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20年目のJ1リーグが開幕する。当時12歳になったばかりのMF石川直宏は、93年5月15日、国立霞ヶ丘競技場の観客席に座っていた。甲高い音を立ててホーンが鳴り響く。試合が終わってからもその余韻と、熱に当てられてしまう。当時のサッカー少年は、同じことを考えた。日本中の球蹴りたちが、翌日からはボールをまたいで「KAZU、KAZU」と連呼する。そして、みんなが同じ目標を掲げた。「Jリーガーになりたい」。
現在、望みを叶えた選手たちはベテランと呼ばれるようになり、次世代たちとともに同じピッチに立っている。芝生の上を走り、ボールを蹴る選手だけでなく、ベンチ内外のスタッフ、スタンドに座るサポーターも含め、すべてがこのリーグの足跡そのものだ。
この記念すべき年に、首都クラブはJ1に帰還し、NACK5スタジアムで大宮と対戦する。3日にFUJI XEROX SUPER CUPを戦い、6日にはオーストラリアでACL初戦をこなす過酷な日程を消化。さらに、中3日で、この大宮との一戦が続く。梶山陽平、ルーカスは豪州遠征には帯同せず、国内で調整してこの試合に備えているが、ほかのメンバーは2泊5日の遠征で心身ともに疲労が溜まっている。コンディション面も含め、やり繰りがこの一戦を乗り切る上では必要になる。
メンバー選考という点では、新加入のMF長谷川アーリアジャスールが柏戦、ブリスベン戦とゴールを連発。MF谷澤達也もキャンプ期間中から継続してコンディションの良さをアピールしている。また、ブリスベン戦で先発したDF加賀健一や、途中出場したMF田邉草民は今季初出場でも違和感なくプレーした。チーム全体の戦術理解度も高く、誰が出ても同じ質のサッカーができるようになっている。
まずは、とにかくボールを大切にしなければいけない。この意識が肝要だ。積載燃料に差があることは認めなければいけない。だからこそ、相手の時間を削り、自分たちの時間を増やさなければいけない。守備に追われるようではいたずらに体力を消費してしまい、勝点からは遠ざかってしまう。FW渡邉千真は「疲れも考慮して回すところと、積極的に攻撃にいくところの使い分けが大事だ」と言う。すべて前へというわけではなく、積極的なスローダウンもここは受け入れなければいけないだろう。
逆に、ワンチャンスは逃すことができない。今季やってきたクサビにつけるパスを合図に、人数を掛ける攻撃をどこでだすのか。そのタイミングを逸してはいけない。3日の柏戦ではピッチの横幅を生かしきることができていなかった。サイドチェンジを有効活用して幅を使った攻撃をしつつ、一瞬の隙を狙い続けることが大切なゲームになるはずだ。質と精度。無理が利かないゲームだからこそ、そこにこだわらなければいけない。
ただし、大宮は着実な補強で戦力も充実している。鈴木淳監督が継続してチームに植えつけたビルドアップの意識も高い。両翼には、一人で持ち運べる選手もいる。簡単にボールを手放してはくれない相手だけに、奪われた瞬間の切り替えは苦しくてもサボることはできない。それだけ開幕戦のピッチには多くのミッションが待っている。
J1のリーグタイトルは、唯一、FC東京が奪っていない国内タイトルとなった。そして、今季はそこにACLという新たなチャレンジも加わる。あの日、国立のスタンドに座っていたサッカー少年は感慨深く語った。
「(J1制覇は)憧れであることは間違いない。やっぱり特別な存在。僕らは小学校6年でJリーグができて、そのピッチでプレーすることを夢見てきた。それが目標に代わって、少しずつステップアップしてきた。そして、プロになった。記念すべき年に、頂点を獲れたのならどんな気持ちになるんだろうな……。でも、きっと「また優勝してぇ」って思うんだろうね(笑)。それに、サッカーを好きな人にとっては去年、柏の姿を目の当たりにしたからこそ、『FC東京ってどうなの?』っていう風に興味を持ってくれるいい機会。僕たちは、そこで『FC東京って強くなったし、面白いサッカーするよね』って言ってもらえるようになりたいよね」
そして、観客席に伝わってきたあの熱を今度はピッチから放ちたいと願う。「懐かしい響きだけど、ワクワクするようなサッカーをしたいし、魅せたい」。ワクワクキラキラしていたあの日が、いつまでも繋がっていくこと。それが明日から始まる20年目のJ1リーグで選手たちがまずやらなければいけない本当のミッションだ。なぜなら彼ら自身が、すでに誰かの目標なのだから。
以上
2012.03.09 Reported by 馬場康平
J’s GOALニュース
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