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練習は裏切らない――。
J40クラブで最も早く始動し、開幕までの8週間を費やした。個人のスキルアップから個人戦術、チーム戦術をゆっくり、そして確実に身につけた。2年目の田坂和昭監督は「選手一人ひとりのクオリティが上がった。戦術の理解度も昨年以上」と確かな手応えを口にした。選手も同様だ。キャプテンの宮沢正史は「自分たちのサッカーを追求し、質の高いサッカーを目指した。練習から競争があり、チームの底上げができた」と話せば、昨季チームトップの11得点を記録した森島康仁は「少しでもサボれば浮いてしまう。そこが昨年と変わったところ。みんなが同じ目標に向かえている。個人的にも、チームも状態はいい」と開幕を待ちきれない様子だった。そして、ぼそっと一言「あると思います」と口にした。
“ある”とは、もちろんJ1昇格だ。今季の新体制発表会見で田坂監督は「今年の目標はズバリ昇格。私はそれしか考えていない」と明言した。これまでJリーグからの借入金や多額の債務超過などがあり、軽々しく「J1昇格」と口に出せなかった。ただ、今季は大分トリニータを運営する大分フットボールクラブの青野浩志社長が「（融資の返済は）高いハードルだが、ある程度整理できる」と見通しを語り、かん口令を解いた。強化部も今季の最大にして最高のミッションに向け、ベテランから若手まで11人の実力者を補強した。その結果、「各ポジションに2つの選択肢ができた」（田坂監督）と選手層に厚みができた。
開幕戦のピッチに立つ11人が今季ほど予測するのが難しいシーズンはない。ただ、どの選手が出たとしても戦い方は変わらない。「全員で守り、全員で攻める」ベースがある。攻撃ではボールを動かし、サイドを経由して、バイタルエリアに侵入する。今季はサイドに精度の高いクロスを放れる石神直哉や、前方の選手を追い越して決定機に絡むキム チャンフン、キム ジョンヒョン、彼らの攻撃参加のタイミングに合わせてパスを出せる村井慎二など、昨季になかったオプションが増えた。守備では「攻守の切り替え」が見違えるほど早くなった。それも状況に応じて、狙う高さを自在に操れる臨機応変さがある。
5年ぶりのホーム開幕戦。相手は昨季ホーム開幕戦で敗れた草津。「中盤に力のある選手がいて、今季はより攻撃になった」と分析する田坂監督の頭の中には、どんなシチュエーションに陥ってもブレない戦い方がある。「選手は緊張でガチガチになると思うが自分たちのサッカーを90分間貫きたい」。2012年版トリニータのお披露目は間近。最高のエンターテイメントを届けてくれるはずだ。
以上
2012.03.03 Reported by 柚野真也
