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【ヤマザキナビスコカップ 磐田 vs C大阪】レポート:森下仁志の揺るぎなき“流儀”。逆転勝利に沸くヤマハスタジアムに垣根なき一つの“チーム”が見えた(12.03.21)

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“カップ戦は捨てた――”。
寒空の下、スタジアムに駆け付けたサポーターがそう捉えたとしても無理はない。先発メンバーには新ゲームキャプテン・山田大記の名もU-23日本代表・山本康裕の名もなく、守護神・川口能活はベンチ入りすらしていない。この試合、磐田・森下仁志監督は直近のリーグ・鳥栖戦の先発メンバーから実に8選手を入れ替えることを決断。それは指揮官が打ち出す、真っ向からの“所信表明”だった――。

布陣はリーグ戦と同様の[4-2-3-1]。最前線に前田遼一が入り、その下の2列目を左から松浦拓弥、押谷祐樹、ペクソンドンが並んだ。最終ラインの千代反田充、菅沼駿哉、宮崎智彦、ボランチの松岡亮輔は加入後公式戦初先発。前線の押谷も復帰後公式戦初先発である。無論、この日の先発11人は公式戦では初の組み合わせ。手探りな面が多くあったことも事実だ。前半はフィット感が一向に上がってこず、ボールを支配することができない。多くのサポーターが抱いたであろう不安は序盤から現実のものとなった。サポーターの目はいつになく厳しい。ホームチームのおぼつかない足取りはストレスでしかないのだろう。バスミスやボールロストのたびにため息が漏れ、しまいにはバックパスにも落胆の声が上がった。

対するアウェイ・C大阪は、先の大阪ダービーからの入れ替えはボランチ・横山知伸のみ。「チームとして完成度を上げていくためにもこの時期に1試合でも多く同じメンバーで試合を重ねていきたかった」(セルジオソアレス監督)という意図はよくわかる。公式戦のピッチ上でしか共有できない“感覚”というものもあるのだろう。中2日のアウェイゲームとあり、相手以上にタフな日程ながら、チームのさらなるブラッシュアップと勝利の両立を目指した。結果的には敗れることにはなったが、それはけして間違った判断ではなかった。事実、前半は相手を圧倒。ボールを支配し、1FWに入ったケンペス、3シャドーのキムボギョン、ブランキーニョ、清武弘嗣ら自慢の攻撃陣で相手を押し込んだ。磐田・ペクソンドン、押谷祐樹に枠内のシュートを放たれたものの、いずれもGK・キムジンヒョンの守備範囲内。前半、ゲームをコントロールしていたのは間違いなくアウェイチームだった。38分にはついに均衡を破り、自陣からのFKのこぼれ球に反応したブランキーニョが右足を一閃。1点リードで前半を折り返した。

前半に関して、指揮官は「選手にいい景色でプレーさせてやれなかった」と自らの非を認める。ただし、最適な配置ではないと判断した後の修正は迅速だった。後半開始からペクに代わり山田大記を投入。2列目の右サイドへ置き、[4-2-3-1]はそのままに2列目の並びも左・押谷祐樹、中央・松浦拓弥と変更。後半からキャプテンマークを巻いた背番号10(前半は前田遼一が巻いた)が、駒野友一との縦ラインでチームを牽引。ドリブルでためを作り、攻撃のリズムを生むと、これに呼応するように、前と後ろで乖離していたチームがゆっくりとつながり始める。
相手のペースダウンも手伝って主導権を握ると、59分に松浦拓弥の復帰後公式戦初ゴールで同点。試合終了間際の88分には前田遼一に待望の今季公式戦初ゴールが飛び出し、逆転。1点リードを最後まで守り切り、タイムアップを迎えた。試合終了間際にはC大阪・ケンペスのヘディングシュートがポストに救われるなど最後まで手に汗握る戦いであり、まさに紙一重だった。何とも不格好で、泥臭い勝利だった。だが、この日は勝ったことに意味があった。

「だれが出ても勝てるチームを目指す」。試合前、森下は選手たちに改めてそう伝えたという。試合後にはこの日のメンバー起用をこう説明している。「選手を試すとか、ターンオーバーで選手を休ませるとか、そういった意図は全くなくて、あの8人もずっと練習からすごくいいコンディションでしたし、いつ出てもおかしくない状況だったのでスタメンで出てもらいました」。その言葉に偽りはない。この試合のプレビューにも挙げた通り、試合に出られずともハードトレーニングで一切妥協しない者たちがいる。試合で“使いたい”と思わせる人材がいるのだ。
チーム全員がピッチ内外でつながり、文字通り“一丸”となって戦うことは新チームの揺るぎない“流儀”である。他クラブにすれば当たり前のことかもしれない。だが、サックスブルーはその“当たり前”を改めて見つめ直すことにした。メディアへ対しても一貫してそうアピールし続けてきたが、観る者は言葉だけでは納得しない。その思いを行動で示し、最もわかりやすい形で“外”へ発信する必要があった。だからこそチーム、選手は勝利だけを欲していた。この試合は“捨てゲーム”であるどころか、是が非でも勝たなければならない一戦だった。

試合後、逆転勝利に沸くヤマハスタジアムにクラブシーズンソングが流れた。
その一節にはこうある。

頑張り続ける事で誰かが君を笑うなら
その悔しさを逆にバネにして更に高く飛べばいい

“黄金時代”を知るファンの目は、厳しい。彼らを振り向かせるにはチームとしてのクオリティーをさらに上げていくと共に、勝利という結果を積み重ねていくしかない。根気のいる作業はまだ始まったばかりだ。

以上


2012.03.21 Reported by 南間健治
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