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Ｊ２昇格１年目の昨季は８勝７分23敗、開幕前に目標に掲げた「１ケタ順位」に遠く及ばぬ19位に終わった。これを受けて監督と強化責任者との契約を更新せず、昨季の主力選手数人も移籍や引退でチームを離れることとなった。生まれ変わったチームは、「中位以上」を目標に掲げる吉澤英生新監督の下、２年目のスタートを切る。
１月15日の始動から、ここまでには、多くのアクシデントがあった。鳥取市は始動１週間後から再三の大雪に見舞われたため、何度も練習会場変更を余儀なくされ、キャンプ開始を１日前倒し。１月31日から高知、さらに淡路島に場所を移してのキャンプは問題なく消化できたが、２月18日に鳥取に戻った途端、再び大雪に見舞われた。鳥取市の２月の月間積雪量は例年の２倍以上で、２月末までの合計積雪量は過去20年間で最大、1954年の統計開始以来、史上３番目という歴史的な大雪のため、22日から26日までは岡山で予定外のミニキャンプを実施。鳥取に戻ってからも心身両面の疲労回復を含め、難しいコンディショニングを強いられている。
チーム作りにも紆余曲折があった。１月に加入が発表された当初は、コスタリカ代表の経験や、ドレッドヘアが話題を集めていたロイ スミスは、レギュラー争いで後れを取っている。同時加入のケニー クニンガムは２月29日のコスタリカ代表戦に招集され、再来日が３月２日のため、コンディションが整わない（離日以前も負傷を抱えており、開幕前の練習試合には一度も出場しなかった）。２年目のキム ソンミンも負傷離脱中のため、外国人ゼロで開幕戦に臨む可能性が高いのは、大きな誤算と言える。
とはいえ、すでに開幕は間近。雪による影響についても、今季キャプテンに就任した岡野雅行は「あの時期を乗り越えたことが、良い力になってくれれば」と前向きに語っており、厳しくも明るい声が絶えない活気あふれる練習は、苦境がチームを一丸とする要素に変わる可能性も感じさせている。
鳥取はヴィタヤ ラオハクル前々監督、松田岳夫前監督と、ボールポゼッションにこだわったチーム作りを継続しており、吉澤監督もその流れを汲む意向を示している。ただし一方で「まずボールを奪わなければ、パスサッカーをする権利も与えられない」と語り、始動後の練習では、全員に高い守備意識を求めてきた。守備では前線からのチェイシング、攻撃ではボール奪取後のカウンターと、自陣からのポゼッションを使い分けながら、攻守両面で主導権を握るのが狙い。「まずは開幕戦で、それを見せてくれれば」と吉澤監督は期待を寄せる。
これらを実現するためのポイントとして松田前監督同様、攻守の素早い切り替えを徹底しており、練習試合の攻撃局面では、ボール奪取後、複数の選手が絡んで一気に相手ゴールに迫るシーンが多く見られた。一方で、自陣からのポゼッションは発展途上で、組み立ての初期段階でミスが出て、ショートカウンターで攻め込まれる場面も多い。押し込まれた状況を打開するためには、ポストワークで踏ん張るにせよ、スペースに抜けてパスを受けるにせよ、前線でターゲットになる選手の奮闘が欠かせない。2トップを組むことが濃厚な美尾敦と福井理人は、いずれも運動量が持ち味の一つで、前線からのチェイシングでもカギを握る存在だ。
岐阜には今季、鳥取から3人が移籍している。特に服部年宏はＪＦＬ時代の2010年に加入し、自身のプレーだけでなく、周囲にも厳しい要求を課してチームメイトの意識を高めるなど、まさに大黒柱としてＪＦＬ優勝、Ｊ２昇格に大きく貢献した。ボランチでコンビを組んだ実信憲明も、周囲が驚くほど守備意識が高まるなど影響を受けた1人だが、「今度は対戦相手。おとなしくさせることができれば」と闘志を燃やしている。紅白戦では控え組を岐阜に見立てて戦うなど、チーム全体でも万全の対策を施した。
Ｊ２の洗礼を浴びた昨季は、昇格後チームワーストとなるリーグ戦７連敗でシーズンを終えている。北九州のように、１年目の苦しみを、２年目の飛躍につなげるためにも、まずは連敗を止め、確かな自信をつかみたい。
以上
2012.03.02 Reported by 石倉利英
