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【J1:第2節 清水 vs 広島】レポート:互いに良い面を出し合った雨中の好ゲーム。欲しい時間帯で決めるべき場面を決めた清水が大きな今季1勝目を飾る(12.03.18)

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「若い選手が多いので、結果がいちばん勢いにつながる。とりあえず(勝って)ホッとしています」(岩下敬輔)。他会場でも同様の言葉が聞かれたが、今は選手たちも何とか結果を出して、少しでも自信と勢いを積み重ねていきたい時期だ。この試合も、展開によってはどちらに転んでもおかしくないゲームだったが、多少の運も味方につけながらホーム開幕戦を勝利で飾ったことは、清水にとっては本当に大きな収穫だった。

先週の開幕戦に無得点で敗れた清水にとっては、「まずは1点取って、1試合勝つこと」(大前元紀)が最大のテーマだったホームゲーム。そのために清水はまず、キックオフ直後から全員で激しいプレスを仕掛け、広島が得意とするパスワークを封じていく。それはこの1週間練習で取り組んできたことであり、広島が「立ち上がりでバタバタしてしまった」(千葉和彦)という状況を作ることに成功した。
そして開始9分、前からのプレッシングで広島のDF陣がGKにボールを下げざるをえない状況を作り、バックパスに対してアレックスが猛然とチェイシング。これによってGK西川周作は蹴って逃れるしかなくなり、そのボールを清水がゴール前に跳ね返して、裏に出たボールに河井陽介が詰めるが、ここは西川が前に飛び出してセーブ。だが、そのボールがアレックスの前にこぼれ、右足で無人のゴールに流し込んで、清水が待望の今季初ゴールを奪った。泥臭い形ではあったが、狙い通りの好スタートを切って、その流れを現実に先制点に結びづけたことは、この試合における何より大きな成果だった。
逆に広島のほうは、「清水が前から来るのはわかっていたので、そこは慌てずしっかり後ろから回していこうと言っていたんですが、それができなかったことが、あの失点につながってしまった」(山岸智)というのが、この試合でもっとも悔やまれる部分。立ち上がりの時間帯を落ち着いてしのぐことができていれば、その後の内容を見ても、試合結果が別のものになっていてもおかしくはなかった。

また、清水が先制した後に自分たちのペースを保てなかったのは、昨年から続く大きな課題のひとつ。もちろん、序盤の運動量を90分間維持することは無理だろうが、もっと落ち着いてボールを保持し、守備に回る時間を少なくすることはできるはずだ。その意味では、「まだ自信が不足していると思う」(アレックス)というのが正直なところ。今季は、冷静にボールを持てる選手が増えているだけに、その部分での進化にも期待したい。
そうして清水が一息ついてしまった中で、広島のほうはパスワークに冴えを見せ始める。とくに、清水の守備ブロックの隙間に次々と選手が顔を出し、縦パスを受けてはシンプルにつなぎながら確実にボールを前に運んでいく様子は見事の一言。そのため清水のほうはボールの奪いどころを絞れず、後手後手になってDFラインをジリジリと下げていくしかなかった。
そんな流れの変化により、前半の途中からは広島ペース。だが、清水はセンターバックの岩下、ヨン ア ピンとGK林彰洋が頼もしい存在感を発揮し、最後のところはきっちりとしのぐことができていた。

後半は、ゴトビ監督の檄によって清水がアグレッシブさを取り戻し、広島も十分にエンジンが暖まって五分五分のスタート。そんな中での後半6分、ヨン ア ピンがボールを奪ったところからのカウンターで大前が右に飛び出してクロス。このボールがファーサイドの高木俊幸に通り、右にひとつボールを動かして右足を一閃というもっとも得意な形に持ち込むと、このシュートが右ポストぎりぎりに決まって、決勝点となる2点目が決まった。
前の試合までは、チャンスはあってもそれを決めきれないという状況が続いた清水だが、この場面は逆に限られたチャンスをしっかり生かしたという形。高木自身にとってもチームにとっても非常に大きな1点だった。そして広島にとっては、絶対に取られてはいけない時間帯での手痛い2失点目だった。
その後は、雨が強くなる中、清水も前半ほどペースダウンすることはなかったが、広島も勝利をあきらめずに積極的に仕掛け、広島が攻めて清水がカウンターを狙う展開。その中で、後半30分に右クロスから佐藤寿人のダイビングヘッドが右ポストに当たるというシーンもあったが、GKの林を中心に清水の守備陣は最後まで冷静さを失うことはなかった。

また、広島はまだ高校2年生の野津田岳人(後半28分〜)が、清水は水曜日に加入したばかりのジミー フランサ(後半41分〜)がJデビューを果たすなど、見どころもたっぷり。とくに野津田の堂々としたプレーぶりは、今後に向けて大きな期待感を抱かせた。ただ、清水のほうでひとつ疑問が残るのは、広島がCKを蹴る前に高木とフランサを交代させたこと。その影響があったかどうかは何とも言えないが、直後の左CKで選手の集中が切れて、広島に1点を返されてしまう。

それでも最後は、清水が1点差を落ち着いて守りきり、ホームでのうれしい今季初勝利。恒例の“勝ちロコ”に初めて参加した選手も多く、雨の中でも非常に新鮮で、サポーターとの一体感に満ちたセレモニーは、若いチームの今後を象徴しているようにも見えた。
一方、敗れた広島のほうも、修正すべきはディティールの部分のみであることをチーム全員で確認。「変えるべきことはないので、自分たちを信じて、監督を信じてやっていくだけ」(山岸)と、誇り高く広島へと帰っていった。

以上

2012.03.18 Reported by 前島芳雄
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