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【J2:第2節 東京V vs 甲府】プレビュー:早くもJ1昇格候補筆頭同士が激突!『意外性の共有』の東京Vと『ムービングフットボール』の甲府。互いにスタイル貫く攻撃サッカー対決を制するのは?(12.03.11)

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「今年は、今までとは何かが違うかも!」
恐らく両クラブ・チーム関係者、サポーターの多くが、そんな期待を感じながらこの一週間を過ごしていたのではないだろうか。
というのは、東京Vは5年ぶり、甲府にいたっては1999年のJリーグ加盟以来クラブ初となる開幕戦白星発進を成功させたからである。たかが1勝と言ってしまえばそれまでだが、されど1勝なのが勝利というもの。ましてや開幕戦だ。キモチの部分に与える好影響は大きいはずだ。前節試合終了後の監督会見では、両監督とも決して全てが満足いくゲーム内容ではなかった旨が語られたが、白星という結果によって今週はどちらもポジティブな課題修正ができているに違いない。

東京Vの最大の修正ポイントは、川勝良一監督の言葉を借りると『チキン』をやめること。つまり、「チャレンジから逃げない」ということである。すでに何度も繰り返し書いてきたが、川勝監督が今季掲げているのは、見ている人には偶然に見えて、やっている方は必然という『意外性の共有』である。その、「相手がこっちが縦を狙ってショートパスが来るとわかっていても、そこを1タッチ、2タッチで動かしてまた別の人が開けたり、あるいはサイドを開ける」、「わざと密集へ入れて、少ないタッチ数で崩す」などの“意外”を具現するためには、「1、2回パスが通らなかったからといってチャレンジをやめてしまうようではダメ」だと指揮官。「そこで何度もチャレンジし、パスを通して開けて、アイデアの共通で崩すことをキャンプからずっとやってきた。短期間で作った偶然性ではなくて必然でずっとやってきていることは通用するはず」と、体制3年目の監督は自信を持って話す。
前節の前半は、「あまりにもボールの取られ方が悪すぎた」と森勇介が指摘したように、ミスからボールを渡し自らピンチを招く場面が散見されたのも、苦戦を招いた原因とも言える。ミスを減らすことはもちろん、加えて、シュートや相手に背中を向けて守備をさせる裏を狙った攻撃など、攻撃をしっかりと完結させられるかも重要なポイントとなりそうだ。あらゆる意味で、「少なくとも、前の試合の後半(のサッカー)が最低限」だと、川勝監督はベースを設定した。

そこで注目したいのが、ボランチとしての先発が予想される中後雅喜だ。今季新加入選手のうえ戦列復帰後間もないことから、戦術理解や連携面などの不安要素も挙げられなくはないが、「たぶん、中後がやりたいサッカーとウチのサッカーは近いと思う」と、川勝監督は大きな理解と信頼を寄せ、まるで心配していない。開幕戦でも、わずか5分弱とはいえピッチに立っているし、普段の練習でも着実に新相棒・小林祐希や他の選手たちとも連携を深められている。負傷というアクシデントによって今となってしまったが、元々始動時点で川勝監督の構想は中後・小林のダブルボランチだったはずである。ようやく揃った2012年ヴェルディ理想の心臓部がどんな鼓動を見せていってくれるのか、非常に楽しみだ。

同時に、中後の復帰に伴って本職のサイドバック起用が見込まれる和田拓也にも期待したい。最初は戸惑いつつあったボランチでのプレーも、最近では面白さを感じるまでになっていた。「ボランチの経験でサイドでのプレーの幅も広がったことは間違いないです」と、成長著しい21歳。今節マッチアップするのが昨季までの戦友・福田健介だということもまた、モチベーションを上げる。「メッチャ楽しみです。でも、健介くんは何を考えているのか全く読めないからなぁ…」苦戦は覚悟の上だという。和田も福田も思いきった縦突破と正確なクロスが魅力のサイドバック。抜くか抜かれるか。上げるか上げさせないか。3年間苦楽を共にしてきた二人の攻防は、ヴェルディサポーターにとっても楽しみ十分となりそうだ。

対する甲府も、昨季J1を戦ったメンバーの多くがチームを去ったこと、Jリーグ14年目にして初の開幕戦勝利など含め、城福浩監督のもと新な歴史を築きつつあることは間違いないようだ。開幕を前に新指揮官は、「(前任のF東京よりも)“個”という意味では甲府の選手の方が持っているかもしれない。その個の能力をそれぞれどういう風にして引き上げ、伸ばしていくのか。僕自身も改めて勉強だし、新な挑戦です」と語っていたが、目指すサッカーは基本的には変わらない、同監督の代名詞ともいえる『ムービング・フットボール』だ。ただ、人が動いて味方からパスを引き出し、その動いたボールに連動してまた人が動くというスタイルを貫くのは、「別につなぐのが好きだからではないんです。僕の考えではポゼッションはあくまでも手段で、“勝利”に最も近いと思っているからつなぐんです」というのが城福監督だという。ボールの運び方、ポジショニングの取り方などの多少の差はあれ、“ボールも人も動くパスサッカー”という点では今節の相手・東京Vとも通じるものがある。お互いに、相手によって戦い方を変えることは決してしないはず。自分たちの目指すスタイルを追求し合うガチンコ勝負が存分に楽しめそうだ。

注目は、J2通算10000ゴールまで残り28ゴールと迫り今節にでも到達が期待できるという意味でも、FW選手を挙げようと思う。前節2ゴールのダヴィは引き続き絶好調で、無得点に終わった去年とは比にならない。また、新加入の高崎寛之もポテンシャル高く、東京Vにとっては警戒しなければならない存在の筆頭と言えよう。
一方の東京Vも2トップは強力で、阿部拓馬、そして甲府を古巣とするジョジマールの破壊力は抜群。この試合から、J2史に残るメモリアルゴールは生まれるのだろうか。そのあたりも含め注目したい。

土屋征夫から聞けた「お互いに自分たちのスタイルをしっかりと持っているから、良い試合になると思う。強い相手との試合はやっぱり楽しみ」という言葉は、恐らく東京Vだけに限らず、甲府側も含めた選手みなが思っているのではないだろうか。
この試合が行われる3月11日は、忘れられるはずもない、あの東日本大震災から丸一年を迎える日である。昨年痛感した、サッカーができる、観られることへの感謝・喜びをいま一度しっかりと意識し、犠牲者への追悼のためにもお互いの“現時点でやれる最高のサッカー”をぶつけ合う、熱のこもった逸戦となることを心から願ってやまない。

黙祷。

以上

2012.03.10 Reported by 上岡真里江
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