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取り立てて悪いわけではない。でも、嫌なイメージは付きまとう。7勝7敗5分。昨季ホーム“グリスタ”での成績は全くのイーブンだったが、9月以降は1勝6敗1分と負け越し。苦手意識はないものの、「ホームでは勝てない」と記憶に刷り込まれた。
昨季わずかに手が届かなかったJ1へ再挑戦する今季、ホームで高勝率を残すことが昇格の必須条件に挙がる。
「ホームゲームを全部勝つつもりで戦う」
先日のキックオフカンファレンスで、松田浩監督は今季の抱負として“全勝宣言”した。JFL卒業を果たした2008年には、地の利を活かしてホームでは12勝2敗3分と抜群の好成績を収めた。ホーム最多勝利記録を更新できれば、自ずとJ1は視界に捉えられるはずだ。リーグ開幕戦で甲府に敗れた憂さをホーム開幕戦の大分戦で晴らし、勝利後の「県民の歌」の大合唱でリスタートを切りたい。
「自ら首を絞めた」。甲府戦を山形辰徳は、そう振り返る。「パスの精度が問題だった」。指揮官も敗因にミスを挙げる。ボールを奪ってから敵陣に運ぶまでは悪くなかったが、ゴール前では「繊細さが足りなかった」(河原和寿)。大分の基本布陣は3‐4‐3だが、守勢に回れば5‐2‐3と後に重心を置く。そうなれば、ボールを握るのは4‐4‐2の栃木。パスを回しながら揺さぶる回数は増えるが、一方で注意しなければならないのは前節同様に安易なミスだ。
「大分の監督さんは『ポゼッション』と言っているが、実はそれはカモフラージュのような気がする。実際には速攻を意識されているのではないのか」(松田監督)
大分の戦略がそうであるならば、ボールを持つことはリスクをはらむ。だが、リスクを背負わなければゴールは遠い。いかに焦れずにパスを回してスペースを見出し、一瞬の隙を見逃さずに突けるか。一時は同点に追い付いた甲府戦の後半のように、勇気を持ってパスを繋いで連動しながら攻められればゴールは必ずこじ開けられる。勝負所を見誤らず、相手のカウンターの罠にハマらない。的確な判断が求められる。
組織としてリスク管理は必要だが、破壊力のある大分の3トップを止めるには個の力が必要になる場面も出てくる。そこでDFラインの前でフィルターとしての役割が期待されるのが、金曜日に加入が決まったばかりのチャ・ヨンファンだ。
テスト生として清水と宮崎のキャンプにフル帯同して契約を勝ち取った21歳を、「掘り出し物。過度の期待は禁物だが、慣れればキム・ナミルみたいな選手になれる」と、南省吾強化部長は能力を高く評価。今週の紅白戦ではレギュラー組で終始プレーし、「スタメン候補には入っている」と松田監督。これまでは主にサブ組でプレーしていただけに、レギュラー組の空気を吸って戸惑うシーンも散見され、紅白戦ではピンチを招いたし、逆にチャンスも作った。不安定な部分も見受けられるが、離脱したパウリーニョと本橋卓巳の状態が不鮮明な今、ボランチは高木和正を軸にやり繰りしているが中央のパワー不足は否めない。それだけに、ヨンファンにかかる期待はどうしても大きくなる。フットサル韓国代表に選出されただけありサイドチェンジなどキック精度が目を引くが、それよりも183cmの体格を活かしたハードな守備で存在感を示して勝利に貢献してもらいたい。
大分戦は東日本大震災からちょうど1年。栃木は鳥栖遠征に向かう途中に羽田空港で被災した。当時はサッカーがある日常が戻って来ることも不確定だった。そう考えれば、「サッカーが出来ることは幸せなこと」(松田監督)。クラブは試合当日、いわき市から子供達を招待している。サッカー教室や避難所訪問などの復興支援活動では元気を与えるはずが、逆に被災者の方々から元気をもらうことが多かった。サッカーができることは小さいことかもしれない。だが、「まだまだ東北の人は苦しんでいる。引き続き元気と勇気を与えられるような仕事を見せないといけない」(松田監督)。ホームでの勝利は断固として譲れないが、両チームには日常を忘れるような好ゲームを期待したい。
以上
2012.03.10 Reported by 大塚秀毅
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