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【J1:第1節 川崎F vs 新潟】レポート:泥臭く、粘り強く戦った川崎Fが開幕戦で勝利。パブリックビューイングが行われた陸前高田の会場と共に勝利の美酒に酔う(12.03.11)

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いくつかの運と、それを下支えした実力。そして強い気持ちとが結びつき、川崎Fが勝点3を手にした。

いきなりのピンチに肝を冷やしながら試合は始まる。試合開始からわずかに2分の場面。矢野貴章がGKの西部洋平との1対1を迎える。誰もが失点を覚悟した場面で西部は冷静だった。
「あそこは角度がなかったので、正対(矢野に対し真正面で対応する事)できれば体に当たると思っていました」と西部は振り返る。GKの1対1での鉄則は最後まで動かずに我慢するという事。それを実践した西部は矢野のシュートを跳ね返す。

失点のピンチを逃れた川崎Fは、当初の予想とは違い前に出てきた新潟に手こずりながらもペースをつかみ始める。そんな中、先制点が生まれる。新加入の小松塁が相手DF陣の中にドリブルで突っかかり、そしてFKを得た前半11分の場面だった。
FKを蹴ったのはジュニーニョに変わる活躍が期待されるレナト。等々力で初めて披露されたレナトのFKは、とにかく速かった。そしてこのFKにニアに飛び込んだ實藤友紀が頭で合わせ、ゴールネットを揺らすのである。殊勲の實藤はその場面をこう振り返る。
「ニアに蹴ってくる速いボールというのはわかっていて、そこに飛び込む事を意識していました」
常にゴールを意識しているという實藤は、しっかりとした狙いを持ってFKに飛び込み、そして川崎Fの2012年シーズンの口火を切る先制ゴールを決めるのである。そもそも實藤はこの新潟戦に向けてチーム随一の思いを持って臨む選手だった。昨年10月に陸前高田市から子供たちを迎えて行われた新潟戦でも先発出場。しかし前半に負傷し、交代するという経験を持っていたのである。チームは敗れ、そして自身も負傷のため長期離脱を余儀なくされた實藤にとって、この試合の意味は軽くはなかった。試合を振り返った實藤は「去年やってきたことが無駄じゃなかったと思います。経験を積むのは大事だと思いました」と胸をなでおろしていた。

冒頭に記した通り、川崎Fの試合の入りは率直に言って悪かった。新加入ながらセンターバックとして先発フル出場を果たした森下俊は「入りは良くなくて、全体的にバタバタしました」と立ち上がりの時間帯を振り返りつつ、「ただ、点が決まって落ち着きました」と話す。小松が奪い取り、レナトが蹴り、そして開幕スタメンの座を手にした實藤という、目新しいメンバーによって決まったゴールによって川崎Fは落ち着くのである。

このまま得点差を付けていきたい川崎Fではあったが追加点が奪えない。前半28分のCKでの山瀬功治のヘディングや、後半5分の小松のループシュートなど、取れそうな雰囲気はあるのだが、サッカーはそう簡単ではない。川崎Fがもたつく間に新潟は態勢を立て直し追撃の姿勢を強める。黒崎久志監督は「FKから相手に先制されてしまい、ゲームの運び方のプランのところも多少崩れてしまった」と振り返っており、なりふり構っていられなかったのである。

新潟は後半17分に同時に2枚を代えた場面以降で攻勢を強め、川崎Fを押し込み続けた。それに対し、相馬直樹監督はラインを上げることを意図し、後半32分に山瀬に代えて稲本潤一を投入する。これによって守備は安定し、中村憲剛は彼自身の背後のスペースに対する守備意識を軽減することができた。だからこそ中村は新潟のボールに対し、敵陣深くまで追い込む姿勢を見せ、守備のスイッチを入れてチームを鼓舞するのである。

攻撃面での見せ場が作れない川崎Fに対し、同点ゴールを狙い続けた新潟は後半アディショナルタイム2分に決定的なチャンスを作る。右サイドからのミドルシュートを矢野がエリア内で触り、西部の正面でコースを変えたのである。しかし西部はこれを胸でストップ。勝ちたい気持ちが強く、高ぶっていたという西部は、胸にあたったのか、顔にあたったのかを覚えていないのだという。それほどまでに新潟の攻撃は迫力があった。そしてその攻撃を凌ぎ、川崎Fが勝利を手にした。

新加入選手がチャンスをお膳立てし實藤が決めた1点を守り抜き、川崎Fが昨年10月の対戦の雪辱を果たした。そしてホーム開幕戦の勝利をサポーターと共に喜んだ。なお、この試合に合わせ陸前高田市で行われていた「J1リーグ開幕戦vs新潟パブリックビューイングin陸前高田」の会場も川崎Fの勝利に大歓声が沸き起こったとのこと。昨季彼らが等々力を訪れた際に川崎Fは新潟に敗れていたため、それを気にかけていたという事もあるようだ。試合前に陸前高田市を代表して挨拶した濱口先生の息子さんである濱口木(もく)くんは「(興奮して)ニシベが凄かった!守り抜いた!」とはしゃいでいたという。

相馬監督はこの試合を前に「(昨年10月の)前回はそれ(陸前高田のみなさんがスタジアムに来たこと)で肩に力が入ってしまっていた。ただ、そういう試合で勝てるようにしたいという思いもある」と話していた。選手はもちろんのこと、チームに関わるそれぞれの人が、陸前高田からの応援が届けられたこの試合を重く受け止めていた。試合後、田坂祐介が「陸前高田の力が自分たちに宿ったんだと思います」としみじみと語っていたが、そうした試合を勝ち切れた事の意味も大きかった。

決して100点満点の試合ではなかった。ただ、勝つことで前進していけるのも事実である。去年見せられなかった、泥臭くても勝ちに行く姿勢。そして実際に勝ち切る試合運びができたことがこの日の一番の収穫であろう。

以上

2012.03.11 Reported by 江藤高志
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