木曜日の練習で、ダイヤモンド型のアンカーを務めていた青木剛が負傷したことも影響してか、ジョルジーニョ監督は従来のボックス型を採用して試合に臨んだ。選手にとっては慣れたシステムであることから、守備の安定感は増し、練習を重ねてきた左右からのクロスに選手が飛び込む形でチャンスもつくった。しかし、今季のチーム初ゴールは生まれず開幕2連敗。18チーム中無得点なのは鹿島だけということもあり、1シーズン制になってからは初めてとなる屈辱の単独最下位となってしまった。
選手たちは一様に悔しさを露わにしていた。東北地方の子供たちを招待していた小笠原満男は勝利を見せることができず「悔しいですね」と唇を噛んだ。レナトに直接フリーキックでのゴールを許してしまった曽ヶ端準の口数は少なく、岩政大樹や中田浩二は無言でスタジアムを去った。上々のデビュー戦を飾った山村和也さえ「チームとして結果が出なかった」と笑顔は無かった。
山ほどのチャンスをつくったわけではないが、開幕戦よりもスタンドを沸かせる場面をつくることはできていた。「チームが良くなってきていると実感しています」というジョルジーニョ監督の言葉は嘘偽りない。
前半4分には、スローインからDFと体を入れ替えた大迫勇也がペナルティエリア左に侵入、ゴール前にグラウンダーのクロスを送り、そこに鋭く反応した遠藤康が小宮山尊信より一歩先んじてシュートを放つチャンスをつくった。33分にも柴崎岳のサイドチェンジから新井場徹が右サイドの深い位置からマイナスの位置へ折り返すと、遅れて飛び込んできたジュニーニョへピタリ。シュートは相手選手に弾かれたものの、いずれも宮崎合宿から重ねてきた練習通りの形でゴールに迫っている。特にクロスに対して、FWだけでなくMFもゴール前に入れている回数は、去年よりも確実に多くなっている。しかし、ゴールとして結実することはなかった。逆に、前に出てくる曽ヶ端の動きを読んだレナトに技ありのフリーキックを決められ、個人の一発の決定力に泣かされてしまった。
新監督にしてみれば開幕2連敗でのスタートは最悪のシナリオだろう。しかし、ジョルジーニョ監督は矢面に立たされる記者会見でも決して下を向かず、すべての質問に対し質問をした記者を見据えて答えていた。
「フォーメーションにしても、選手選考、チームの配置、システム、すべての責任は僕にあります」
厳しい状況をつくった原因をすべて引き受け、選手を守ろうとする監督。それを見た選手が意気に感じないはずはない。
「誰が出るとか、どんなシステムとかじゃない。まず選手が勝つんだ、という気持ちを表さないといけない」
監督だけでなく、応援してくれたサポーター、スタジアムを完全復旧してくれたスタッフなど、さまざまな思いに応えられなかった不甲斐なさを小笠原は噛みしめていた。つぎは、中二日でヤマザキナビスコカップの試合となり、対戦相手は神戸。気持ちを表す戦いをするには最適な相手である。勝ってリーグ戦に繋げたい。
以上
2012.03.18 Reported by 田中滋
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