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一見、「継続」と「変化」は相容れないもののように見える。が、2012シーズンの愛媛は両者が融合し、”進化”をもたらしそうな予感を漂わせている。
「（トレーニングマッチで）5勝1分、2失点という結果はいいデータだと思う」と、開幕までの準備に手ごたえを語るバルバリッチ監督は就任4年目。指揮官はこの間、ポゼッションをして試合の主導権を握るためのポジショニングやスライドなど、チームの約束事をブレることなく伝え続けてきた。これが「継続」にあたる部分になるわけだが、開幕までの流れを見ているとチームには大きな「変化」も加えられる。
というのも、今季の愛媛は新たに10選手を加えて始動したが、その多くがスタメン争いに絡んでいる。その一方で昨季のチーム得点王、斎藤学は横浜FMに復帰。出場時間がチーム3位だったDF池田昇平は岐阜へと移籍し、出場時間が齋藤に次ぐ2位のDF高杉亮太ですらも激しさを増すスタメン争いの中で苦戦している。ということで、昨季の主力で日曜の開幕スタメンに名を連ねるのは、今季からキャプテンに就任した2年目の前野貴徳だけかもしれない。その前野にしても、本来のポジションである左サイドバックでは内田健太がアピールを続けており、トレーニングマッチでは中盤で起用されているという状況。これがチームにもたらされる「変化」になる。
こうしてスタメンは完全にシャッフルされた状況にあるのだが、昨季から在籍する選手の中でチーム内の競争を勝ち抜こうとしている1人がMF大山俊輔だ。その要因を大山は「ストロングポイントは意識しなくても出せる。だから、自分としては守備の部分で組織の一員としての役割を果たすことを考えてきた。それが、昨季の終盤からはまりはじめた」と自己分析する。バルバリッチ監督の下で大山なりに考え続け、それを表現しようとトライし続けてきた成果が今花開きつつあるというわけだ。 「監督が指揮を執るようになって長いので、それが浸透力にもつながっている」とも大山は言うが、これは先の「変化」とは違い冒頭で触れた「継続」によるものだ。
ただ、この「継続」があってこそ、新たに加えられた「変化」をチームはスムーズに受け入れられている。大山は「新加入の選手は適応力が高い」と言うが、一方、新加入で開幕スタメンの座を射止めそうなDF園田拓也は「前からいる選手の連携がいいので、あとは僕らがどれだけ馴染めるか。新しく入った選手はその中で監督のサッカーを理解しようとしているから結果も出ているのだと思う」と語ることからも、「継続」と「変化」が互いに好影響を与えながら、新チームへのスムーズな移行を促しているといえる。
それでも、開幕までに残した結果が重要なのではなく、当然のこととしてシーズンの結果こそが重要であることは皆が認識している。その点に関して大山は「守備におけるチームの約束事は去年の今頃よりも理解が進んでいるし、ベースの部分は上手くいっている」と手ごたえをつかみながらも「全てはトレーニングマッチだということ」と気を引き締める。さらに「開幕戦で対戦する町田はJ初参戦で、しかも初戦。相当の圧力をかけてくると思う」と警戒をするように、愛媛にとっては難しい開幕カードになった。愛媛のJ2新加入クラブとの初戦は、結果だけなら5勝2分と負けなしだが、接戦も少なくない。2008シーズンの開幕戦では熊本を２−１でかろうじて振り切り、また、昨季の鳥取戦は前半で2点のビハインドという展開に追い込まれた。最終的には逆転に持ち込んだものの、最後まで苦しめられたことは記憶に新しい。JFLで破壊力を見せ付けた勝又慶典とディミッチのツートップに、東京Vから加わった平本一樹らによる町田の攻撃力は守備陣が一新された愛媛が最も警戒すべきポイント。このことを考えれば、過去の熊本戦や鳥取戦などから得た教訓は、それを知る選手が伝えるべきことだろう。
とはいえ、今季の愛媛が掲げる目標はJ1昇格プレーオフ進出。それを考えれば、初戦は勝つしかない。「この1年の成長は自分自身にかかっている。ここで成功すればサッカー人生でもっと上にいくことができる、大事な1年になる」。この、FW有田光希が決めた覚悟はチーム全体にも通じること。だからこそ、この一戦はクラブがその歴史を一歩前に進めるためにも、大きな意味を持っている。愛媛にとっては転機となるかどうか、重要な7シーズン目の幕開け。そのキックオフがいよいよ訪れる。
以上
2012.03.03 Reported by 近藤義博
