改革より継続。
鳥栖が選んだＪ１での船出は、昨季のサッカーをベースにさらに成長させることだった。長いＪリーグの歴史を振り返ってみると、昇格決定後にディフェンシブに戦術を変更させたり、強力な助っ人を呼んでチームの中心に据えたりと、列強揃いのＪ１仕様にチーム方針を変えたクラブは多かった。継続を図ったクラブも、改革を図ったクラブも、さまざまな事情を抱えたことなので、どちらにも正解はない。選択した手段の可否は、シーズン終了まで見守るしかない。

鳥栖の新しい歴史が始まった！
この日、ファンやサポーターは長いシーズンをどのようにチームが戦ってくれるのか、期待と不安を抱えていた。しかし、開幕戦の終了を告げるホイッスルを聞いた瞬間に、期待にだけ包まれたことだろう。歴史的な一戦を終えた鳥栖は、開幕戦の重圧をはねのけて貴重な勝点を手にすることができた。

前線からＣ大阪のボールにプレスをかけて、強力な攻撃へのラインを断ち切ることに成功した。ＦＷ豊田陽平と池田圭が、Ｃ大阪のＤＦに入ったボールに対してプレスをかけると、ボランチ藤田直之と高橋義希が中盤でのパスコースとスペースをすぐに消した。
「中盤でブランキーニョ（Ｃ大阪）が中のスペースを見つけることができず、形を作る事ができなかった」とセルジオ ソアレス監督が認めたほど、鳥栖の守備の連携は成功した。これにより、Ｃ大阪はサイドへのパスか、鳥栖のＤＦ裏へのボールを選択するしかなかった。前者を選択すると、ゴールまでが遠くなるだけでなく、サイドラインと鳥栖の選手がはさまれてしまいシュートまでの手数が増える。後者を選択すると、鳥栖の高いＤＦラインに引っかかってオフサイドになってしまう。終わってみると、Ｃ大阪の放ったシュートは１本だけ。完全にＣ大阪は主導権を握られた前半だったと言えた。

守備が機能すると攻撃のリズムが生まれるのは鳥栖のサッカーである。
左ＭＦ金民友からのクロスなどで、５本のシュートをＣ大阪ゴールに放つことができた。手元の集計だが、決定機も２本はあった。高さと前線のスピードを生かして攻撃でも鳥栖らしさを全面に出した前半だった。ただ、「今後は、決定力というところを求めてやっていかないといけない」と尹晶煥監督が語ったように課題も残ったのは事実である。

後半に入ると、鳥栖は前半のようにペースを握ることができず、逆にＣ大阪に試合をコントロールされる時間が増えた。ハーフタイムにセルジオ ソアレス監督が与えた「相手は中を警戒してきているのだから、サイドから縦に崩していこう」という指示通り、前半の４−２−３−１から４−４−２にシステムを変え、ＭＦ清武弘嗣とキム ボギョンの動くスペースを作った。このシステム変更が顕著に効果を表しだしたのが７０分（後半２５分）過ぎあたりからである。ＦＫも含め、キム ボギョンは６本のシュートを放った。アディショナルタイムに入ってのラストシュートは、ＧＫ赤星拓にはじかれたものの、勝点３を得ることができたかもしれないほど強烈なものだった。前半と後半で、相手のストロングポイントを抑え、ウィークポイントを突くサッカーに変更できる試合巧者振りは、今季のＣ大阪の戦い方と見た。
「バリエーションはチームにいくつかあって、今日はその中の一つを使ったと言うこと。ゲームの流れによっては、３トップも当然考えられるし、全ては試合の流れによって…」（セルジオ ソアレス監督）と、次節以降の戦い方には注目しておきたいところである。

９０分を通して、両チームとも今季の戦い方をファンやサポーターに十分に示すことができ、選手は自信を得た試合だった言えるのではないだろうか。次節以降の戦い方には注目しておきたいところである。少し気が早いかもしれないが、次回の対戦（第２８節１０月６日金鳥スタ）が楽しみだ。

いまさらながら、サッカーはチームスポーツである。
一人のテクニックやスピードだけでは得点を生むことは不可能である。しかし、そのテクニックやスピード、フィジカルを局面で生かすことによりボールを保持続ける事ができ、得点につながる。
そこに歓声と悲鳴、激励と叱咤が加わることで迫力と面白さが増す。
スタジアムで声の限りに応援しよう。
いまさらながら、サッカーはファンやサポーターも含めたチームスポーツであるのだから。

以上

2012.03.11 Reported by サカクラゲン