オズワルド アルディレス監督は試合後の会見で、「遠くまでサポーターが来てくれました。今回の勝利は特別に、来てくれた彼らに捧げたいと思います」と語った。とりぎんバードスタジアムのアウェイ側ゴール裏に駆け付けたファン・サポーターに三度、得点後の喜びを見せた町田が、開幕3試合目にして、クラブの歴史に残るＪ2初勝利を挙げた。

ともに前線でのボール奪取からゴールをうかがった序盤を経て、先に大きなチャンスを作ったのは鳥取だった。16分に奥山泰裕が右サイドを突破してセンタリング。中央でマークを外した福井理人がフリーでシュートを放ったが、ジャストミートできず、それでも枠に飛んだシュートは町田ＧＫ相澤貴志のセーブに阻まれた。
その後はお互いにミスもあり、なかなかゴール前のシーンが訪れなかったが、33分に再び鳥取にビッグチャンス。奥山との連係で右サイドを破った尾崎瑛一郎のセンタリングを、再び福井がニアサイドから狙ったが、今度は右ポストに当たって外れる。鳥取は結果的に、この２つのチャンスを逃したことが大きく響いた。
劣勢の時間帯をしのいだ町田は盛り返し、43分にはショートパスの連続で守備網を破ると、柳崎祥兵が強烈なシュート。これは鳥取ＧＫ小針清允に阻まれたものの、平本一樹が「どちらに転んでもおかしくなかった」と振り返った前半を、良い流れで終えたことが、後半につながっていく。

初めてリードされずに迎えた後半、立ち上がりから町田が仕掛けた。ハーフウェーライン付近で森英次郎からボールを奪った北井佑季が、そのまま持ち込んで突破を図り、こぼれ球を拾った鈴木崇文がセンタリングを送る。これを、ファーサイドでフリーとなっていた平本がヘッドで流し込み、ついにＪ２昇格後のクラブ初得点。とりぎんバードスタジアムが一瞬静まり返ったゴールは、Ｊ２通算１万ゴール目の区切りの１点でもあった。

その後はしばらく、鳥取が優勢だった。52分、59分、61分と、奥山が右サイドを再三突破してチャンスを作ったが、いずれもシュートが枠を捉えなかったり、町田の分厚い守りに阻まれて決まらない。薗田淳が「町田が１点を取って、相手も点を取りにいかなければいけなくなり、セカンドボールを拾われ始めて、という相手の時間帯があった。そういう時間帯にやられなかったのが大きかった」と振り返ったように、前半に続き、ここでも苦しい時間を乗り切った町田は、徐々に流れを引き戻していった。
その後は鳥取も選手交代などで状況の打開を図った。交代出場でＪデビューとなった右サイドバックの三浦修を、高い位置に張り出させて何度かチャンスを作ったが、町田の守備の集中力は途切れない。ピンチにも体を投げ出して１点を死守すると、迎えた終了直前、カウンターでとどめを刺す。89分、集中力が切れた鳥取の隙を突き、鈴木崇のパスでスペースに抜け出した交代出場の勝又慶典が、豪快なシュートを蹴り込んで２点目。さらに直後の90分には、相手のクリアをブロックしてボールを奪った鈴木崇のセンタリングから、再び勝又が決めた。

最終スコアは３−０となったが、２点目が決まるまで勝負の行方は分からず、鳥取にしてみればリスクを冒して攻めに出たぶん、その２点目はやむを得ない面もある。ただ、そうした状況になったという点で、試合の流れを決定づけたのはやはり、先制点。価値あるゴール以外にも、力強いドリブル突破やキープで攻撃の中心となった平本は、「鳥取はＪリーグの先輩。そこに３−０というスコアは自信がつく」と初勝利を喜んだ。
交代出場での２得点で存在感を示した勝又も、「チームが勝てて気持ちよく帰れるのが、一番うれしい」と喜びつつ、「ここで浮かれていては、どうしようもないので、また気を引き締めて、ここから乗っていけるように。浮かれるのは今日までにして、次の試合に向けていい準備をしたい」と決意を新たにした。その次節は、町田市立陸上競技場での初試合。初勝利を手土産に地元に凱旋する町田が、勢いに乗ってホーム初勝利を狙う。

以上

2012.03.18 Reported by 石倉利英