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思えば本当に長い道程だった。クラブが2004年に Jリーグへの加入を目指して、本格的な活動を始めてから8年目のシーズンを迎える。その間、多くの劇的な“物語”があった。喜びもあれば、別れもあった。痛ましい出来事もあった。そして、喜びもあった。
そして、遂にこの日がやってきた。
松本山雅FCの Jリーグデビュー戦、対戦相手は東京ヴェルディとなった。
反町康治新監督を迎えて、ここまでの松本はいつになく良い意味で緊張感あふれるオフシーズンを送ってきた。静岡と宮崎でのキャンプではフィジカルをいじめ抜き、戦術面でも攻守における最低限の約束事を叩き込んだ。
現在チームは、3-4-2-1の攻撃的なシステムに取り組んでいる最中にある。反町監督は「4バックでいくかもよ」と報道陣を煙に巻いているが、選手はこのシステムにある程度の手応えを掴み取っている様子だ。
高さと強さを誇る守備の要、飯田真輝は言う。「3バックに問題はない。手応えは感じている」。
シャドーの位置で水を得た魚のように躍動する弦巻健人は言う。「チームが一つになってきた感じはする」。
だからこそ、東京ヴェルディに胸を借りるのではなく、勝ちたい。
とはいえ、反町監督も「実力は向こうの方が上」と素直に認める。阿部拓馬・巻誠一郎・ジョジマール・西紀寛など、J2でもトップクラスと言えるアタッカー陣は質量ともにバリエーションに富んでおり、どのような展開・状況においても実力を発揮できる強者揃いだ。
ここで勝負の鍵を握るのは、最終ラインだろう。
ライン統率に優れた飯尾和也、高さと強さに恵まれた飯田、成長株の多々良敦斗。この3枚で守る最終ラインは、易々と東京ヴェルディの餌食になりはしないと見る。まずは前半45分、集中を切らすことなく無失点で切り抜けたいところだ。
飯田・弦巻・喜山康平・吉田正樹、さらに下部組織出身者まで加えると、多くの元東京Ｖ所属選手が松本でプレーしているだけに、味スタのピッチに立った瞬間、例えようのない感情に包み込まれるかもしれない。しかし、気負う必要は全くない。個人の力で上回る相手には、組織としての戦い方で真っ向勝負を挑みたい。
弦巻が選手の気持ちを代弁する。「勝ちたい。成長した姿を見せたいですね」。
そして、楽しみにしているのは、選手たちだけではない。この日のためにゴール裏を中心としたサポーターたちもこの試合を盛り上げるべく、5000人のアウェイサポーターを集めて、味スタの2階席を開けさせようと、ネット上などで準備を重ねてきた。当日は、記念すべき Jリーグのファーストゲーム。“12番目の選手”たちもまた、新たなステージに立つ。
以上
2012.03.03 Reported by 多岐太宿
