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【J1:第1節 広島 vs 浦和】レポート:最上段まで埋まった広島ビッグアーチを歓喜させたエースのゴール。広島、開幕戦以上の重みを持つ決戦に完勝。(12.03.11)

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広島ビッグアーチで初めてアウェイ側に座ったペトロヴィッチ監督(浦和)は、淡々と言葉を連ねた。
「広島とやるのは、まだ早過ぎた」
自身が5年半もの時間をかけて熟成させてきた広島と約2ヶ月の浦和とでは、戦術的な完成度に差があるのは当然だ。ただ、誇り高き名将は広島対策を講じることよりも、浦和の未来を構築するサッカーを表現し、その上で勝利を希求した。彼が見ている場所は、もっと先にあるからだ。
一方、ペトロヴィッチ監督を師匠と仰ぐ森保一新監督は、師が礎を築いた「広島のサッカー」に自らの色を注入した。それは高い位置でのボール奪取であり、切り替えの速さであり、ラインの高さであり。その「森保色」を出す上で効いていたのが高萩洋次郎だ。

槙野智章のドリブルに厳しいアタックを仕掛け、ボールを奪った。森脇良太のパスをカットしようとした相手に身体を寄せ、ボールを奪い返した。浦和のパスを寸断し、ドリブルを止め、素早い切り替えで攻撃に転化した。そこからのコンビネーションにはまだまだ改善の余地はあるが、高萩のクレバーかつ激しいプレーは、「森保流広島サッカー」の可能性を感じさせた。

対峙する相手を抑える部分でも、広島は浦和を上回った。浦和の攻撃での脅威は、何といっても槙野智章の攻め上がり。「だからシャドーの二人(高萩・石原直樹)には、槙野にフリーでボールを持たせない守備をお願いした」と森脇良太は語る。槙野がサイドバックのようにボールを持ったところに広島のシャドーが圧力をかけ、自由を与えない。それでも槙野が何度かチャンスをつくったのはさすがだが、広島時代に見せたような迫力に満ちた攻撃参加の頻度は少なく、むしろ広島の攻撃への対応に追われるシーンが目についた。

その槙野のサイドでは、ミキッチのスピードによって梅崎司のポジションが下げさせられ、そこに森脇も顔を出して中に切れ込む。左サイドからも、山岸智がドリブルとワンツーを駆使してゴールに迫り、機を見て水本裕貴もオーバーラップを見せた。「中央では浦和のブロックも強い。だから何度もサイドに展開して粘り強く攻撃した」(森脇)。その狙いが、後半結実する。

48分、ミキッチが梅崎との1対1に完勝し、突破。佐藤・石原とつなぎ、山岸が強烈なシュートを放つ。加藤順大が素晴らしいセーブを見せるもセカンドボールを広島がキープし、山岸の突破でCKを奪った。

アウェイ側に陣取った浦和サポーターをのぞく約2万5000人の広島サポーターが、一斉にタオルマフラーを振り回す。紫に染まったビッグアーチの風に乗せられた高萩のキックをミキッチが拾い、クロス。ニアに入った石原、強烈なボレー。加藤が弾いたボールに誰よりも速く反応したのは、THIS IS STRIKER=佐藤寿人だ。J1通算96点目となる今季初得点は地鳴りのような歓声を呼び起こし、サポーターの前で11人が見せた「弓矢パフォーマンス」で歓喜は最高潮に達した。

試合終了間際、ポポの右クロスに槙野が放ったこの試合唯一の決定的なシュートも、西川周作のスーパーセーブの前に弾かれた。ボールを持つ度に強烈なブーイングを浴びながらも決定機を創る「強さ」を見せた槙野は「運動量、動きの質、どちらも広島が上」と脱帽し、梅崎は「距離感や角度も含め、(広島は)自分たちのお手本」とコメント。放ったシュートはわずか5本、完敗といっていい内容だったが、浦和の選手たちは下を向いていない。「自分たちはまだこれから。いいところを吸収して、次のホーム開幕戦で勝利できるよう、頑張っていけばいい」という平川忠亮の言葉が示すように、彼らは新しいサッカーの吸収に貪欲だ。そのスピリットが見えたからこそ、ペトロヴィッチ監督も「これから良くなる」と語ったのだろう。

通常の開幕戦以上に重い重圧が、広島の選手や監督にはのしかかっていた。それは対浦和ということだけでなく、様々な意味で。青山敏弘はJ2降格後に戦ったFUJI XEROX SUPER CUPにこの試合の意味を例えていた。その「重み」は、広島以外の人々にどんな言葉を連ねても伝わるまい。

だからこそ、特に前半の選手たちは必要以上に堅くなっていた。フリーでもパスはつながらず、動きも重い。だがそんな彼らを紫のサポーターは鼓舞し、背中を押し、共に戦った。ビッグアーチの最上段まで埋まったサポーターの存在が選手の堅さを和らげ、自由と規律が両立したサッカーが表現できるようになった。選手・スタッフ・サポーター、広島に関わる全ての人々の力を結集して勝利をつかみとった森保監督のデビュー戦だった。ただ、まだ何かを成し遂げたわけではない。長く厳しいシーズンを闘いぬくための旅は、広島はもちろん浦和にとっても、まだ始まったばかりだ。

最後に、昨年の東日本大震災で犠牲となった方々に哀悼を捧げ、被災者の皆様にお見舞いを申し上げると共に、復興に向けて不断の努力を続けておられる方々に尊敬とエールをお贈りすることで、このレポートを締めくくりたい。

以上

2012.03.11 Reported by 中野和也
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