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3月7日のAFCチャンピオンズリーグ初戦で地力を証明してみせた名古屋が、良い感触を持ってJリーグの開幕に臨む。一時は調整の遅れが懸念されたチームは韓国の強豪・城南一和を相手に、90分で3つのフォーメーションを使う柔軟な戦いぶりを披露。今季初の実戦のピッチで生じた問題に、試合中に対応する懐の深さは見事なものだった。試合結果こそ引き分けに終わったが、指揮官、選手ともに手応えは上々。アウェイの中国で完敗して迎えた昨季の開幕戦とは比べ物にならないほど、今季は良い流れに乗ることができている。対戦相手の清水とは昨季1敗1分、特にアウェイでの敗戦は優勝争いにおける大きなターニングポイントだっただけに、この一戦は早速めぐってきたリベンジの機会ともなる。
2012年の開幕を飾るメンバーは城南一和戦と変更はないだろう。負傷から復帰した玉田圭司もキレのある動きで得点機に絡むなど心配はない。同じく負傷明けのケネディのコンディションは最高潮ではないが、それでも194cmの高さは十分な脅威となる。城南一和戦で見事なカウンターを決めた金崎夢生などはキャンプからの好調を維持しており、この一戦でもキーマンの一人となるだろう。フォーメーションは4-3-3を使うか4-2-3-1なのかはストイコビッチ監督の判断だが、3日前の試合では4-2-3-1の方が良い流れは作れていた。日本代表でも活躍する藤本淳吾を本来の前線サイドの位置で使える上に、フィーリングの合う金崎、玉田の距離を近づけられることは大きなメリットだ。メンバーを変えずに配置を変えるだけで戦い方を変えられる柔軟性は、名古屋の強みのひとつである。
清水とのマッチアップを予想すれば、サイドの攻防が最大の焦点になる。若くスピードのあるサイド攻撃を展開してくる相手に対し、受けに回れば名古屋の持ち味も消えてしまう。藤本、金崎、そして玉田の3人がサイドでどれだけ起点を作れるかは死活問題。彼らが存在感を発揮し、サイドバックやボランチの攻め上がりを促すことができれば、自ずと主導権は名古屋が掌握することになる。能動的な攻撃は相手を疲弊させ、試合展開を楽にもする。シーズン序盤とはいえ中2日というスパンで戦う名古屋は、体力面を考慮してもイニシアチブを奪いたいところだ。
5年目を迎えたストイコビッチ監督の采配にも注目したい。前述したように今季は3つのフォーメーションを状況によって操る。ベーシックな4-3-3と4-2-3-1、そして3-4-3の布陣が指揮官の選択肢に加わった。田中マルクス闘莉王、増川隆洋、新加入のダニエルによる3バックは迫力満点。3バックには闘莉王の攻め上がりを促す効果も期待できる。1点が欲しい時も1点を守りきりたい時も、3-4-3は使われていくことになりそうだ。また選手の交代策についても、スーパーサブの永井謙佑の使いどころはポイントとなる。同い年の金崎との相性が良く、2人で局面を打開する連係はカウンターの急先鋒としてもうってつけ。流れを変えられる韋駄天の投入タイミングをいかに見極めるかは、監督としての腕の見せ所だ。
国内外の2冠に再び挑戦するシーズンだが、目先の結果なくしてタイトルはない。常に一戦必勝のチームはただ貪欲に目の前の勝利を追求するのみだ。名古屋にとって、今季のJリーグは“奪冠”がテーマ。その第一歩がいよいよ踏み出される。
以上
2012.03.09 Reported by 今井雄一朗
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