守備はアグレッシブなハイプレス、攻撃はポゼッションからサイドアタックと、目指すスタイルの似たチーム同士の対決。双方がっぷり四つに組んだ試合は、決定機を逃し続けた大宮が、逃し続けたことで流れを失い、ルーカスのスーパーゴールの前に沈んだ。
序盤から予想通りハイプレス合戦がくり広げられた。先にペースをつかんだのは大宮。開始15秒で東 慶悟が加賀健一からボールを奪って権田修一と1対1になるが、シュートは権田の落ち着いた対応で止められた。21分には村上和弘の縦パスに抜け出した東が右からクロスを送り、チョ ヨンチョルがダイレクトで合わせるがまたも権田がストップ。そのリフレクションを再びチョが蹴り込むが、それも権田が神がかりとしか言いようのない反応を見せ、右足一本で叩き落とした。さらに27分には下平 匠のクロスへファーにラファエルが合わせるが、シュートはわずかに無人のゴールをそれた。
このうちのどれか1点が決まっていれば、大宮が完全に主導権を握ることができたかもしれない。が、大宮の決定機はいずれもF東京のミスか一発で裏を取られたり「集中力の欠如」(太田宏介)によるもので、ボールを動かして崩す、意図通りのサッカーができていたとは言い難い。F東京のハイプレスが厳しかったことと、「ラファエルのコンディションが良くなく」(鈴木淳監督)、いつもの前線で起点になる働きができなかったことが原因だろう。
一方のF東京は、「前半30分までは眠っていたような状態」(ポポヴィッチ監督)で再三ピンチは招いたものの、中でしっかりボールを動かして空いたサイドへの展開などは、やりたいサッカーをそれなりに表現できていた。ただ、アグレッシブにハイプレスをかけながら自分たちのミスで流れを悪くし、ミスからのカウンターを恐れてラインを押し上げられなかったことで、主導権は握れなかった。
ハーフタイムのロッカールームでポポヴィッチ監督に「結構(キツく)言われた」(梶山陽平)F東京は、後半にはしっかり目を覚ましてきた。開始1分で中盤でボールを奪って徳永悠平のシュートまで持ち込むと、「立ち上がりで勢いづかせてしまった」と菊地光将が振り返るように、コンパクトにラインを保ち、走力でも大宮を上回り始めた。そして57分のチョのクロスにラファエルが飛び込んだピンチを権田が三たびの超人的セーブで救うと、その4分後にペナルティエリア前で梶山の横パスを受けたルーカスが、トラップで少し浮かせてからズドンと突き刺した。
1点を追う大宮は新戦力の長谷川 悠を投入し、ラファエルと2トップにして「前線に2枚の起点を作ろうと」(鈴木監督)するが、上手く機能せず、逆に右サイドに回った東までゲームから消えてしまう。間延びして前線は各個に孤立し、意図するサッカーができないまま試合終了の笛を聞いた。
決定機を逃し続けての、大宮にとっては痛すぎる敗戦だが、プレシーズンマッチでの出来に比べれば連携は確実に進歩が見られた。新戦力もフィットしてきており、特に下平はチョとの連携で高い位置取りをキープし、クロスから惜しい場面を何度も演出した。ラファエルのコンディションも含め、試合を重ねることでチームとして熟成を進めていきたい。
F東京は指揮官が見事な修正力を見せたことで、さらにチームとして乗っていけるだろう。前半半ばで梶山と長谷川アーリアジャスールの位置を入れ替えたことで流れを徐々に引き寄せ、ペースを握った後半はさらに高い位置でプレーした梶山がルーカスにアシスト。また先制点の直前に満を持して石川直宏を投入したことで、大宮の守備は右サイドの石川に警戒を強め、結果として梶山やルーカスのいる中央が手薄になった。
とはいえ結局のところ、この試合は権田に尽きる。あれだけ正真正銘の『決定機』を三度も止められては……。まあ、いずれにしても両監督が口をそろえていたように、「両チームともアグレッシブにプレッシャーをかけて攻めあった」(鈴木監督)「観客も楽しんで満足してくれるような」(ポポヴィッチ監督)、面白い試合であったことは間違いない。大宮にとって今はチームの熟成度の差を認めないわけにはいかないが、まだシーズンは始まったばかり。この借りは8月18日、味スタで返そう。
以上
2012.03.11 Reported by 芥川和久
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