ここまでの変貌を誰が予想していたでしょうか。
昨季の公式戦出場は途中出場１試合（第７節・10月26日）のみ、時間にしてわずか10分余りしかピッチに立っていなかった若者が、今季開幕スタメンに名を列ねるとそこから２戦連続ゴールを記録。しかも両ゴールともがチームを勢い付かせる先制弾だったことを考えれば、まさに大車輪の活躍を披露しているのです。
キム・ジョンミン─。目覚ましい成長を見せ始めた彼は今徳島きっての期待株となっています。

ただ潜在能力の高さは昨季からハッキリ感じさせていました。トレーニング中に見せるゴール前への鋭い飛び込みや１８８cmの上背を活かした空中戦の強さからは「大化けも十分ある」と思わせる雰囲気が漂っていたのです。そして今季、その秘めた能力と昨季の努力の積み上げが小林伸二監督によって一気に引き出されたと言えるでしょう。組織作りのうまさとともに大型ＦＷの育成にも長けた新指揮官の指導により、彼自身がいいキッカケを掴み、力を解き放つスイッチを見付けてそれをオンにしたのは間違いありません。

開幕戦からの２ゴールに触れると「試合中は練習の時と同様、みんなと合わせてプレーしています。それがゴールという結果に結び付いてとてもうれしいです」と喜びの表情。また「Ｊ２はあと４ゴールで通算１００００ゴール。そのメモリアルなゴールに名を刻めるチャンスが次節ありますが？」と話を向ければ、「Ｊ２通算１００００ゴールと聞いてリーグの歴史を感じます。僕はまだ２ゴールをあげただけですが、その歴史のひとつに自分も加わっていることはとてもうれしいです。そして今節の栃木戦、出場の機会をもらえればもちろんゴールを狙って、もしその１００００ゴール目を決められたら本当に幸せです」と目を輝かせて語ってくれました。
しかし、だからと言ってもちろん自身のことを最優先にはしていません。「昨季は昇格争いをするチームの力になれなかったことがとても悔しかったです。なので、オフ期間に韓国へ帰った時改めて意識を根本から変え、今季はキャンプ初日からガムシャラに走りました」と言うだけあって、フォアザチームの姿勢を何より大切にしています。だからこそ「１００００ゴールのことも含めて自分の得点よりもまずはチームの勝利に貢献したいです」と迷わず言葉を続けたのでしょう。

今季、チームをＪ１昇格へと導くシンデレラボーイになれるか！？　いずれにしても彼には大きな注目が集まります。

以上

2012.03.15 Reported by 松下英樹