ともに前節で今季初勝利を挙げた山形と大分の対戦は、ホーム開幕戦を迎えた山形が3-2で大分の反撃を振り切り、連勝を遂げた。

序盤は大分が少しずつ流れを引き寄せる。ディフェンスラインでは今季初スタメンの作田裕次がヘディングで跳ね返して萬代宏樹に起点をつくらせず、前線でも高い位置からのプレッシャーが効果を上げ、相手のバックパスを狙いGK清水健太のクリア直前まで小手川宏基が詰めるシーンもあった。しかし、対処に慣れた山形は20分過ぎから一歩踏み込んだ対応に着手する。アプローチに厳しく行き、こぼれたボールも準備と反応のよさで次々とマイボールに変えていった。奪った直後には山崎雅人が縦のボールを引き出してリズムをつくり、サイドチェンジも効いていた。中島裕希の裏へのランニングや船山祐二のアグレッシブな守備など、個々の能力が噛み合い、チームとして熟成する様子そのものがピッチ上で展開されていた。

防戦に回った大分は「守備においては自分たちからプレッシャーをかけるということを個々ではやっているんですけれども、なかなかチームとして連動できてなかった」と田坂和昭監督。攻撃に移ったときも「外、外の攻めになっちゃうところがあるので、もうちょっと中盤でみんなポジションを取ってパスをしっかりとつなげるようにしたい」と村井慎二が振り返った。前線でこそ怖さを発揮する森島康仁も自陣まで受けに下がる回数を増やしたが、それでも前線に効果的なボールが送られるような改善は見られなかった。この距離感と連動性の問題は試合終盤まで続いた。

かくして、増えたチャンスを山形が得点に結びつける。29分、サイドでの2対2から、外へ引っ張る小林亮を囮に、秋葉勝が切り返して左足でクロスを入れる。相手のディフェンスラインとキーパーの間に落ちるボールに中島が飛び込むと、土岐田洸平による後方からのファウルでPK。山崎がこれをきっちりと決め、山形が先制した。

大分は後半頭から森島を下げて木島悠を、66分にはチェ ジョンハンに代えてキム ジョンヒョンを投入するが、大勢は変わらず。宮阪政樹に代わり、プレシーズンでも試していないアンカーでプレーした石井秀典が、大分ゴール前で2度決定的なチャンスを迎えるほど、山形が攻守に機能していた。そして訪れた75分のコーナーキック。前田和哉が折り返したニアサイドに中島、西河翔吾が詰め、大分が懸命にかき出したところに萬代が待ち構えていた。この追加点のさらに4分後、長いボールを送った大分のラインが上がったのと入れ替わるように山崎がその背後に向けスタート。それをしっかりと目視していた西河がダイレクトでフィードを送ると、完全に抜け出しフリーとなった山崎が、飛び出してきたGK清水圭介の横を低く射抜いて3-0とした。

途中から出場したキム ジョンヒョンが85分のプレーで負傷退場。すでに3枚の交代カードを使いきっていた大分は残りの時間を10人でプレーすることを強いられた。しかし、この万事休する状況から試合はさらに動く。

押し込んだ大分は、フリーキック直後にノーマークとなった村井にボールが戻り、中央からのミドルシュートがバーを叩く。大きく跳ね返ったボールを再び拾った大分は、木島が右サイドをえぐってマイナスのクロス。このこぼれ球に飛び込んだ村井が今度は右足を振り抜いて1点を返した。さらに山形が次のボールをセットして1分と経たないうちに、再び同じゴールネットが揺れる。大分の左からのスローインに山形の守備が集まり、手薄な中央を三平和司が中央突破。そのままミドルシュートを突き刺した。しかし、大分の反撃もここまで。3-2と1点差まで詰め寄ったが、勝点3は山形が手中に収めた。

最後に喫した2失点の評価はさまざまあるだろう。「正直、相手が10人になってから守備ではまっていた部分がはまらなくなったというか。よくある現象なんですけど、そこで自分たちがうまく対応できなかったという部分はあると思う」。ゴールを割られたGK清水は悔しさを滲ませた。キャンプでも試していなかった石井のアンカー、宮本卓也のインサイドハーフという新しいユニットを組んだことに加え、体力的な消耗や3点差による心の隙も、捨て身の相手に後手を踏んだ要因だろう。しかし、奥野僚右監督は「90分に、まだ少しだけ自分たちの体力的な部分であったり、集中を持続させる部分が足りなかった」としながらも、「(体力・集中力は)まだどんどん延びていってると思いますし、キャンプから継続してきたなかで、その時間というのがかなり延びてきた。それをとても実感していてうれしく思います」と積み上げてきた部分に目を向ける。前を向いて、次節は開幕3連勝の甲府を迎え撃つ。

以上

2012.03.18 Reported by 佐藤円