たとえばボール支配率を高めるとか、攻められてもペナルティエリアには入れさせないとか、「試合の主導権を握る」という言葉の背景にはいろいろな場面が想定できる。相手に押される展開が多くともワンチャンスをものにして勝利することを得意とするチームも当然存在する。だが、できれば90分のうち1分でも多く試合の主導権を握りたいと思うチームの方が多いだろう。
3月24日にユアテックスタジアム仙台で対戦する仙台と大宮は、昨季よりも攻撃性を増すことで試合の主導権を握ろうとしているチーム。相手陣内でボールを回す時間を長くするための工夫、そしてそれをゴールに結びつけるための努力に注目したい一戦だ。
大宮はアウェイの立場となるが、鈴木淳監督が2010年の就任以来取り組んでいるボール保持と展開力を重視するスタイルで、敵地でも攻撃の主導権を手放さない構えだ。ラファエルや東慶悟といった既存の戦力に加え、攻撃に厚みを加える新戦力が加入。そのなかで目玉となるのがサンパウロFCから加入したカルリーニョスで、ボランチとしての守備能力ばかりでなく、ボールの預けどころとしても存在感を発揮している。新潟から加入のチョ ヨンチョルの高速突破もカルリーニョスからの展開を受ければさらに威力が増すし、最前線のラファエルと中盤との縦の距離を縮めることで、独特のテンポでのパス交換や二次攻撃がしかけられる。
この大宮が仙台陣内での人数を増やして厚い攻撃をしかけてくることを、ホームチームの仙台は防がなければならない。今季の仙台は縦にコンパクトな布陣を相手陣内で組むことを目指しており、そのためには大宮に押しこまれないことが必要になってくる。手倉森誠監督が「相手のユニットを破るための工夫が必要な一戦」と展望するように、仙台は速さとコンビネーションで大宮の布陣からコンパクトさを奪い、こじ開けたスペースを突くことで相手ゴール前に多くの人数を送りこみたいところだ。
現在の仙台は二列目に関口訓充と太田吉彰というスピード自慢の選手を配置しており、そろってコンディションもいい状態。仙台はこの二人を中心として開幕戦の鹿島戦では相手中盤サイドのスペースを攻略し、第2節の横浜FM戦では相手の押される展開ながら、カウンターではサイド突破から一気にゴール前に迫った。このように主導権を握ることができてもできなくてもスピードを生かすことができるのが仙台の強みだが、ホームで迎えるこの大宮戦では、相手が攻撃に人数をかけてきたときこそ、ボランチの角田誠を中心としたボール奪取から素早く攻撃に切り替えたい。そこで攻撃のスイッチが入れば「今は一対一で前を向いてしかけることができている状態。スピード勝負では負けたくない」という太田らの突破を先頭にして相手陣内での主導権を握ることができる。
互いにボール奪取から敵陣侵入までの時間は短そうだ。その先でタレントを生かしながらどれほど効果的に連係できるかが、この試合のポイントとなる。
以上
2012.03.23 Reported by 板垣晴朗
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