分たちのミスから2点目を献上したが、その前までは、先制こそ許したものの守備はしっかりと安定しており、草津の大きなストロングポイントとなっていると言えよう。その堅守を勝利に結びつけるために、やはり『1点』がどうしても欲しいところだろう。「後手を踏むと、ウチはどうしても良い形ができないので、自分たちからかかっていくサッカーをしたい」と、後藤。次節こそ、『1点』を!
以上
2012.03.26 Reported by 上岡真里江
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