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昨季、湘南は京都とリーグ戦2試合と天皇杯準々決勝の計3試合を戦い、いずれも0−1で敗れている。今季開幕戦に迎えるその京都の前評判は高い。湘南との対戦成績もさることながら、リーグ終盤に6連勝を刻み、天皇杯でファイナルの舞台まで進んだことはまだ記憶に新しい。右肩上がりに積んだ実績の継続と今季の的確な補強に、京都強しの説得力は増す。裏を返せば、対する湘南にとっては胸を借り、曹貴裁監督のもとでキャンプインからこれまでトライしてきたスタイル構築の現在地を把握しやすいといえるだろう。
昨季の対戦を踏まえ、遠藤航は彼らの印象をこう語る。
「京都は狭いところでもダイレクトや2タッチで繋いでくる。前からのプレッシャーも速い。僕らはうまく繋げず、蹴ってしまうことが多かった」
遠藤はU-18の代表招集によって京都とのリーグ戦2試合には出場していないため、勝負の肌感覚はクリスマスイブの天皇杯に拠る。お互いに時間帯をつくった拮抗勝負も、湘南は引き寄せた流れのなかで逆に速攻を食らい、セットプレーから失点した。追いつくべく終盤には猛攻を仕掛け、遠藤自身もゴールに迫った。しかし京都の粘り強い守備もあって得点には届かなかったのだった。
京都の鋭いプレッシャーと機を捉える確度の高い攻撃に対し、攻撃においても守備においても切り替えの重要性はいっそう重みを増そう。チャンスとピンチが一瞬で反転する、痺れるような展開が想像される。リスタートの重要性も同様だ。オープンプレーで注いでいる集中力をプレーが切れた際にも変わらず維持し、素早く対応に回ることが求められる。付け加えるなら、ホームでの開幕戦、また前評判の高い相手といった力の入る要素はあるものの、構えず極力自然体で、すなわち冒頭からアグレッシブにゲームに入りたい。
「守備の質を意識したい」と開幕戦に向けて遠藤は言う。
「行くか行かないかの見極めも大事だし、プレッシャーをかける際のもう1歩、もう1mが大事になる。攻撃では相手の前からのプレッシャーにビビらずにうまく剥がし、蹴るだけでなくできるだけ縦に運びたい」
重ねたトレーニングマッチではポジションや組み合わせが毎試合のように変わっていた。「誰が出るかわからない」と、開幕戦のピッチに誰が立つのかを含め、指揮官がつねづね口にしてきた言葉に偽りはない。さらに曹監督は語る。
「うちは選手に力の差があるとは思ってない。1年を通して全員で戦う。京都は前評判も高いし、我々はいい意味でチャレンジャーです。守るのではなく攻めていきたい」
キックオフの笛は間もなくだ。試合前日、坂本紘司はこんなふうに語っている。「去年最後に負けた京都と開幕戦を迎えるのもなにかの因縁。曹さんにとってはトップの監督として初めてのシーズンだし、曹さんに初勝利をあげたい」。遠藤も同様に語る。「曹さんのもとでやってきたサッカーをできるだけ表現できれば、去年とは違う結果になると思ってる」。たしかに相手は前評判の高い強敵だ。だが、胸を借りるばかりではない。
以上
2012.03.03 Reported by 隈元大吾
