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あの未曾有の大災害からすでに1年が経とうとしている。その傷跡はいまだに大きく残ったままであり、これからの継続的な活動がますます重要性を増している。そのなかで、20年目を迎えるJリーグの開幕戦に、仙台と鹿島が対戦することが選ばれたのは、とても意義深い。開幕戦を前にしたJリーグキックオフカンファレンスでは、対戦するチーム同士がブースを隣接させていたのだが、ライバルとなる仙台を横目に小笠原満男は次のように語っていた。
「ライバルというよりは一緒にがんばりたい。来てくれた方々に、『また来たい』と思ってもらえる試合をしたい」
この1年は、サッカーになにができるのかを問われた1年でもあった。はじめは半信半疑だったサッカーのチカラは、決して小さなものではなく大きなエネルギーを秘めていた。それを証明して見せたのが歴代最高位の4位に躍進したベガルタ仙台だ。被災したマイナスをプラスに転じ反発力を見せた力強さはすばらしく、東北の希望となっていた。その一方で、リーグ戦では一度も優勝争いに絡めず、ホームタウンに明るい話題を届けられなかった鹿島としては、悔しい視線を送るしかなかった。
今季、鹿島はかつての名選手であるジョルジーニョを迎えて再び頂点を目指す。47歳の新人監督が吹き込んだ風は新鮮なものばかりであり、チームは活気に満ち溢れている。練習時間は短くなったが、そこで要求される集中力は増した。コーチングスタッフも選手の限界値を引き出すために、つねに声を張り上げて選手を煽り、気持ちを鼓舞する。その雰囲気が、選手のパフォーマンスをあげ練習の質を高めていた。
しかし、相手のいる試合となると話は別だ。良い雰囲気で練習を積んできたことは確かだが、それが成果として表れるかどうかは、やってみないとわからない。今季の目玉になると思われたダイヤモンド型の中盤は、2月の宮崎キャンプから試してきたが、最適なバランスを見出すまでにはもう少し時間がかかりそうだ。ただし、日本代表に招集されたときに負傷していた岩政大樹やU-23日本代表の試合で左肩を痛めていた大迫勇也も全体練習に合流し、怪我人も戻ってきた。陣容は、揃いつつある。成果を手にすることができれば、この良い雰囲気のままリーグ戦へ入ることができる。勝てば一気に波に乗るだろう。ジョルジーニョ監督も「良い準備ができている」と胸をはっていた。
その青年監督も、この試合が持つ意義は十分に理解している。被災した人々に対しては、自身も肉親を亡くしていることを引き合いに「なんて気持ちを伝えればいいのか戸惑いを感じている」と複雑な表情を見せながら「ただ、これで私たちの人生が終わったわけではない。下を向くのではなく上を向いて欲しい」と話した。最高の試合を見せる準備はできている。
以上
2012.03.09 Reported by 田中滋
J’s GOALニュース
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