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昨年と同様、アウェイでの開幕戦に無得点で敗れた清水。しかし、その中身を見れば、印象はまったく異なるものだった。まったくゼロからのスタートだった昨年に比べ、チームの基盤が整ってきた今季は、守備の安定感が高く、パスワークのリズムも向上。さらにスタメンに4人入った新戦力が、まるで昨年からチームの一員であるかのようによく機能し、今後に大きな期待を抱かせた。
だからこそ、このホーム開幕戦で勝利することが、本当に大事になってくる。いくら内容が良くても結果がついてこなければ、チームは自信を失い、リズムも悪くなってしまうからだ。もちろん、そのことはチームの誰もがわかっており、「プロは結果がすべてだし、今は内容よりも結果がほしい」（岩下敬輔）と、結果にこだわる意識を高めている。

そのための最大の課題は、やはり点を取ることだ。現在清水は、2月26日のプレシーズンマッチ・新潟戦から練習試合も含めて3試合ゴールがない。チャンスはある程度作れているものの、それを決めきれていないという状況にある。
その意味では、高原直泰がケガから復帰できそうなのは明るい材料だ。先発するかどうかは不明だが、ここぞという場面での彼の勝負強さは、やはり若いチームには欠かせないものだ。さらに、伊藤翔も練習復帰し、水曜日に加入が決まったジミー・フランサもベンチに入る可能性がある。点取り屋という意味では、名古屋戦よりも確実に充実している。
そのうえで、チャンスやシュートの数を増やすことも欠かせない。開幕戦の終盤は、ボールを支配しながらも、ゴール前を固めた名古屋からなかなかチャンスを作れなかったこともあり、崩しの部分でもまだ物足りなさがある。
ただ、名古屋戦後には「もっとミドルシュートを打って、ディフェンスラインを前に上げさせて、その裏を狙えれば良かった」（大前元紀）、「前半は（難しいパスを）狙いすぎた。それで疲れてしまった面があるし、チームを落ち着かせることもできなかったので、どこで自分の狙ったパスを出すのかという判断も大事にしたい」（河井陽介）と冷静に分析する声もある。今年は若い選手たちの中にも、試合の流れを読みながら自分たちで戦い方を考え、修正していく意識が高くなっているのは、地味ながら大きなプラス要素と言えるだろう。

もうひとつ大きなポイントになるのは、前からプレスがかかる中でも確実にパスを回せるかという部分だ。名古屋は中盤や前線のプレッシャーが厳しくなかったため、ディフェンスラインやアンカーの選手も余裕を持ってパスをつなぐことができたが、今年の広島は昨年よりも前からプレッシャーをかけてくることが予想される。ここは昨年からずっと課題になっている部分だが、その面で進化を見せられるかが注目される。
右の吉田豊、左の李記帝という両サイドバックは、自信を持ってボールをキープし、パスをつなげるタイプなので、あとはアンカー（前回に続いて村松大輔が有力）がどれだけビルドアップに関われるかという部分が見どころになる。村松本人もそこは自覚しており、「もっと縦パスを積極的に狙っていきたい」と意欲を口にしている。

そうした攻撃の課題は、守備の安定にも大きく関わってくる。つまり、危険な位置や悪い形でボールを失ってしまうと、広島が得意とするカウンター攻撃で一気にチャンスを作られてしまうからだ。当然、ボールを失ってもすぐに守備に切り替え、相手の攻撃を遅らせられる体勢を整えておくことも欠かせない。
もちろん相手が広島だけに、ボールをキープされて押し込まれる時間も出てくるだろうが、そこでGKの林彰洋やセンターバックの岩下敬輔を中心に守りきる力は十分にある。だからこそ、自分たちのミスから失点することがないように、サポーターの力も借りながら90分間高い集中力を保つことが重要になるだろう。

両チームとも攻撃ではまだ100％の力を発揮できていない時期だけに、ロースコアの勝負になる可能性も高いゲーム。「1点がすごく大事だし、まずは1点取って1試合勝つというのが大事。そうすればチームの流れも良くなってくると思う」（大前）という言葉は、現在のチーム状況をよく表わしている。その重要なテーマをクリアし、今季の1勝目を飾るためには、ファン・サポーターがアウスタのスタンドをいっぱいに埋め、最後まで力強い後押しを続けることも必要だ。

以上

2012.03.16 Reported by 前島芳雄