・3月20日(火・祝)FC東京vs蔚山現代@国立 14:00
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世界最大の造船会社である現代(ヒュンダイ)重工業の城下町として発展を遂げた蔚山市。韓国の東南海岸沿いに位置するこの街をホームタウンとするのが、蔚山現代ホランイだ。現代重工業は長らく大韓サッカー協会(KFA)会長を務め、現在はKFA名誉会長を務める鄭夢準(チョン・モンジュン)氏が顧問を務める大企業で、“ホランイ”とは韓国語で“猛虎”を意味する。
チーム創設は83年。現在は大田シチズンの監督を務めるユ・サンチョル(元柏、横浜FM)が在籍した98年と、昨季まで大宮アルディージャでプレーしたイ・チョンスが大活躍した2005年にはリーグ優勝も成し遂げている。その蔚山のサッカー・スタイルは最近、“鉄槌(チョルテ)サッカー”とも呼ばれている。それは、組織力抜群の守備から“鉄槌”のような破壊力を持ったカウンター攻撃しかけることに由来されるものだ。実際、昨季リーグ戦では30試合で失点29。一試合平均0.96失点と、その名に恥じぬ高い守備力を見せつけた。クァク・テヒ、イ・ジェソン、カン・ミンスといった韓国代表経験のあるDFを多数擁したその守備は、まさにKリーグ版“カテナチオ”といえだろう。
ただ、“鉄槌”のような攻撃力を持続できなかったという反省点もある。196cmの長身FWキム・シンウクや、2002年年ワールドカップ4強戦士で欧州でのプレー経験も豊富なソル・ギヒョンらが奮闘するも、総得点33はリーグ16チーム中11位と振るわず、リーグ戦の最終順位は6位に。ファンたちの間では「“鉄槌(チョルテ)サッカー”ならぬ“撤退(チョルテ)サッカー”ではないか」と、揶揄されることも多かった。
しかし、リーグ終了後に6位までに参加資格が与えられるKリーグ・プレーオプで快進撃。下位チームに絶対的に不利と言われた状況ながら、リーグ戦3位のFCソウル、4位の水原三星、2位の浦項スティーラーズを立て続けに下し、チャンピオンシップまで駒を進めた。チャンピオンシップではリーグ戦1位の全北現代に敗れはしたものの、年間順位2位となり、ACL出場権を獲得した。
そのACLタイトル獲得を睨んで、蔚山現代はキム・ホゴン監督の強い要望のもと、強力な補強に乗り出した。今年で4年目を迎えるキム・ホゴン監督は就任当初から「つまらないサッカーからの脱却」を掲げてきたが、なかなかそれができないこともある。また、前出のソル・ギヒョンが仁川ユナイテッドに移籍してしまったこともあり、とりわけ攻撃陣の補強には積極的だ。例えばG大阪でプレーしていたイ・グノとキム・スンヨンの獲得だ。蔚山は昨年もカク・テヒ(元京都)とイ・ホ(元大宮)といったJリーグからの復帰組を迎えているが、今季も新たなに2名のJリーグ経験者を補強することになった。ふたりには、ソル・ギヒョンの穴を埋めてあまりある攻撃力が期待されているが、何よりも電劇的だったのは家長昭博をスペインのマジョルカからレンタルで獲得したことだろう。一年間のレンタルという条件付きながら、かねてから日本人MFの獲得を希望していたキム・ホゴン監督にとっては、待望の補強と言えるだろう。
実際、キム・ホゴン監督は「2012年は国内リーグとACLを両方戦わなければいけない。そのためにもJリーグ経験者は不可欠」と内心を明らかにしている。日本仕込みの繊細なテクニックを“鉄槌サッカー”とシンクロさせるのが、キム・ホゴン監督の意図するところだ。過去を辿ると、ACL制覇には縁遠かった印象が強く、キム・ホゴン監督就任1年目も名古屋に後塵を拝してベスト8まで進めずに終わっている。だが、今年の蔚山は侮れない。Jリーグを知り尽くした選手が多数いるだけに、グループリーグで対戦するFC東京にとっても手ごわい相手になるだろう。
■注目選手紹介
●クァク・テヒ DF 背番号5
かつて京都サンガでもプレーしたDF。ケガで2010年W杯メンバー入りを逃し、Jリーグでのプレーもわずか1年で終えて、2011年から蔚山入り。蔚山では“キャプテンでもあり、昨年の国内リーグ最少失点の中心的な立役者である。また、昨季はリーグ戦9得点2アシストを記録。打点、タイミングともに抜群のヘディングシュートで相手ゴールに襲いかかるだけでなく、FKまで決める “攻撃的DF”としての本領を発揮した。今年2月には代表復帰を果たし、韓国代表でも守備の中軸として期待されている。
●キム・シンウク FW 背番号9
196cm93kgのサイズから“韓国のクラウチ”とも呼ばれている。恵まれた体格を生かしたポストプレーでは空中、足元ともにさばきながら、多くのゴールチャンスを演出する。もちろん、セットプレーからのヘディングは強力だが、前を向いた瞬間に放たれる右足のシュートは“危険性”が高い。大学在学中にDFの選手だったが、蔚山現代加入後FWにコンバートしたとても珍しいタイプ。ここ数年急成長を遂げており、昨年は韓国代表にも選ばれた。ACLでも旋風を起こしそうな予感。ちなみに好きな女性のタイプは「背の大きい女性」だという。
●家長昭博 MF
家長は昨年8月に行われた日韓戦にも出場し、韓国国内ではその名をすでに知られていたが、今回の電撃移籍は大きな話題となった。蔚山現代のキム・ホゴン監督は「攻撃力の中盤の選手を探していた。家長はかならず期待に応えてくれるはずだ」と信頼を寄せている。Jリーグ時代に蔚山現代と対戦した経験がある家長だが、今度は外国人選手として韓国のピッチに立ち、ACLではJリーグ勢の前に立ちはだかることになる。家長自身は「より厳しい環境に自分を置いて、韓国で認められるようにしたい」とコメント。蔚山現代のサッカーとどのような化学反応を見せるか注目したい。
Reported by 慎武宏
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