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【J1:第1節 川崎F vs 新潟】川崎F側プレビュー:川崎Fは、勝たなければならない試合を勝って雪辱なるか。積極補強の新潟の戦いにも注目(12.03.09)

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新潟側プレビューはこちら

J1リーグ戦において、川崎フロンターレとアルビレックス新潟の等々力での開幕戦は、過去に2度行われている。最初の対戦となった2006年は6−0で川崎Fが勝利。また2度目の対戦である2010年も2−1で川崎Fが勝利し、2戦2勝の数字を残している。と、都合のいい数字だけを並べると相性の良さを感じられるが、直近のこのカードは川崎Fが新潟に対して3連敗中。特に昨季の等々力での対戦は、陸前高田市から被災した児童らを招待した中で行われ、絶対に負けられないという試合を戦っている。しかし、結果は1−2で敗戦。陸前高田市からわざわざ競技場を訪れてくれた子供たちに勝利の喜びをプレゼントすることが出来なかった。つまり新潟という相手は、川崎Fにとって必ず雪辱したい相手なのである。

そうしたバックグラウンドがある中、さらにこの試合には大きな意味合いが与えられる事となった。それが陸前高田市で行われるパブリックビューイングである。これは試合の映像をライブで陸前高田市の会場に中継。子供たちを中心としたパブリックビューイング会場の応援風景を等々力競技場の一角に設置されたモニターに逆配信し、選手たちを鼓舞するというものである。これだけ「雪辱」という言葉が合う試合もなかなか無いだろうという試合になったのである。

そうした点について中村憲剛は「前回は来てもらったのに、勝たなければならない試合を落としてしまった。開幕戦はもちろん大事な試合ですが、それ以上に陸前高田のみんなに喜んでもらえる試合をしたい」と意気込む。去年その場に居なかった新加入のジェシも「(陸前高田市のPVについて、被災地支援の一環であるとして試合を戦う上で)1つ大きなモチベーションになります。この試合を見た子供たちが成長して希望を持って人生を歩んでいけるような試合を見せたい。ホームですし、自分たちが力あるかぎりやりたいと思います。彼らのためにも勝ちたいです」と力強く話してくれた。川崎Fは東日本大震災の復興支援活動を「Mind-1ニッポンプロジェクト」と名付け、現在も活動を継続している。そうしたクラブの活動を理解し「子供たちの希望のために」と話すジェシの決意は果たして結果として出るのだろうか。

チームの誰もが「陸前高田市のみんなのために」という気持ちでこの試合に臨む中、気になるのが気負いと結果の負の相関関係である。気持ちが入り過ぎたとしても、必ずしもそれがいい試合になるとは限らない。それはまさに昨年の等々力での新潟戦がそうだった事で明らかである。相馬直樹監督はこの点について率直に「前回はそれで肩に力が入ってしまっていた」と反省する。しかしこの言葉に続けて「ただ、そういう試合で勝てるようにしたいという思いもある」と述べていた。陸前高田市でのPVのあるなしにかかわらず、そもそも開幕戦は必要以上に気持ちの高ぶる舞台である。だからこそ「開幕戦という中で、平常心でやることが課題になる。入れ込む事もあるが、平常心が大事になると思います」と相馬監督は話していた。

奇しくも試合日となる3月10日は、震災発生から1年の節目の日となる。その日に、こうして震災復興支援活動を行い、支援活動への思いと前向きに向き合う契機にこの試合がなるのだとすれば、それは地域社会との連携を重視するJリーグの理念と合致したものになるはずだ。サポーターのみなさんもこの試合を通じて改めて震災復興支援活動と向き合って欲しいと思う。

ということで長い前置きになってしまい恐縮です。

今季の川崎Fは、昨季の11位という成績を挽回すべく準備を進めてきた。この試合における見所は3つ。守備力の向上と、決定力の改善。そして、試合運びである。

まず守備力に関しては、これがチーム戦術と同等の意味を持つものとなっている。守れるセンターバックとして獲得したジェシに目が向きがちだが、相馬監督のサッカーにおいて守備は、GKを含めたディフェンス陣のみで守るということを意味していない。前線の選手が入れるスイッチをきっかけに、全体が連動して守備戦術がスタートするのである。つまりチーム全体が1つのパッケージとなり、相手ボールを奪い取らなければならないのである。そんなチーム戦術の浸透度を図るパラメーターとして、たとえば新加入の小松塁はこんな言葉を口にする。
「役割も大分分かって来ました。監督やチームメイトから試合中にもその都度声がかかるので大丈夫だと思います」
小松のこうした言葉は、彼がチーム内でしっかりとコミュニケーションを取っていることを意味し、チーム戦術が浸透していることをも示している。気になるのは、ショートパスをつないでくる分には対処はできるが、ロングボールを蹴ってくる相手への対応である。昨季はこのロングボールでよく失点していた。メンバーの入れ替わりがある今季の最終ラインがどのように相手のカウンターを処理するのか、見所の1つであろう。

決定力に関しては、ジュニーニョに変わり獲得したレナトに期待するしか無い。そもそも川崎Fは昨季、シュート数でリーグ首位だった。つまりシュートチャンスまでは作れており、あとはフィニッシュの精度の問題だったのである。そんなチームの決定力改善の切り札として迎えられたレナトは、積極的に日本人選手とコミュニケーションを取り、親交を深めている。そうした働きかけもあり、選手たちはジュニーニョとはタイプの違うレナトのスタイルを理解してきつつあるという。またレナト自身も周りの選手のパスのタイミングを把握し、それに合わせるべく動き出しを工夫している。ホームでベールを脱ぐ彼がどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみである。

ちなみにFW以外の選手も得点について欲を見せている。たとえば田坂祐介は5年目の今季の目標を10得点としている。これまでのプロのキャリア通算で8得点。1シーズンで最も得点したのが2010年の3点(本人は1シーズン最高で2点だと思っていた)だったことを考えると意欲的な目標となるが、決して不可能な数字ではないだろう。またボランチの柴崎晃誠はミドルシュートからの得点を増やしたいと話していた。国見高校の一員として出場した高校選手権で大会得点王を獲得した経験のある柴崎なだけに、その得点力をぜひとも見せて欲しいところ。
冗談も混じっているのだろうが、小宮山尊信は目標として「15点20アシスト」という大きな数字を口にしていた。これだけ取れれば一端のFWに引けを取らないが、それくらいに攻撃的に行きたいという思いなのだろう。それに対し、U-23日本代表としてロンドン五輪出場の可能性を残す實藤友紀は「7得点」と現実的な数字を口にしている。練習では常にこぼれ球に反応する貪欲さを見せており目標の数字が達成できれば「そこにサネ」という言葉が市民権を持つようになるかもしれない。

川崎Fはこの新潟戦までの間に、J1でのホームゲーム通算で249得点を決めてきた。つまり次のゴールが、J1でのホーム通算250得点目という事になる。セットプレーでの得点力にも期待したいジェシはこの記録について「ゴールが出来ればいいが、それ以上にチームが勝つことが大事です」と話し、頓着することがなかった。それに対し小松は「狙います」と即答。ポジションの違いはあるが、それぞれに役割がちゃんと分かっているのだなと感心した。

3つ目の試合運びに関しては、ピッチ上の状況に対して臨機応変に対応していく事を示す。昨季見せていた真面目で一本調子な戦いを、試合展開に応じピッチ上の選手たちの判断で変化させることが可能となった。試合の流れにもよるが、試合巧者と言えるような戦いができるかどうか、注目したい。

対する新潟は、3季目の黒崎久志監督にとって勝負のシーズンとなる。昨季の14位という成績を払拭すべく今季は積極的な補強を敢行。ドイツのフライブルクに所属していた矢野貴章やG大阪の平井将生といった選手を補強して攻撃力アップに努めている。ここに去年の等々力でのこの対戦で、2ゴールを決めたブルーノ ロペスが絡み、どのような布陣を構成するのかが注目される。

その一方で、チョ ヨンチョルや酒井高徳といった選手がチームを去っており、戦力ダウンが懸念される。また2月26日の清水戦とのプレシーズンマッチをミシェウが欠場しており気になる。そもそもこの試合はアウェイでの開幕戦である。どうしても落としたくない試合であり、守備的な入りをする可能性は低くないだろう。また昨季の川崎Fはロングボールからのカウンターに脆さを見せていた。だからこそリスクを回避し、ワンチャンスに的を絞る戦いを選択すると考えるのがセオリーかもしれない。

川崎Fの選手たちはそんな新潟について守備的に試合に入るのではないかと話していた。たとえば中村は新潟の入りについて「最初はアグレッシブと言うよりも、ガマンしてくるというか、粘ってくると思う」と予想。そして、ある程度割りきって守ることで川崎Fを自陣に呼び込み、隙を見てタテに早い展開を狙っているのではないかと推測していた。
また、中村は「前線に能力の高い選手を取ったし、一発もある。ロングボールを運べる人も揃っている」とも話し、新潟のカウンターを警戒していた。左サイドの攻撃を警戒したいと話すのは小松だ。
「新潟は、前の走力を生かしたという印象がある。左サイドが結構攻撃的なのかなと思います」
この小松の印象をさらにジェシの言葉が補完する。
「左サイドバックの選手とブルーノがスピードでプレーするというのが印象的でした」
新潟の左サイド候補として名前が上がっているのが新加入の金珍洙。川崎Fにとっては未知の選手であり、そういう意味では、新潟の左サイドと川崎の右サイドの攻防がこの試合の行方を左右するポイントの1つとなるだろう。どちらがこの攻防を制し、主導権を握るのか。注目したいと思う。

タイトルを狙う川崎Fにとっても新潟にとっても、34分の1よりも大きな意味を持つはずの開幕戦はどのような結果をもたらすのか。昨季、ホームで勝ち星を重ねられなかった川崎Fにとっては、陸前高田市で行われるPVの件もあり、特に負けられない試合となりそうである。

以上

2012.03.09 Reported by 江藤高志
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